2006年8月の映画  戻る


アイスバーグ L’iceberg/Iceberg
           2005年 ボゴタ(コロンビア)映画祭最優秀映画賞(短編作品 Garua と同時受賞)
2005年 ベルギー 87分
監督 ドミニク・アベル/フィオナ・ゴードン/ブルーノ・ロミー
出演 ルーシー・トゥルガリュク/ドミニク・アベル(ジュリアン)/フィオナ・ゴードン/フィリップ・マルツ(ルネ)
メモ 2006.8.26(土)晴れ シネフィルイマジカ
感想
雰囲気は「キッチン・ストーリー」(2003年ノルウェー/スウェーデン)に似ているんやけど、さぼてんはこっちの方が好み。
風変わりな映画だったなー。ゆるゆる笑える。 女のほうが思いっきりがよくてアクティブなのかも。
映画冒頭、絶滅寸前の品種イヌイットの女の人が幸せそうにニコニコして語る。「これは夫とのなれそめの話」と。
セリフはほとんどないフィジカル・コメディっていう知的な作品らしいけど、よくできていた。ジャック・タチの「ぼくの伯父さん(1958)」のノリね。
 
主人公フィオナはハンバーガーショップのマネージャー。ある晩戸締りして猫にエサをやって店を後にする。ところがふと気づいた。「アレ(玉葱かな?)は冷蔵庫に入れたかしら?」 店に戻って冷蔵庫にアレを入れるが、赤いマフラーがドアノブにひっかかりドアが閉まってしまう! 翌朝スタッフに発見されたフィオナは、ビニール袋を体中にまとい、ダンボールの箱に入っていた。まつげも髪の毛も凍り付いている。
ところが! 夫ジュリアンも子供達もフィオナの不在に気づかないのよ。夫は隣には寝ていないフィオナに「起きないでいいよ」と優しく言い置いて、寝ぼけまなこで起き出すの。子供ふたりと朝食をすまして何事もなく会社に学校に出かけるのよ。
その事実に徐々にショックを受けるフィオナ。 乱心していく。
それよりも何よりも家族よりも冷たさに魅せられたご乱心フィオナは、冷蔵車にふらふらと乗ってしまうの。 冷蔵車に乗っていたのはアフリカの密入国者達。 車から降ろされたフィオナはまたしてもいきあたりばったり手じかなバスにふらふらと乗り込むのよ。 どうやら北をめざしてんのね。 結果的に家出になっている。バスで知り合ったばっちゃんの家に居候するの。その土地で無口な大男船乗りに魅せられるフィオナ。「私を氷山(アイスバーグ)に連れて行ってくれる運命の人だわ!!」とひとり思い込むのよね。 船乗りは二十年前に妹の火遊びから家族5人を失っていてそれ以来言葉を忘れてしまった男。 フィオナの猛アタック−虚仮(コケ)の一念岩をも通す−でふたりは氷山を目指す事に。町のじっちゃんばっちゃんが手を振る中ヨットは出航する。そこにあらわれたのが泡食った夫のジュリアン。 「愛しているっ」と言って未練たらしく ひつこく 一途に追っかけるのよ。ヨット目指して堤防からジャンプ!! 悪戦苦闘がんばる。フィオナ、ジュリアン、船乗りのルネはあれやこれやあっててんやわんや。すったもんだのあげく遭難しかけた所をイヌイットに救われる。そしてイヌイットの彼女にひとめぼれしたかなづち船乗りルネはイヌイットとめでたく所帯を持つ。
 
家族の崩壊と再生という話をこんな風に描く事もできるのねぇ。感心した。ヨーロッパは成熟した社会なんだ。
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エイプリルの七面鳥 PIECES OF APRIL
2003年 米国 80分
監督・脚本 ピーター・ヘッジズ(「ギルバート・グレイプ」の脚本)
撮影 タミー・レイカー
音楽 ステフィン・メリット
キャスト ケイティ・ホームズ(エイプリル・バーンズ トム・クルーズの娘の母)/パトリシア・クラークソン(母ジョーイ「グリーンマイル」全米批評家協会賞)/オリヴァー・プラット(父ジム)/デレク・ルーク(恋人ボビー)/アリソン・ピル(妹ベス)/ジョン・ギャラガー・ジュニア(弟ティミー)/アリス・ドラモンド(ドッティ)/ショーン・ヘイズ(ウェイン)
メモ 2006.8.5(土)晴れ WOWOW録画
あらすじ
エイプリルの今日のミッションは感謝祭のために母の好物の七面鳥を焼くこと。料理などやったことがないのに・・・とっても無謀な計画だ。それでも七面鳥の肉は買ってあるし、レトルトだけど詰め物も用意してある。七面鳥にセロリやらなんやら詰め込んで用意は整った。いざ、レンジの前に・・・・。レンジは物入れと化している。中の物を出してスイッチをONするが動かない。これは一大事ですよ。 レンジを貸してくれる家を求めて鍋に詰めた七面鳥を持ってアパートの中を上がったり下がったり悪戦苦闘。黒人の夫婦者は「レトルトはだめだ。詰め替えてあげよう。だけどレンジはうちの七面鳥を焼くのでかせないな。」。後は菜食主義者の白人がいたり、おタクで「エイプリルの態度が悪い」と七面鳥を人質にとる変人白人男がいたり。さまざま。エイプリルの七面鳥はどうなるのだ? 無事焼けるのか? これはサスペンス映画か?
一方ニューヨークに向かう家族がいた。おばあちゃんはあずけてある施設から乗り込む。エイプリルの父母妹弟ばっちゃんの5人だ。母は乳がんで余命幾ばくもないらしい。が、この母がものすごいの。クールというか、傷つくのを恐れているというか。 車の中で4人に「エイプリルの七面鳥は(たぶん食べられたもんじゃないから)食べたふりして捨てる方法」を伝授してるん。母は長女に会いたいのか会いたくないのかゆれている。
感想
辛口のホームコメディというかロードムービー。ロードムービーしているのがニューヨークまでマイカーでやってくる家族の方ではなく、レンジを求めて七面鳥を手にアパートの階段を上がったり下がったりしているエイプリルの方であったというのがよく出来ていた
母ジョーイは中流の上品な白人、反してエイプリルはネイティブアメリカン(インディアン)とかマイナーにシンパし反骨精神が強い。ふたりは反目しあい、ティーンエイジャーの頃のエイプリルは麻薬やなんだかんだにまみれ、ふたりともお互い散々な目にあったらしい。エイプリルは家族と離れ長い間疎遠であったが、母との最後のために家族を感謝祭に招待したのである。最初で最後の親孝行。 お上品な母とあわないエイプリルを見ていると、反発しまくっていた自分とかぶる。なんで母親族ってのは自分と考え方の違う娘にひやひやと冷たいのかねぇ。 この映画はエイプリルの凶暴なメイクとファッションがとってもステキだ。
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時をかける少女
2006年 日本 98分 角川ヘラルド
監督 細田守
原作 筒井康隆
脚本 奥寺佐渡子
音楽 奥華子
メモ 2006.8.4(金)晴れ テアトル梅田
感想
飛び込み台から飛ぶ姿が、とてもかっこいい。
少女はかけるというよりも飛ぶ!。毎回毎回痛い思いをしながら飛ぶ。
その姿があっぱれだ。
  −−チャレンジしてちょっと痛い思いをしたら、自分の内側の迷路にうじうじはまり込むなど皆無。
 
 
「時かけ」は上映館が少なく見ている人も少なく「ゲド戦記」に比べ有利。「俺は見た」という優位性を持つため評価が高い。という話を読み、確かにそういう一面もあるやろうけど、制服フェチではない私でも言える。必見。筒井康隆御大は「続編として最高の出来」と言ってはるとかなんとか。御大はやはり気が若いというかやんちゃと感じました。アタシなんぞせめて後10歳若かったらもっとぐっと来たのにと無念に思ったもんね(くそぅ)。  ラベンダーの花束を見て遥か昔NHKドラマで見た制服姿で「ラベンダーの香りが、ラベンダーの香りが・・・」と主人公が頭を押さえていた映像がぐるぐるした(覚えているのはここだけ)。
「筒井康隆氏によって「時をかける少女」が書かれてから40年(嗚呼)。
お薦め度★★★★1/2戻る

ゆれる
2006年 日本 119分
監督・原案・脚本 西川美和 (「蛇イチゴ」)
企画 是枝裕和/安田匡裕
撮影 高瀬比呂志
音楽 カリフラワーズ
出演 オダギリジョー(早川猛はやかわたける)/ 香川照之(早川稔はやかわみのる)/伊武雅刀(早川勇)/蟹江敬三(早川修)/新井浩文(岡島洋平)/ 真木よう子(川端智恵子)/木村祐一(検察官)/田口トモロヲ(裁判官)/ピエール瀧(警部補)
メモ 2006.8.3(木)晴れ 梅田ガーデンシネマ
あらすじ
猛(たける)は母の一周忌のために故郷に帰ってきた。山の見える故郷では父(伊武雅刀)と兄・稔(香川照之)がガソリンスタンドをやっている。猛(たける)は故郷を出て都会で新進のカメラマン。兄は地味な家業を継いだ。頑固な父は好き勝手やっているような猛が気に入らない。しかし、兄は温厚で優しくふたりの間をいつもとりなしている。母が亡くなり父と二人暮しの兄は35歳独身でスタンドで働いている知恵ちゃんに気があるようだ。しかし猛と知恵は昔わけありで久しぶりに会って焼けぼっくいに火がついたかもしれない。俺に後ろめたさを感じさせる兄貴がなんかちょっとな。
感想
結構しんどい映画だったな。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」と同じく監督は主人公たちの表皮を何度もめくる、ゆさぶる。 明日「はい、さいならー」できる他人と違って身内の内側をさらけだされてどーすんだよ、ややこしくしてどーすんだと思うもんの人の心には「こういう物がうごめいている」事もあると勉強するのは大事かもしれん、か。 父と母が年老いて介護が必要になった時、兄は頼りになるんだろうか? 兄嫁は? それよりもなによりも自分はちゃんとできるのか?というような事を考えさせられて不安になるんだよー。花田兄弟もいったいどうなっちゃったんだよ。
 
真実はひとつって言うけれど、見た人の感情によってとり方は変わるんだな。本当の気持ちを聞かせて欲しいっていうのも、弟をかわいく思っていたり妬んでいたりで、その割合は7:3くらいなーんて言えない。時々で変わるんだから。右へ左へゆれる。 会社で3姉妹の長女の人がいて、さぼてんは下の子だからよくわからんし「上の子って下の子かわいいんかなあ」とある時軽く聞いたら「かわいいよ。 ○ちゃんのお兄ちゃんもきっとそう思っているよ」ときっぱり言ってはった。それは幸せな事だよな。そうだったら。そして、その気持ちのままだったらいいのにな。人生はきびしい。