2021年3月のミステリ 戻る

マイ・シスター、シリアルキラー MY SISTER,THE SERIAL KILLER
全英図書賞、アンソニー賞
ハヤカワポケットミステリ 192頁 オインカン・ブレイスウェイト著 粟飯原文子(あいはらあやこ)訳 2018年
感想
ナイジェリアの作家がナイジェリアを舞台に「妹が恋人を殺すと姉は呼び出され、後始末をする」という小説。
ナイジェリア色は薄く文化、風土が語られるのは服と食くらい。
 
ファムファタールの妹は手にかけたかった暴君を殺しそこねたため、いくら殺しても飽き足らず男を殺し続けるねん。
妹と共依存関係にある看護師の姉コレデは、秘密を墓場まで持っていくことができず昏睡状態の患者ムフタールに打ち明けている。。
コレがどう動くのか。     動けへんねんけどね
姉妹は地獄の道行きやねんけど、短い章で語られる文は読みやすくお話はなぜか明るい。
映画化されるんちゃうかな。
 
姉妹の話を思い起こせば
「何がジェーンに起こったか?」
「誰が私を殺したか?」(双子の妹になりすますお話)
「八月の鯨」かな。
なんでやろ。みんなベティ・デイビィスやん。ベティ・デイビィス以外のやったら「地獄の貴婦人」かな。
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馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。 (ミス外)
KKベストセラーズ 344頁 藤森かよこ著 2019年
感想
「どういうひと向けなんやろ?」と、この挑戦的なタイトルにつられて読みました。
 
ブスとは、
 顔やスタイルで食っていけないならばブスだ。「繁華街を歩いていてスカウトされたことがない」なら、立派なブスだ。
貧乏は、
 賃金労働をしなければ食べていけないし、大不況や預金封鎖などの社会的経済的大変動があれば、すぐに食い詰める
馬鹿は、
 一を聞いて一を知るのが精一杯である。学校の勉強もできなかったし、地頭がいいわけでもない。平々凡々であり、ちょっと努力しなければ、すぐにゴミになる。
 
  "馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなた”は、アタシの事やった。アタシに向かって書いてはるんやわ。
 
作者は自分の事も「ブスで馬鹿で貧乏である。」と書かれている。ブス貧乏は不明やけど、大学の教授をされてたみたいやし紹介文献リストも長く長く、とても読書家で、上野千鶴子先生には及ばずともりっぱなインテリさんなのだ。それなのに「馬鹿なのだ」と言われる。自分を「馬鹿」と思っている方が騙されず利用されずにすむんやろね。
 
本書は
  「Part1 苦闘青春期(三七歳まで)」(結婚するなら三七歳まで)
  「Part2 過労消耗中年期(六五歳まで)」
  「Part3 匍匐前進老年期(死ぬまで)」
の3部構成となっている。
 
「Part1 苦闘青春期(三七歳まで)」が小気味よい。1・1は「容貌は女の人生を決める」(まったくだー)
大学の先生をされてた頃に、ぼんやり王子様を待っている風の女子学生の肩を揺すぶって言いたかったこと
「王子様なんてこないのよっ あなたはひとりで生きていくのよっ」を書かれている。(と思う)
先生によると、根拠もデータもないが、男五○人中まともな男は一四人らしい。3割弱ね。
(ひとりはサイコパス、ふたりは痴漢、三人は暴力男、四人はアル中、五人はストーカー、六人は虚言癖があり、七人は病的に怠惰なダメンズ、八人は強烈馬鹿母親系マザコン) ブスだとまともな3割弱に当たるのは難しい。
結婚しなくてもいいの、少子化なんてあなたの知ったこっちゃないの、責任を感じることない。思い悩むことなく平和に楽しく生きるのよ。」のすすめ
 
Part3 3・2「馬鹿ブス貧乏女の強みが発揮される老年期」 老いればみなブスになる。(年とるの怖くないねー)
 
3章を通して繰り返し言われてるのは、「本を読むこと 学ぶこと」そして「孤独を怖がらないこと」
六十七歳の先生は結婚されているそうやけど、子供さんがいるのかいないのか、老親の介護をしたのかしていないのかは語られない。
自分の経験から語られることは少ない。
それは、経験は「有限」、本から得る知識は「無限」、「知識は力なり」と考えられているんだと思う。
「※これは個人の感想です」ってなところもあるけれど、面白い。
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