2021年3月の映画  戻る


ノマドランド NOMADLAND
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞
2020年 108分 米国 NOMAD(ノマド):遊牧民
監督・脚本・編集 クロエ・ジャオ
原作 ジェシカ・ブルーダー『ノマド:漂流する高齢労働者たち』
キャスト フランシス・マクドーマンド(ファーン)/ノマドの人たち/デヴィッド・ストラザーン(ノマド仲間・デイブ)
メモ 2021.3.27(土)TOHOシネマズなんば
あらすじ
2008年の金融危機(リーマンショック)のあおりを受け、ネバダ州(アメリカの西部)の企業城下町エンパイアは2011年、鉱山の閉鎖で町が無くなる。夫を病気で亡くしたファーンは5年続けた教師の職も失い、家財を貸倉庫に預けキャンピングカーに思い出の品を詰め込み出立する。
途中のスーパーで教え子に会ったファーンは「先生はホームレスなの?」と聞かれ、「いいえ。ハウスレスよ。ホームレスとハウスレスは違うの。」と答える。ファーンは働きながら各地を流浪する遊牧民(ノマド)になった。
感想
60才を超えた初老の女の人が車で寝泊まりして、危険な目にあいながらも過酷な季節労働を必死で探しまわり生きようとあがく話かと思っていたら違っていた。このお話に悪人はでてこない。
 
日本人って金金金と金儲けに血眼になるのは、はしたない。清貧を良しとするみたいなとこあると思う。
米国は違うんちゃうかな。大きなお金を稼げる人間は努力して競争に勝った成功者であり神の恩寵を受けてる、みたいな。拝金主義というか大きく儲けて貧しい人に施すのがピューリタンの正しい道のような。
この映画は「そうなの?」 「そうやったの?」と問うている。
 
ラストのシーンを見ていると映画「シェーン」のように感じる。
過去と故郷を捨て、果敢に広大な新大陸へと渡ってきた人の末裔たち。西へ西へと自由に持てる力で新天地に向かう(かのような)西部劇なの。
★★★★戻る

はちどり 
2018年 138分 韓国/米国 
監督・脚本 キム・ボラ
キャスト パク・ジフ(ウニ)/キム・セビョク(ヨンジ)
メモ 2021.3.26(土)シネ・ヌーヴォx
感想
1994年の韓国。ウニは14才。兄と姉がいる三人兄弟の末っ子。両親は商店街で餅屋をしていてやたら忙しい。かき入れ時は一家総出だ。
父も母も熱心なのは男である兄の大学入試。三番目の子となると、いるのやらいないのやら。それでも関心ゼロではないらしく漢文塾には通わされている。
ウニは同級生の間でも、いるのやらいないのやら存在感が薄い。学校になじめない。
やっとひとり友達ができた。そしてしぶしぶ通っている漢文塾に若い女の先生がやってきた。
 
透明感のある女の人っているんやわ。ウニと若い先生のヨンジがただ、そこにいるだけできれい。
上映終了日に見に行ってよかった。
近年の韓国映画は「アクション、ミステリ、サスペンス」から離れ踏み出した女性監督による女性の生きづらさが映画化され、本作もその1本。
確か「82年生まれ、キム・ジヨン」とか「チャンシルさんには福が多いね」やったと思う。
ウニはいつも家でエラソーにしている父や兄の小心者あかんたれなところもわかってくる。
今まで母にも姉にも惹かれず、これからどうなったらいいのかわからなかったんやけど、大事な思春期に尊敬できるおとなの女の人と知り合う。
先生のヨンジがソウル大学を休学して放浪しているのは何故なのかは語られない。語られないのがいい。引き算ができてんねんな。
教授のセクハラ、アカハラやったのか。恋人のDVなのか。父親の家庭内暴力やったのか。
 
もうひとつ、この映画で興味深かったのは漢文塾の「書」。
子供の頃、韓国の新聞は漢字とハングル混じりやったのでハングルは日本での「ひらがな」なんやと思っていた。
ところがハングルだけになって。ひらがなばっかりで不便なことないんやろか。
「書」には漢字も使われているみたい。(少なくとも1994年には)
考えて見ると、映画のエンドロールの人名はハングルばかりやけど、韓国では漢字名も使われているねんな。文在寅(ムン・ジェイン)大統領とか。
映画の中の書には「印」も押してあった。
(従姉はドラマ「相棒」の部長室に掲げられている書「古轍」(こてつ)に「印」が無いのは何故なのか、とっても気になるらしい。
昔の有名な書にいっぱい印が押してあるのがあるけど、「私、この書持ってました」「私、拝見しました」「コレ本物です。太鼓判押します」って印しるしなんやって)
★★★★戻る

アーカイヴ ARCHIVE
2020年 109分 英国 <未体験ゾーンの映画たち2021> ARCHIVE:保管/保存
監督・脚本 ギャヴィン・ロザリー
撮影 ローリー・ローズ
キャスト テオ・ジェームズ(ジョージ・アルモア)/ステイシー・マーティン(ジュール)/ローナ・ミトラ/トビー・ジョーンズ(アーカイヴ社)
メモ 2021.3.18(木)シネ・リーブル梅田
 
 
 
 
感想
湖と瀑布を抱かえた森の奥深く、要塞のようにも見える研究所で若い男と二体のロボットはひっそりと暮らしている。(「サイレントランニング」みたい)
ロボットJ02が父(創造主)に明かす。「昨日、をみたの」(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」なの)
雰囲気ええやん と思って見ていた。
 
(日本国山梨県の森の中って設定みたいやけど、日本の景色には見えん。とか
  ロボットの進化がJ01→J02→ → → → → → → → → → → → → → → → → → → → J03みたい。とかはあってんけど。)
 
5歳で成長の止まった長女(J01)の面倒を見る思春期の次女(J02)がせつない。
 
ところが、えっってな展開で。そやからこの題名やったのね。。。。
★★★★戻る

ファーストラブ 
2021年 119分 日本
監督 堤幸彦
原作 島本理生『ファーストラブ』直木賞
出演 北川景子(公認心理士・真壁由紀)/高岡早紀(由紀の母)/中村倫也(弁護士・庵野迦葉)/窪塚洋介(迦葉の兄・真壁我聞)/芳根京子(聖山環菜)/板尾創路(環菜の義父)/木村佳乃(環菜の母)/石田法嗣(コンビニの元店員・ユウジ)
メモ 2021.3.16(火)TOHOシネマズ梅田
感想
見終わってもやもやする。登場人物たちのすっきり感はなんなん。
一朝一夕にはいかないとしても、これでええの?。問題提起がされてんのかな。これは原作のままなんやろか。
毒親はしかたがない、ほっといて、外部に助けを求められるように社会が支えようということなん? 
 
三人の母親がでてくるねん。そろいもそろって経済的な自立ができないためか、贅沢をしたいためか、子供より自分が大事で自己本位やねんね。
なぜなのか? これは大事な事やと思うねんけどまったく掘り下げていない。当時大学生だった人が一番後ろめたいってどういうことなん? これはダメな大人の話なの?
 
由紀の夫の我聞ってひともよくわからない。弟の想い人だった女性を何故妻にしたの? 弟思いで子供が好きって設定やろうとは思うねんけど、
子供の写真ばかり撮っていて、うさんくさい。フランス映画やったら、この人の造形はもっとうまいんとちゃうやろか。男前ではない方が良かったと思う。
 
法廷劇としてもいまいちで「包丁を持ってたのは計画的で殺人の意図があった」って、「そこが争点やったの」とバカなアタシは最後にわかった。
脚本なのか、編集なのか、なにがすっきりしないんやろ。この薄っぺら感は演出も良くないと思う。
★★戻る

シャドー・ディール 武器ビジネスの闇 SHADOW WORLD
2016年 90分 アメリカ / ベルギー / デンマーク
監督 ヨハン・グリモンプレ
原作 アンドルー・ファインスタイン『武器ビジネス:マネーと戦争の「最前線」』
メモ 2021.3.10(水)第七芸術劇場
あらすじ
戦争の原因には、領土、イデオロギー、ナショナリズム、宗教などの争いとは異なる「闇」があった。それは金儲け。
兵士たちが「彼らは生きていた」と苦しんだ第一次世界大戦で2万1千人の億万長者がアメリカで誕生していたとか。
武器商人も銀行も大儲けし、血は金に換えられた。「戦争は儲かる」と味をしめ、倫理観の欠如した金と権力の亡者が生まれる。
 
英国や米国の軍需産業は安全保障と言い、政治家とつながり賄賂やキャッシュバックによって「国際武器取引」をし、戦争を起こし長引かせ作った商品の「武器」を売る。
疑惑の政治家としてサッチャー英国元首相、ブレア英国元首相、レーガン元米国大統領、ブッシュ元米国大統領、チェイニー元米国副大統領、ラムズフェルド元米国防長官が挙げられていた。元軍需産業の関係者は、(この仕組みの中で)政治家はそんなに地位が高くないと言う。
 
現在の「テロとの戦い」は、相手が見えず民衆を巻き込み、終わりがないらしい。
中東の上を飛んでいるハゲタカ(死の商人)ですが、北朝鮮の核開発や中国の海洋進出により東南アジアも他人事ではないと思う。
★★★1/2戻る

21世紀の資本 CAPITAL IN TWENTY-FIRST CENTURY
2019年 103分 フランス/ニュージーランド
メモ 2021.3.7(日)WOWOW録画
あらすじ
経済学者トマ・ピケティさんが、昔の映像と経済学者たちに語らせ、著作の「21世紀の資本」を単純 わかり易くしたドキュメンタリー
 
「映画館で流れるように見たら、訳わからへんかな」と思って、見に行かなかった。
「何ゆーてはんのやろ」と、わかりにくい日本語もあり(適切な訳なんやろか)家で巻き戻しながら見てよかった。
先進国、欧米中心の話です。
 
忘れちゃうので内容を書いときます。
 
まず前提から。CAPITAL(資本)とは、何か?
 「資産」「元手」また「価値を生む仕組み」の様です。
 
資本主義とは、
 個人が資本を持つ事ができる こと。
 
資本(自分のお金でも借りたお金でも)を工場やらサービス(旅行やコミックやらゲームやら映画やら)に継ぎこみ、物や働く場所を生みだす。
そこで労働者が働き賃金を得る。
得た賃金から商品を買ったりサービスを受けたりして快適な消費生活を送り教育も受け、企業は利益を得て更なるアイデアも生まれ、さらに色々な産業が生まれ経済が成長し続ける。経済が回るねんね。
 
経済成長 とは何?
 経済の規模が大きくなること。基本は国のGDP(国内総生産)が大きくなること。らしい。
 
ここでまた、GDP(国内総生産)とは、と疑問が
 よくわかりませんが、「市場で取引された財やサービスの生産」量らしい。
 物をいっぱい作って、いっぱい買って、旅行に行きたおすと大きくなるらしい。インフレ、デフレの調整はあるみたい。
 
資源をじゃぶじゃぶ使って大丈夫なんと思います。
ただ、経済が永遠に成長できるのかどうかはわからんけど、今すぐ止まると人々は路頭に迷うのは確かなので、成長し続けるしかない(いまんとこ)。
映画は、18世紀から19世紀の産業革命から始まる「資本主義」を、現代まで駆け足でたどる。
元々資本主義には、富の偏在「金持ちはより金持ちに、もたざる貧乏人はいつまでも搾取され貧乏人のまま」
になる特徴がある。
 
それが戦争により社会が大きく変わる時、一度フラットになりかける。
例えば第二次世界大戦後、日本では財閥解体(されたかのように見えた)とか、農地改革で自作農が増えたとか。貴族が滅亡したとか。
戦後は、資本主義がうまく働き中産階級が増え社会が安定する。「一億総中流社会」輝く未来が見えた。
うまれた「富」は税金として徴収され、社会保障(医療保険、福祉、失業保険、生活保護とか)や公共事業(下水道やら橋やら鉄道やら道路やら病院やら学校やら)
に使われ、貧乏人にも広くばらまかれる。
また「富」は産業に再投資され、さらなる経済成長を続ける。
 
ところが、
  巨大IT産業の出現は雇用を生まない(人手がいらなくなっている。自国の労働者を使わない)。
  企業のグローバル化は、税金を納めない(バミューダ諸島とかに本社があるから)
  富はお手軽な「不動産」に投資され、雇用を生まず新たな産業も生み出さない。
  大金持ちが子供に大金を残す。残す子供の数も少ない。1%の大金持ちは「金が金を生み」子子孫孫繁栄しそう。
な事態となっている。いわゆる「富の再分配」がされない。権力も大金持ちに集中する。
 
結果、1%の大金持ちと99%の貧乏人に二極化する社会となりつつあるらしい。先進国では人口の3分の2は親より貧しくなりそう。
マット・デイモンの映画「エリジウム」の様な社会と表現されていた。
「格差社会」ね。19世紀の貴族社会みたいになりつつある。
 
で、トマ・ピケティさんが提唱しはるのは、(戦争や革命が起こらないためにも)
 「平和で調和のとれたまとまりある社会がほしければ、過大な格差は避けるべきです」
 「累新資本課税が必要です」(国家を超えた課税も)
 「財産権も永久に続いてはいけない」(相続のときだけでなく生涯に渡り、資本の多い人は毎年お金を返し続ける)
「働かざる者食うべからず」でした。
★★★★戻る

世界で一番しあわせな食堂 MESTARI CHENG
2019年 114分 フィンランド/イギリス/中国
監督 ミカ・カウリスマキ
脚本 ハンヌ・オラヴィスト
撮影 ヤリ・ムティカイネン
キャスト アンナ=マイヤ・トゥオッコ(シルカ)/チュー・パクホン(チェン)
メモ 2021.3.6(土)なんばパークスシネマ
感想
フィンランドが舞台の映画というと、アキ・カウリスマキ監督作品を置いとくと「かもめ食堂」「ククーシュカ−ラップランドの妖精」くらいしか見ていない。
どちらもゆったりした映画。
昔、「北欧3国」というのは「ノルウェー、スウェーデン、フィンランド」と思い込んでいたもんで「ノルウェー、スウェーデン、デンマーク」と知った時は驚いた。言語的にも違うらしい。北欧3国は古ノルド語族(ゲルマン)であり、フィンランドはフィンウゴル語族(ウラル)らしい。(どう違うのかはわからへんけど、以前センター試験に出たアニメと言語を結びつける設問でひとつだけ明らかに違っていた)
調べたら「フィンランドではフィンランド語とスウェーデン語の2つの言語を公用語」としているみたい。
 
 
この映画は上海の料理人が小学生くらいの息子とふたり、恩人を探してフィンランドを訪れるお話。言葉はおぼつかない。
村の食堂の気さくな店主に世話になるねんけど、その食堂の料理がアレだったもんでお礼に料理人は食堂を手伝うねん。
料理人と美容師はそれぞれ包丁とハサミがあれば、言葉が通じなくとも世界中で暮らしていける。そしておいしい料理は人を幸せにする。
 
はらはらするところもあるけど緑豊かで、料理するところとか、岩場での俯瞰とか美しかった。
 
ただ、ひとつ疑問が。
上海の中国料理ってフィンランドの人が食べてもおいしいんやろか。味覚があうんかな(あのぐちゃとした料理よりはおいしいと思うけど)。
そして驚いたのはフィンランドの田舎のスーパーで普通に白菜が売られていたこと。ちょっと小ぶりやったけど。
これもまた調べたところ、フィンランド語で白菜は「kiinankaali(中国のキャベツ)」というらしい。
白菜の原産地は地中海沿岸でした。11世紀に中国で結球型となり日本に伝わったのは明治だそうです。
★★★1/2戻る