歴史のシリア〜パルミラ(ローマ遺跡)
 
Palmyra(Roman Ruins)
 
 
パルミラ(ローマ遺跡)
 

  シリア砂漠のオアシスに忽然と現れる大遺跡パルミラ。かつて隊商都市として栄華を極め、ローマを向こうにまわすほどの権勢を誇った文明の残照は、女王ゼノビアの悲劇とともに今も圧倒的な存在感を漂わせています。  

 
記念門
 


   
ベスト・オブ・ローマ遺跡
朽ちてなお美しい、という表現がぴったりの記念門。優美な造形と繊細な装飾は、間近で見ても離れて見てもため息が出る素晴らしさです。私的には是非ともベスト・オブ・ローマ遺跡に挙げたいですね。いや、シリア国内だけでなく、中東全域を対象としたとして。地面に転がる破片も趣きがあります。
   

   
観光ラクダ
記念門の近くには観光用のラクダがいつも何頭か客待ちをしています。乗ってみるのも楽しそうですが、暑い昼間は休みになることが多いようなので、気をつけて。お客さんがいないと、係の人が乗って遺跡周辺を行ったり来たりしています。これはこれで風情があったぞ。
   

 
列柱通り
 


   
ゼノビアの浴場
全盛期のパルミラに君臨していたのが女王ゼノビア。浅黒い肌をした彼女はクレオパトラほどの美貌こそなかったものの、多くの外国語を操る明晰な知性で知られていました。そのゼノビアが建設したという浴場跡。残念ながら、彼女自身が入浴したかどうかは定かではありません。
   

   
円形劇場
ローマ遺跡ですから劇場も定番です。規模はさほど大きくないものの開放感のある造りをしていて、当時の自由な市民生活の雰囲気がうかがえます。保存状態はかなり良く、舞台にしても座席にしても今でも充分使用に耐える出来です。実際、ときどきイベントが開かれているようです。
   

   
アゴラ
アゴラと呼ばれるこの場所は生鮮食料品や日用雑貨などが取り引きされる市場でした。今で言うところのスークですね。とはいっても細い路地ではなく、広場を取り囲むように多くの露店が並ぶ、ショッピングモールに近い造りでした。きっと大勢の市民で賑わったことでしょう。
   

   
四面門
ヨルダンのジェラシュやレバノンのアンジャールにも見られる四面門ですが、とにかく規模が違います。ひとつひとつがビルのような大きさ。そして何より洗練されたそのフォルム。いかにも「本場」って感じですね。逆光に映えるシルエットも溜め息の出る美しさです。ファンになりそう。
   

   
アラブ城
遺跡の西、彼方に見える岩山の頂上に、イスラム勢力の進出後に建てられた城砦が残っています。夕暮れ時、この方角に沈んでいく太陽に照らし出され、遺跡全体が燃えるように赤く染まっていきます。「残照」という言葉が浮かんできました。一度見たら忘れられない、それはそれは美しい光景です。
   

   
振り返ると
記念門から、道の両側に次々と現れる見どころを堪能しながら歩きます。ところで、この列柱通り自体もまた、パルミラの栄華の象徴なのです。2km近くにわたって並ぶ柱もさることながら、道幅にも注目してください。ラクダくらいしか交通手段がなかった時代に、この広さなのですから。
   

 
ベル神殿
 


       
 
ギリシャ風
規模とともに美しさも際立つパルミラの遺跡群ですが、柱の装飾などを見ていると、そのテイストは武骨さが前面に出たローマ風というよりは、ギリシャっぽい感じがします。
 
貴重品
敷地のあちこちに、かつて神殿を構成していた多くの遺物が無造作に転がっています。これってきっと、ひとつひとつが考古学的には凄い価値のものなんですよね。
 
天井
かつて神が安置されていたとされる部屋の天井には、見事な装飾が残されていました。幾何学模様なのか花なのか、モチーフは今ひとつ不明ですが。
 

       
 
神殿内部
神殿の中はこんなふうになっています。両側のくりぬかれた一角が神の玉座でした。ここには最近まで人が住んでおり、煮炊きのせいか玉座の天井が黒くすすけていました。
 
最古
ベル神殿はパルミラで最も大きく、かつ最も古い建造物です。紀元前後の創建とされているので、もう2000年もこのような姿で時を刻んできたんですね。
 
全体像
この巨大な建物がパルミラの宗教センターでした。ベル神はレバノンで言うバール神と同じで、フェニキア以来から続くこのあたりの土着信仰だったわけです。
 

 
朝陽
 


   
シルエット
昼間は50℃になるパルミラも、朝は20℃以下まで気温が下がります。強い風の中に佇んでいると、街の方角から朝陽が昇ってきました。シルエットとなって浮かび上がる列柱や門はとても幻想的でした。早起きして見に行くだけの価値は充分にあります。ただし、防寒対策は忘れずに。
 

   
羊の放牧
ベル神殿以外の遺跡は誰もが立ち入り自由になっています。徐々に明るくなって周囲の様子がわかってくるにつれ、大勢の羊がやって来ているのに気づきました。朝の散歩なのかな。放牧のルートになっているんですね。遺跡は貴重な文化遺産であるとともに、生活の場でもあるのです。
   


   

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