実装機業界でのフィーダ設計の仕事


 電子部品実装機メーカーの当社を含む各社は基本的に設備産業であるが故にその業態の基本に於いては大量生産の形態ではなく、一品一様の少量生産形態です。よって会社組織もそれに適応したものです。
 しかしながら、当方が担当していた実装機用部品供給装置、いわゆる「フィーダ」は、月産千台〜数万台の中量生産品種であり、実装機メーカーの会社組織では本来うまく対応できません。

 そのため、「フィーダ」の開発、設計、生産、サービス業務は社外の協力工場、商社などに強く依拠したものになります。
 また、社内においては、本来の会社組織では分業であるはずの企画〜販売、サービスに至る全領域の業務がフィーダー担当者個人に丸投げされます。
 当然個人の能力では全領域を遂行できませんが、社外と連携、それを指揮することで社外の能力を取り込み、人的リソースの不足を補填します。担当者は以上の状況にあるため、その社内的扱いもまた特殊です。

 一般に役職は「主任」、「主事」を超えるものではありませんが、社外組織を含む関連事業を代表することになるため、社内調整の場での交渉相手は、事業場長、部門長クラスになります。人事上直属の上司は一般にほとんど関与しません。
 担当者が置かれた以上のような状況は、国内競合各社ともほとんど同じ様です。
 社の売り上げの10%超、利益率も社全体を遙かに超える分野ですが、同業各社とも極めて少ない担当者にフィーダー関連の業務を遂行させています。

 上述の通り、業務範囲は広範で一人で一つの中小企業体であるかのような様相です。

 加えて、「フィーダ」が「精密機械」と「量産品」の特徴を併せ持つため、金型工法も極めて多種多様な工法を使用するので必要とされる技術知識の領域も広範になります。

 また私固有の状況として、制御担当者がいなかったため、機械設計担当であるにも関わらず、配線設計、組込/上位ソフト仕様まで守備範囲としていました。
 また、社内唯一の大量生産品のため「品番・部品管理システム」や「3DCAD導入」などの社内実験対象になり易く、多くの業務改善活動に関わる羽目になります。

当方が担当機種の設計、開発ごとに実行していた業務内容を下記に列記します。


(内容)

  ・ 製品企画書起案、製品規格、機能仕様作成
  ・ 多階層品番体系設計、機構構造設計、詳細設計、部品設計
  ・ 工法 (アルミダイカスト、ロストワックス、MIM、木型鋳造、板金プレス、
        板金エッチング、焼結、冷間鍛造ピン、樹脂射出成形、樹脂シート加工、
        引き抜き、ファインブランキング、カシメ、溶接、機械加工、バネ加工)
  ・ 特注市販品(DCサーボモータ、センサ、振動素子、クラッチ、ユニット)
  ・ 表面処理(各種メッキ、窒化処理、パーカライジング)
  ・ 外注金型部品メーカーとの打ち合わせ、仕様図受領、部品精度検証
  ・ 量産立上げ(試作組立、試作機評価、現象解析、対策検討)
  ・ 組立手順書、配線手順書、検査表作成、冶具設計/組立/改善
  ・ 取扱説明書原稿作成(文、イラスト、写真、画像処理、英訳)
  ・ フィールドテスト(海外)、評価、開発ドキュメント(ISO)
  ・ 製造品質トラブル対応、サービストラブル対応、製造工程変更対応
  ・ 海外サービス拠点立ち上げ(現地メンバー教育)
  ・ 業務改善(品番/部品管理システム、3DCAD導入)
  ・ 顧客工程改善関係の技術レポート、販促資料作成



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