彼が来ると随分速い

子供の頃のちょっとした失調の思い出です。
この失調が訪れると、全ての事象がビデオの早回しのように感じられます。人々はコマネズミのように走り回り、自分の手足のスピードも凄まじい速さに感じられます。
距離感も拡張するので、机の下に落とした消しゴムを拾おうと身をかがめると、頭を10メートルも振りおろしたような感じがします。
この失調の時、頭の中がきな臭く、耳元にぶつぶつとささやき声が聞こえます。

「彼」とは、ささやき声の主のことです。

中学生になって思春期の訪れとともに「彼」はやって来なくなりました。