心と体の対話
Dialogue with heart and body

第3話 『痛みとその心』

「痛い!」その感覚は、誰にでも経験があるもの。
しかし果たしてその痛みは、誰もが同じように感じるものなのでしょうか?
同じ強さで右頬と、右肩をを叩かれたとしましょう。同じように痛さを感じるでしょうか?
叩く人が違ったら?叩かれた状況が違ったら?

きっと違う痛みを感じるであろうと、容易に想像がつきます。
それは痛みというものが、主観的なものであると、誰もが経験を通して知っているからです。

客観的に測れないものを、客観的に治療するのは難しい事です。
本人の感じる痛みを推し量って治療して行くことになり、社会的、精神的な要因による痛みも関ってくるからです。


今日は、痛みとその心とのつながりをお話しします。
現在痛みと闘っている方に、少しでもお役に立てば幸いです。

  • 痛みが、「プロスタグランジン」等の発痛物質のしわざと考えられる場合、「鎮痛剤」で対処します。
  • また「モルヒネ」等の、神経を麻痺させる事により痛みを感じにくくする緩和ケアという方法もあります。
  • 痛みが「血流の滞り」と判断される場合は、温熱治療によって血流を良くする事により、痛みを軽減します。
  • 痛みが精神的なものから来ていると考えられる場合、抗うつ薬やメンタルヘルスのケアをします。

しかし痛みの原因を特定するのは、実は難しい事なのです。
医学的に同じ所見でも、痛みが無い人と有る人が現実に存在するからです。
それは「セロトニン」や「ノルアドレナリン」という疼痛抑制に働く神経伝達物質が関っているからです。これらが多く出ている時、人は痛みを感じにくいのです。

例えば、スポーツをやっている最中はこけてもあまり痛みに気が付かないが、終わってみてひどく痛む事があったり、大笑いしている時は痛みも忘れていたり軽く感じる事がある体験を考えてもらえば、理解できると思います。その時これらの物質が多く出ているのです。

反対に、体が疲れていたり、精神的に落ち込んでいたり怒っていたりすると、痛みはより強く感じられます。その時はこれらの物質が減少しているのです。


そして、痛みは必ずしも悪いものではないのです。
痛みは体からのサインです。
痛いから動かさないで欲しい、と安静にする。そのことで治りが早い事もあります。
痛かったから、その原因になる行動は繰り返さないようにしようと思い、危険を避ける事を学ぶことができます。

例えばハンセン氏病の患者さんは、痛みを感じる神経に麻痺がくるので、よく火傷をしてしまい、苦労されます。
我々を苦しめもし、守りもする「痛み」という感覚、それを大切なものと認識し、痛みの声を聞いてやる事が大切だと思います。


私が提案する、痛みを和らげる方法は、以下のとおりです。

  • 治療者との良好な人間関係を作り、痛みの原因と思われる事を良く説明してもらう事。
    それによって、痛みへの理解が深まり、対象療法も効果をあげます。
    ただし、痛みの原因を特定する事は難しいので、それでも治らない時は、以下のことを更に熱心に探求して欲しいと思います。
  • リラックスや気分転換、前向きな心を通して「セロトニン」等の疼痛抑制物質を豊富に分泌させ、痛みを感じにくくする。
  • どんな時により痛むのか、どんな時にましなのか、それを自分で観察し、ましな時を分析する。
    そしてその結果分かった事を、どんどん生活に取り入れて行く。