株式会社設立の手続


会社設立の準備が整いましたら、実際に設立の手続きに進みます。
ここでは、「発起設立」の手順についてご説明いたします。

(「発起設立」とは:会社を設立する当事者である「発起人」が、会社設立時に発行する株式の全てを引き受ける設立手続きをいいます。 
この発起設立の他に「募集設立」という方法があります。
「募集設立」とは:会社設立時に発行する株式の一部だけを発起人が引き受け、残りの株式については、他に株主となる人を募集する設立方法をいいます。
株式会社設立のほとんどは、この「発起設立」の方法により設立されています。)

1.定款を作成する。
2.定款について公証人による認証を受ける。
3.設立時発行株式に関する事項等の決定をする。(定款に定めていない場合)
4.株式につき、その出資分を払い込む。
5.設立時役員を選任、本店所在地を決定する。(定款に定めていない場合)
6.設立時取締役等による調査を行う。
7.設立時代表取締役等を選任する。(定款に定めていない場合)
8.設立登記の申請を行う。
9.株券発行会社の場合は、株券を発行する。

 

1.会社の商号・資本金・機関等の概要を定めて、定款を作成する。

定款とは
会社の商号、目的、本店所在地、機関など基本的事項を定めた規則のことを「定款」と言います。
会社設立にあたっては、必ずこの定款を発起人全員で作成しなくてはなりません。
 
定款の記載事項
『会社法』においては、機関設計を初めとして、会社の組織・運営に関する多くの事項が、定款の相対的記載事項(定款に記載しなくても定款そのものの効力には影響がありませんが、会社にとって効力をもたせようとするには必ず定款に記載しなければならない事項)とされ、定款自治が拡大されました。

そこで、定款にどう定めるかが、大変重要!となります。
※ 定款の内容については、書籍で詳しく研究する・専門家(公証人・司法書士など)に相談する事をお勧めします。

「絶対的記載事項」(必ず記載しなければならない事項)として、次のような項目があります。
  • 目的 事業内容を記載する
  • 商号 商号中に「株式会社」の文字を用いなければならない
  • 本店の所在地 本店の所在地の市区町村までの記載でも良い
  • 発起人の氏名と住所 人数制限なし
  • 本店の所在地 本店の所在地の市区町村までの記載でも良い
  • 発行可能株式総数  但し、原始定款に記載しなくても、設立の登記申請時までに定めれば良い

「相対的・任意的記載事項」として、一般的には次のような項目があります。
  • 資本金の額
  • 発行する株式の数
  • 株券の発行についての定め (不発行が原則)
  • 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、又は委員会の設置に関する定め
  • 株主総会の普通決議の定足数
  • 取締役、監査役等の員数、任期に関する定め
  • 変態設立事項 (現物出資等)
  • 株式の譲渡制限の定め
  • 定時株主総会の招集時期
  • 会社の事業年度に関する定め
  • 公告方法

定款の作成方法
書面にて認証を受ける場合
 用紙、記入方法に制限はありません。
 作成部数は ①設立登記申請用 ②公証人役場保管用 ③会社保管用の3通です。
 3通に発起人全員が実印で記名押印(割印・捨印も)します。
 
電子認証を受ける場合  
 定款を電子データ(PDFファイル)にて作成します

※ いずれの場合にも、あらかじめ認証してもらう公証役場へ連絡の上、定款の案文の打ち合わせ、必要書類の確認を取っておくと良いでしょう。

機関
『会社法』においては、会社組織の機関設計の幅が広がり、設立しようとする会社の実態に即した機関設計が重要となります。  
以前の商法では、株式会社は、取締役3名以上・監査役1名以上・代表取締役1名以上を定めなければなりませんでしたが、 『会社法』においては、従来の有限会社のように 取締役1名だけ でもOKとなりました。

機関設計のルール
株式会社には、最小限「株主総会」と「取締役」という機関を置かなくてはなりませんが、その他の機関を、どのように設置するかは、各会社が決めることができます。
但し、この機関設計には、新『会社法』上のルールがあります。
例えば
○ 全ての株式会社には、株主総会のほか、取締役を設置しなければならない。
○ 取締役の員数は、1人または2人以上である。ただし、取締役会を置くには3人以上必要である。
○ 取締役会を置くには、監査役または会計参与または3委員会等のいずれかを置かなければならない。
等です。

実際にどのような機関設計ができるか?
公開会社でなく、大会社でない場合、次のようなパターンが可能です。
① 株主総会・取締役
② 株主総会・取締役・監査役
③ 株主総会・取締役・監査役・会計監査人
④ 株主総会・取締役会・会計参与
⑤ 株主総会・取締役会・監査役 ←以前の商法上の株式会社の機関
⑥ 株主総会・取締役会・監査役会
⑦ 株主総会・取締役会・監査役・会計監査人
⑧ 株主総会・取締役会・監査役会・会計監査人
⑨ 株主総会・取締役会・3委員会・会計監査人(注)いずれの場合も + 会計参与 設置OK

各機関は何をするのか?
取締役 取締役は(他に代表取締役その他会社を代表する者を定めた場合を除き) 株式会社を代表します。
取締役会 設置会社の場合は、取締役会において会社の業務執行の決定を行います。
監査役 取締役の職務の執行を監査します。
公開会社でない株式会社においては、定款に定めることにより、監査の範囲を会計に関するものに限定することができます。
会計参与 取締役と共同して、計算書類等を作成します。
会計監査人 株式会社の計算書類等を監査します。
3委員会 指名委員会・監査委員会・報酬委員会
各委員会は、取締役会決議により取締役の中から選定された委員3名以上で組織され、次のような業務を分担します。
 指名委員会  取締役の選任・解任に関する議案を決定等
 監査委員会  執行役・取締役等の職務執行の監査等
 報酬委員会  執行役の報酬等の決定等

資格として
「会計参与」 は 公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人
「会計監査人」は 公認会計士、監査法人  

設立にあたり、どのような機関にすれば良いのか?  
機関設計の 考え方の一つとしてご参考にして下さい。
○ 個人事業者の法人成りの場合のように、できる限りシンプルな経営形態にしたい場合は、 最小限の 「株主総会」・「取締役」にする。   
○ 数名の出資者で会社を設立し、会社経営は取締役に任せたいという場合は、「取締役会」も設ける。この場合は、「監査役」もしくは「会計参与」も設けなければなりません。
○ 事業資金の融資を受ける等、信頼性を高めたい場合は、「監査役」又は「会計参与」を設ける。

取締役・監査役の任期 
『会社法』においては、取締役の任期 2年 ・ 監査役の任期 4年のところ
公開会社でない会社については、任期を10年まで伸長できるようになりました。
 
資本金
『会社法』において、最低資本金規制が撤廃され資本金は何円でもOKとなりました。

資本金の決め方
設立する会社の資本としていくら必要か?   
発起人がいくらずつ出資できるか? を主体に考えて定めれば良いでしょう。

但し、次のような点にも注意が必要です。
○ 融資や取引の条件、許認可の要件等に一定の資本規模が要求される場合があります。
○ 資本金1000万円以上の法人については、設立事業年度と翌事業年度の消費税の免除が受けられません。

現物出資
金銭以外の財産をもって出資することできます。これを「現物出資」と言います。
現物出資する場合には、次のような書類が必要となります。
○ 現物出資する財産の価額が500万円を超える場合は、弁護士、税理士等の証明
○ 現物出資する財産が不動産の場合には、不動産鑑定士の鑑定評価書

 

2.定款について公証人による認証を受ける

定款は、公証役場で認証を受けなければなりません。
(公証役場は、本店が東京都の場合、東京都内の公証人役場であればOK)

原則は、公証役場に発起人全員が行くものですが、代理人を立てて依頼する事もできます。

公証役場へ提出するものは (書面申請の場合)
 ① 定款 3通
 ② 発起人全員の印鑑証明書
 ③ 発起人全員の印鑑(代理人による場合は代理人の印鑑)
 ④ 収入印紙 4万円
 ⑤ 認証手数料 5万円(現金)
 ⑥ 定款の謄本交付手数料 1ページにつき250円
 ⑦ 代理人による場合は 発起人の実印を押印した委任状 及び 代理人の印鑑証明書(運転免許証等でもOK)

電子認証(書面ではなく、電子データ・電子署名による認証)制度を利用することも可能です。
電子認証の場合は、電子データの定款に電子署名を添付して、オンライン申請した後に、公証人役場へ行き、認証されたデータ等を受け取ります。この場合、上記④の収入印紙は不要となります。

 

 

3.設立時発行株式に関する事項等の決定をする       

定款に、
○ 発起人が割当を受ける設立時発行株式の数
○ 設立時発行株式と引換えに払い込む金額
○ 設立後の資本金及び資本準備金の額
○ 発行可能株式総数          
       についての定めが無いときは、これらについて、発起人全員の同意をもって定めます。

 

 

4.株式につき、その出資分を払い込む              

定款の認証が完了したら、発起人は株式を引き受け、発起人の定めた銀行に払い込みます。 
従前の商法では、金融機関の「株式払込金保管証明書」が登記添付書類でしたが、 『会社法』の施行に伴い、発起設立の場合は、発起人個人の口座に、各発起人がその出資分を払い込んだ後、設立時代表取締役が「代表者が払込みを受けたことを証する書面にその払込みが行われた 預金通帳の写し等を綴ったもの」を作成し、登記申請時に添付すれば良くなりました。

 

 

5.設立時役員を選任、本店所在地を決定する           

発起人は、株式払込後遅滞なく、過半数の決議をもって設立時取締役と設立時監査役の選任並びに、本店所在地(住所地番)の決定をします。
定款でこれらの決定をしている場合はこの手続きはいりません。

 

 

6.設立時取締役等による調査を行う

設立時取締役及び設立時監査役の全員で、現物出資・財産引受等について調査し「設立時取締役及び設立時監査役の調査書」を作成します。

 

 

7.設立時代表取締役等を選任する

取締役会設置会社の場合
 設立時取締役は、設立時代表取締役を、過半数の決議をもって選任します。
 その他、委員会設置会社である場合は、各委員、執行役、代表執行役を、過半数の決議をもって選任します。

取締役会設置会社ではない場合
 定款で代表取締役を決定していない場合は、発起人が代表取締役を過半数の決議をもって選任します。
 代表取締役を定めなくてもOKです。この場合は、各自代表として、取締役全員が代表取締役となります。

 

 

8.設立登記の申請を行う

発起設立の場合は、設立時取締役等の調査が終了した日 もしくは発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内に設立の登記申請をしなければなりません。

※ 設立登記申請日が「会社の設立日」となります。

登記申請は次のような方法があります。
○ 管轄法務局へ出頭し登記申請書類を提出する。
○ 管轄法務局へ登記申請書類を送付する。
○ インターネットでオンライン申請をする。


設立登記申請は、原則として設立時代表取締役が行います。
代理人(他の取締役や司法書士など)によって登記申請することもできます。