約束

-目次-
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「ねえリカルド。本当に二人がどこに行ったか知らないの?」
 二人は店から出てパリの街中を歩いていた。いつの間にか一緒に居たはずのマチアとレミが居なくなってしまい、レジーヌは案の定リカルドを責める。
「あぁ……。俺も気づいたら居なかったんだよ。こうやって探しながら歩いていればすぐに見つかるだろ」
 リカルドはあまり気にもとめない様子で言った。
「そうかなあ……」
 明らかに不満がある様子でレジーナは呟く。
「おいっ! そこのお前!」
 突然低い声の男の叫び声がした。リカルドはこの声を無視して歩き続けた。
「おいっ……お前ら二人の事だよ!」
 直後、レジーヌは後ろから乱暴に腕を引っ張られた。
「きゃ……。い、いったーい!」
 振り返ると柄の悪い男が3人ほど立っている。
「何すんだよ!」
 リカルドは大きな声で怒鳴り、その連中に目を向ける。少し間をおいてから目を見開き、びっくりして声を上げる。
「……!? ポールか……!」
「へ、何だ覚えていたのか。お前ら5年前から急にいなくなりやがって、風の噂じゃイギリスの大富豪に引き取られたって噂だったが本当らしいな」
 リカルドの服装を見ながらポールは嫌味たらしく吐き捨てる様に言った。
「レジーヌを離せ」
「お前何指図してやがんだ。こいつに手を出して欲しくないならおとなしくついてこい」
 ポールは薄笑いを浮かべ強引にレジーナを連れて行った。

 リカルド達は、路地裏の奥まった所まで誘導された。
「おい、お前ら。用があるのは俺に対してだろ。その子は関係ないんだから手を離せ」
 穏やかであるがいつもより低い声で睨みつけるようなリカルドの口調に、5年前のそれとは迫力が全く違い、少したじろきながらもポールは言った。
「確かに用があるのはお前だがな……。だがそれを決めるのはお前じゃない」
「お前、俺たちに手を出したらどうなるか分かっているのか」
 5年前に警察に逮捕されたガスパールは未だに刑務所から釈放されていない。ミリガン夫人とブレル弁護士の計らいだろうか。詳しい事情を知らぬポールもリカルド達に関わって警察のお世話になるのは避けたいと思っていた。ただ何かしないと気が済まなかったのだ。
「ふんっ。手は出さないさ。ただしお前ら気に食わないんだよ。おい、そこの蓋を開けろ」
 ポールは連れの男に指図する。地面にはマンホールがあった。男達が二人がけでそのマンホールの蓋を開ける。
「おい、女、そこに入れ」
「え!?」
「早くしろ」
 レジーヌは助けを請う様にリカルドを見るが、リカルドは黙ったままレジーヌを見つめていた。レジーヌは仕方がなくマンホールの中へ降りていった。
「次はお前だリカルド」
「……」
「なんだ、3対1でやるってのか」
 全く怯まずに睨み付けているリカルドに対し、ポール達は自信ありげに不敵な笑みを浮かべていた。
「……くそっ」
 悔しそうな表情をしながらもリカルドはしょうがなくマンホールを降りていく。
「へへ……直接手は出さないさ。だが運が良ければお前らもここから出ることができるかもしれないな。じゃあな」
 地上から笑いながら、蓋を閉めていく。
「くそっ! 出せよ!」
 どんどん、とリカルドは真っ暗な穴の中から蓋を叩き続ける。どすん、と大きな音がした。何かで蓋の上から覆いをしたらしい。
「ちくしょー」
 リカルドは蓋を叩くのを止めた。
「リカルド……どうしよう」
 真っ暗の中レジーナはうろたえる。
「とりあえず、下まで降りて。レジーヌ」
 リカルドは小さな声で言った。

「どうしよう……リカルド」
 真っ暗闇で殆ど視野が開けない空間で怯えた表情のレジーヌはリカルドに近づく。
「さてと……ここから出なきゃな」
 さっきポール達と話していた雰囲気とは一気に変わり、落ち着いた口調でリカルドは言った。
「え!? さっき入り口は閉められたし、こんな訳も分からない下水道から出られるの?」
「もちろん。じゃなきゃあの時大人しくこんな所には入らないよ」
 リカルドは、暗闇で表情は分かりづらいも、優しくレジーヌに話す。
「リカルド怖くないの?」
「別に……昔はこういうこと良くあったから慣れているし、ある意味イギリスでの未知の生活より分かりやすくていいよ」
 おもむろに歩き始める。それに続いてレジーヌも恐る恐る歩き始めた。
「そうなんだ……。すごいねリカルドは」
「マチアだって同じようなもんだよ」
 レジーヌの気がまぎらうように、リカルドはマチアの話題を出した。
「マチアもこういう生活していたの?」
 マチアから過去の話は殆ど聞いたことのないレジーヌだったので、少しびっくりしたように聞き返した。
「まぁ俺たちみんな孤児だったからな。生きるためにどんなことでもやってきたさ」
 真っ暗な道だったので足下に気をつけながら、壁際沿いを歩き続ける。レジーヌはリカルドの服の裾を握ってついて行った。しばらくして地下道の広い道に出た。一定間隔で電球も設置されており先ほどより視野が開けた。リカルドはレジーナに尋ねる。
「出来れば紙と鉛筆があれば良いんだけど……レジーヌ持っている?」
「あ、うん」
 レジーヌは鞄から取り出す。
「本当に出ることできるの?」
 心配そうにレジーヌは何やら書いているリカルドを覗きこみながら尋ねた。
「あぁ。ここで迷ったことはあるし、その後気になって何度か探索したんだ」
 リカルドは受け取った紙に地図のような物を書いていた。
「大体は地上の地図と一致しているんだ。あとこの水の流れはセーヌ川に続いている。……ポール達に連れられたのが地上で言うこの辺だから、大体位置は分かるよ」
 セーヌ川付近の大まかな地図を書いたリカルドは今いる場所と思われるところを印し、レジーヌに見せた。
「……そうなの? リカルドよく分かるね」
 きちんと説明するリカルドを見て、レジーヌは少し気分が落ち着いた。
「まぁな。地上には絶対に出られるよ。ただし、時間はかかるけどな」
「え?! どのくらい?」
「早くて1時間、少なくとも2時間は見ておいたほうが良いかも」
「ええ?! なんでそんなのかかるの?」
「ちゃんとした場所の特定と、全ての出口が空いているとも限らないから、いくつも回らなきゃならない」
「本当に大丈夫なの……?」
「ああ、それは安心して良い」
 自信たっぷりにリカルドは言い、再び歩き始める。
「そんなに言うならリカルドを信用するよ……」
 レジーヌは距離を開けずにリカルドの後を歩いていった。

「……リカルドはすごいね」
 沈黙が続かないようにレジーヌは言った。
「?」
「もし私1人だったら 恐ろしくて泣いてばっかりで一生出られないと思う」
「そうかなあ……まあ踏んでいる場の数が違うからしょうがないんじゃない」
 リカルドは明るく言う。
「別にこんなこと、今の生活をしていれば出来る人の方が少ないと思うし」
 リカルドは元気のないレジーヌを励ますようにふいに話題を変える。
「俺はバイオリンをひく才能がある方がすごいと思うけど……」
「……」
「俺、マチアが簡単そうにバイオリンをひくから俺でもひけるかなって思って貸してもらったことがあるんだ」
「……」
「でも、音楽どころか、音すら出ないの。びっくりしたよ」
「……」
「ほら 笛とかシンバルとか、吹いたりたたいたりすれば演奏とはいかなくても簡単に音が鳴る楽器って沢山あるだろ? ピアノもそうだよね」
「うん……」
「でも、バイオリンってそうじゃないんだよな。あんな木の箱からあの音楽が出てくるってそれこそ俺一生出来る気がしない」
 所々地図に印をつけたり地下道の壁に印をつけながらリカルドは話続けた。
「……別に才能なんかないよ」
 ずっと黙ってリカルドの話を聞いていたレジーヌが口を開いた。
「誰だって、そこそこに練習すれば音だってでるし、演奏だってすることできるよ。私だって特別な才能があるわけじゃない。でも……」
「……もし、音楽の才能があるとしたら、それはマチアかもしれない」
 レジーヌは話を始めた。

 マチアがアルベルトの所に来た時の事。譜面の読み書きが全く出来ないマチアにアルベルトはレジーヌにそれを教えてやって欲しいと頼まれたのだ。
 アルベルトは早くに妻を亡くし、仕事も忙しく家やレジーヌのことはメイドに任せきりであった。
 ただ、バイオリンのレッスンだけはレジーヌが3歳の頃からアルベルトが指導していた。しかし実の娘に指導するのはなかなか難しく、それは教わっているレジーヌも同じ気持ちで、レッスンの質は歳を重ねるにつれ落ちていくのがよく分かった。7歳くらいになると限界を感じ、アルベルトはレジーヌのバイオリンの指導から身を引き、他の先生に任せた。それ以降、表面上は無難に生活していた二人であったが、音楽についての二人の溝はより深いものになった。そのような暮らしが続いて、突然マチアという存在が現れる。アルベルトからの依頼はレジーヌにって不快なことではなかった。また、まだまだ教えてもらう立場である自分が、反対の教える立場になれることにちょっした優越感を感じていた。

「マチアはいつからバイオリンを習っているの?」
 一つ年上のマチア。異性であり背の違いはかなりあるが、この世界でレジーヌは自分より年上の人でも、バイオリンの腕については自分の方が上ということを何度も経験しているので、躊躇なく話しかける。
「覚えていないんだ。お父さんが死んだのが俺が6歳くらいの頃でそれまでは毎日家でバイオリンをひいていた。でも、6歳からは全然ひいていない」
「今って12歳だよね?」
 黙って頷くマチア。
(6歳から今まで一度も習っていない……)
 部屋の棚に並んでいる数々の楽譜を見ながら自分の事を思い出すレジーヌ。自分が6歳だったの頃の事は大まかに覚えており、発表会用に練習した曲については何をひいたのかしっかり記憶に残っている。本で言ったら10冊以上、曲数で数えたら500曲以上は練習している。それを、この人は全くやっていないのか。しかも6歳なんて幼い頃のレッスンなど、たかが知れている。これで音楽学校に入ってやっていけるのか? レジーヌはかなり疑心難儀になるも、父に言われたことをやるのみと割り切って話を始める。
「楽譜を一度も読んだことがないなら、基本的なことから始めないといけないよね……」
 初心者用の楽譜を本棚から取り出し、説明する。
「この丸いのが音符って言って、音の高さをあらわすの。丸の中の色と周りの模様がその音の長さを表すんだよ」
 レジーヌは譜面を目で追いながらバイオリンでひいてみせる。
「今一行だけひいたんだけど、わかった?」
「うん、なんとなく」
 真剣に楽譜を見ていたマチアだが、自分もバイオリンを構えて同じようにひいてみせる。ひき終わり、確認するようにレジーヌに視線を向ける。
「これくらいならちゃんと読めるみたいだね」
 レジーヌはその楽譜が少し簡単すぎたかと思い、他の楽譜を吟味する。部屋を見渡していたマチアが、別の譜面台にある楽譜に気づき、レジーヌに言う。
「ねえ、レジーヌ。この楽譜をひいてみて」
 その楽譜は今レジーヌがレッスンで練習している楽譜であった。譜面には音符がぎっしり書き込まれており、初心者向けのものではないことは見るからに明らかである。
「え、そんなのマチアには無理だよ」
「確かにすごく難しそうだけど、レジーヌがひくのを聴きたいんだ」
 まあひくくらいなら……ちょうど最近よく練習している曲だし……と思い、バイオリンを構え、ひき始める。軽やかなリズムに、しばらく幻想的なメロディが流れる。切りの良いタイミングで曲は終わった。
「本当はもっと長いけどこんな感じ」
 今はマチアに楽譜を教える機会なので、脱線は早めに切り替えようとレジーヌは曲を終わらせた。
 しかしその後、マチアはバイオリンを構え同じようにひき始める。今まさにレジーヌがひいたものをそのまま同じように! 曲だけでなく、トリル、スピッカート、重音、ヴィブラート全てのテクニックをレジーヌのそれと同じようにひいたのだ。
「……!!!!」
「初めて聞いた曲だけど素敵な曲だね」
 演奏を終えて、一瞬間を空けてからレジーヌに声をかけるマチア。しかしレジーヌは無言で顔を真っ赤にさせ、体を震わせバイオリンをそのままにして部屋を飛び出していった。残されたマチアはぽかんとその場に立ち尽くしていた。

「お父さん!!」
 怒りの大声でレジーヌはリビングにいるアルベルトに叫ぶ。アルベルトは少し驚いた様子であったが穏やかに尋ねる。
「どうしたんだい、レジーヌ」
「マチアがバイオリンを習ったことがないなんてどうして嘘をついたの!?」
「いや、嘘なんてついていないが」
「絶対に嘘。楽譜が読めないなんてのも嘘だし!!」
 自分の行為を汚された気分でいっぱいのレジーヌは涙をぽろぽろ流して嗚咽している。
「レジーヌ落ち着きなさい。彼が楽譜を読めないのは私も確認している。どうしてそんな風に思ったんだい?」
 レジーヌの背中をさすり、レジーヌに問いかける。レジーヌは今さっきレジーヌの部屋で起きたことをアルベルトに説明をした。
「……そうか、そこまで実力があるとは思わなかった。でも彼が楽譜を読めないことと、6年間バイオリンをひいていないことは事実だよ」
「嘘……楽譜が読めないのにどうしてあんなにひけるの?!」
「レジーヌがひいた曲を一度聴いただけで覚えてひくことができたんだね。曲に関しての記憶力が非常に優れているんだろう」
 アルベルトはまさかと思いつつ呟いた。
「初めて聞いた曲を、一度聞いただけですぐにひくってそんなことできるの?! 6年間一度もバイオリンを触っていなかったんでしょ?」
 一見平然を装っているが明らかに自分以上に驚きを隠せない表情の父に、レジーヌは父が言っていたことは嘘ではなかったのかと思い始めた。
「私は才能という言葉は嫌いだけど、説明するとしたらそれが彼の才能なのかもしれない……それとも彼の父親の指導のおかげか……。一体どんな教育をしたんだろうね。同じバイオリンの指導者としてとても興味があるな」

 二人はレジーヌの練習室を訪れる。マチアは譜面を睨めながら、曲をひこうとしているが、府読みが演奏についていかない。その姿を見て先ほどの父の言葉を理解したレジーヌはマチアに近づく。
「マチアはひくことは出来るけど、府読みができないから、まず楽譜を歌うことからしたほうが良いと思うよ。この位置にある音符は<ラ>って言うんだよ」
 そう言ってバイオリンのA線の弦をはじく。
「ラから始まって、音階が一つずつあがって ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ。これで楽譜を歌うことが出来るでしょ」
「ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ……か。自分で歌うとバイオリンでひく音と違ってなんかヘンだな」
 まだ少し目を腫らしているレジーヌであったが、音程の合っていないマチアの言葉にクスクスと笑った。
「それってなんていうか分かる? 音痴っていうんだよ」
「まずは楽譜を歌う練習が必要だな」
 アルベルトも言った。からかわれた様でむすっとした表情をしたマチアであったが、再び楽譜に目を落として、音符を目で追い小さく口ずさむ。

 アルベルトにとってマチアの存在は音楽の才能が未知数であり、今まで教えてきた何人もの生徒よりも特別な存在になった。マチアが来てからの5年間は3人でいるその瞬間はとても心地よいものであり、レジーヌにも同じように感じていた。

「ふーん。マチアってやっぱりすごいんだな」
 歩きながら感心してリカルドは言った。そこに突如雨音が鳴りだし、道の中央を流れている水の流れが激しくなった。
「リカルド、どうしよう、ここ水でいっぱいにならない?!」
「そんなわけないよ……大丈夫。川につながっているんだから……」
 リカルドは変わらない表情で答える。
「地上は雨が降っているんだね」
 レジーヌは何とか気を落ち着かせて呟いた。それでもここに入ってきた時と比べて随分慣れてきた様子だった。
「ああ、レミとマチアは雨に濡れていないかな」
「本当に私達帰れる?」
「大丈夫だって。むしろここなら雨宿りの心配もなくてラッキーだぜ」
「……それでレジーヌはマチアのこと好きなの?」
 不意にリカルドはレジーヌに問う。
「え?!」
 思いもよらなかった質問にレジーヌはびっくりする。
「いや、言いたくなかった良いけど。なんとなくさっきの話からマチアの事すごくほめているからさ」
「す、好きっていう気持ちではないと思う……」
 リカルドにそんなことを言われ、そんなつもりはなかったという気持ちを取り繕うようにレジーヌはぽつりと続けた。
「マチアに特別な人がいるってことは知っていたし」
「へぇ、あいつがそんなこと話すなんて意外だな」
 リカルドは驚いた様子で立ち止まって振り返る。
「まさか。マチアは自分の事殆ど話さないよ」
「……マチアがたまにひく曲、シューベルトのアヴェマリアって曲があるんだけど」
「ああ、知っている」
 5年前に、マチアがレミから貰ったバイオリンでよくひいてくれていた曲だ。音楽に疎いリカルドだが、曲を調べたレミから散々説明されたのでよく覚えている。
「あれを聴けば、誰かの為にひいているんだって嫌でも分かるよ」
 時々、月の光が一番明るい満月の夜だろうか、ふと毎日の練習とは別にマチアはそのアヴェマリアを奏でる。もちろん自分だってその曲を知っていたし、技術的に難しい曲ではない。でもマチアが奏でるそれは情熱的であるが悲しみを秘めたメロディであった。自然と涙があふれてきた。今までどんな曲を聴いても一度も涙など出たことはなかったのに。
「相手が誰なのかは今まで分からなかったけど。――昨日、二人一緒にいるところを見てすぐに分かった」
「……」
 リカルドはどことなく寂しげに話すレジーヌに言葉が出なかった。
 レジーヌは今まで自分が一番マチアに近い人間だと思っていたから、昨日のことはやはりショックであったがレミに対しての妬みというわけではなかった。別にマチアに恋人がいてもかまわない。ただ、自分たちとは全く違う世界のレミと一緒になることで、今の自分たちとの関係が壊れてしまうかもしれない不安が過ぎったのだ。
「好きって言うより……マチアは私たちの家族だから、今はずっと一緒に暮らしていたいと思う」
「……そっか、レジーヌにとってマチアは大切な人なんだね」
 リカルドは複雑な気持ちになるも、レジーヌの気持ちをくむように優しく言った。
「ちょっとここの上見てくる」
 一つの出口に目星をつけたリカルドはレジーヌを置いて、壁から上がるハシゴを登っていった。

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