辻永クラフト工房おすすめの、オリジナルや定番の道具などを紹介します。
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TY-銀ペンホルダー ver.1
使い方:準備編

 初期型の銀ペンホルダー ver.1の使い方:準備編のページです。

 銀ペンホルダーは、銀ペンの芯を取り付けて、主に等幅の線を引くために作りました。また、そのほかにも工夫次第で様々な使い方をすることができる道具です。銀ペンホルダーの機能を十分にお役立ていただくために、調整方法や実際の使い方を順を追って説明してまいります。

使い方:ver.2準備編 使い方:基本編 使い方:応用編
使い方:カービング編 使い方:自作編 困った時の解決法

【銀ペンホルダーの特徴】

 銀ペンホルダーは、銀ペンの芯を取り付けて、主に等幅の線を引くための道具です。等幅の線を引くことを応用すると、様々な作業に使うこともできます。革縫製の分野だけでなく、カーヴィングなどの装飾的なクラフト技法などにも便利に使うことができる、利用範囲の広い道具です。

 大型のつまみネジを採用しましたので、手で締めるだけでも十分な固定力が得られます。また、足の長さは可変式になっており、足の幅と同時に作業に合わせて素早く足の長さも調整することができる、合理的な操作性があります。

 銀ペンの芯だけを使いますが、芯にシリコンチューブを取り付けることによって、取り回しが楽になります。作業に合わせて、シリコンチューブの部分を持つ事もできますし、本体を直に持つこともできます。

 道具を壁面のネットなどに掛けておきたいという人のために、フック用の穴も設けてあります。この穴は上下の2箇所にありますが、足の上下の向きを入れ替えて、上の画像のように、足と芯の左右の位置を自由に変えることができるようにしたものです。

 足の仕立て加工はご自分で行っていただきます。自分で加工というと難しいと思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。簡単に加工することができます。銀ペンホルダーに限らず、道具は自分で調整して初めて使いやすくなるものですので、これから説明する銀ペンホルダーの仕立て方を参考にして、使いやすいように仕立ててください。このページの最後まで一度目を通してから仕立て作業を始めることをおすすめします。

 銀ペンホルダーは、ガラスエポキシの厚板から削り出しで作られています。型を使った樹脂成形品とは一線を画す、質実剛健と言った感じの仕上がりです。強度がありながら加工性も良く、繊細な加工・調整にも応えてくれる素材の特性がありますので、お好みの仕立てでレザークラフトにお役立てください。

 素材のガラスエポキシの厚板は、厚みの公差が大きい素材です。そのため、素材の厚みによって、足部品の厚み調整の研磨を行う場合と行わない場合があります。厚み調整の研磨を行ったものと行わないものとでは、表面の質感に多少の違いが生じますが、どちらの場合でも美観や実用性に問題はありません。



【銀ペンホルダーの仕立て方】

 はじめに、銀ペンホルダーの同梱品一式の図です。本体・シリコンチューブ・説明書が入っています。銀ペンの芯は付属しませんので、Schneiderのノック式銀ペン用の替芯をお買い求めください。レザークラフト関連の各社で取り扱いがありますので、入手しやすい銀ペンです。

 付属の説明書でも仕立て方の説明をしておりますが、このページではさらに画像の枚数を増やして、より詳細に順を追って仕立て方の説明をいたします。まずは、大まかな流れを見てみましょう。



 銀ペンホルダーの仕立てと言っても、足の先端の加工を行うだけですので、作業は簡単です。素材のガラスエポキシは、工業的には難切削素材なのですが、意外なことに手で削る作業は簡単にできます。耐水ペーパーの#120〜320程度で大まかな形に荒削りをしてから、#1000以上の耐水ペーパーと革砥で滑らかに仕上げるという工程になります。

 まずは、加工が簡単で使いやすい、標準的な形状の仕立て方を紹介します。上の画像の左端の足が最初の状態です。この状態から先端に向かって薄くなるように足の外側を削り、中央の足のような形にします。私は耐水ペーパーの#120を使うことが多いのですが、かなり早く削れますので、初めての人はもう少し細かい番手が無難かもしれません。先端を鋭くし過ぎるとケガの原因にもなりますし、革に傷がつきやすくなってしまいますので、先端には少し厚みを残してください。それから、右端のように左右から幅を整えて、先丸の剣先といった形状に整えます。これで荒削りは終わりです。

 次に、耐水ペーパー#1000で角張った所を少し丸めながら、全体が滑らかになるように整えます。#1000での研磨に続いて最後は革砥をかけて仕上げ、標準的な足の加工は終了です。もっと具体的で詳細な点については、次の注意書きの後に画像付きで紹介します。
 

『加工上の注意』
 ガラスエポキシは、硬度の高い素材ですので、あまり鋭く加工するとケガをする危険がありますので、注意してください。また、削った粉が肌に付くと、痒みを感じる事がまれにあります。これは、ガラス繊維が肌を刺激することによって起こるようですので、加工中は粉が飛散しないように注意してください。粉が肌につかなければ問題ありませんし、アレルギーではありませんので、肌に付いても洗い流せば問題ないそうです。敏感な方には、保護手袋の着用や、水研ぎ・水で洗い流しながらの加工をおすすめします。加工後は、作業した場所の清掃と石鹸での手洗いを十分に行ってください。

 エポキシ樹脂については、反応前の液状の接着剤などはアレルギー反応の原因になりやすい物質ですが、反応後の硬化した状態では、ほとんどアレルギー反応などは起こらないと考えられるそうです。でも、天然の漆などでも、塗りの硬化後の製品でも痒くなるという人も中にはいらっしゃるようですから、もしも異変を感じた時には加工を中止してください。

 私自身(辻永)は、過去にエポキシ接着剤で耳のあたりがかぶれた経験がありますが、ガラスエポキシの加工で痒みを感じたことは無く、身近な人でもガラスエポキシで痒みの出たことはありません。銀ペンホルダーの足1本のわずかな加工で、大きな影響が出ることは考えにくいのですが、上記のような素材の特性がありますので、敏感な方はご注意ください。以下に、より安全安心な加工法を紹介します。




【水研ぎで仕立てる】

 加工して削った粉が飛び散らないように、水を使って加工する方法を紹介します。八つ切りにした#120の耐水ペーパーに、指先に付けた水を少量載せました。手に粉がまったく付かないということではありませんが、水研ぎをすれば粉が空気中に飛散するような心配はありません。初めてで削り過ぎが心配な人は、#240や#320などの番手の耐水ペーパーを使ってください。画像ではわかりにくいですが、ガラス板を作業盤に使っています。必須ではありませんので、例えば新聞紙の上などでも作業は可能ですが、精度が必要なときは硬く平らな台の上で作業を行ってください。



 #120での荒削りが終わった状態です。足の外側を削ってから、先端を丸めの剣先と言った形に整えました。削った粉が水に分散して白くなっているのがわかりますね。



 荒い傷を消すように#1000で研磨します。この時、#120で削った部分はもちろんですが、#120では削っていない足の側面や角なども少し丸くするような気持ちで研磨します。#120と違って大きく形が変わるわけではありませんが、各部を滑らかに仕上げたほうが、使用感が良くなります。




 最後は革砥で仕上げます。側面や先端など、先端付近は磨き残し無く仕上げるつもりで革砥に当ててください。ガラスエポキシは、もともと滑りの良い素材ではありませんので、革砥でしっかり仕上げたほうが快適に使うことができるようになります。磨いた足にはグリーンルージュがこすりつけられて付着したような状態になっていますので、ティッシュペーパーやウエスでよく拭いてください。これで、足の先端の加工は終了です。

 以上が、安心安全な水研ぎによる仕立てです。使用した耐水ペーパーは水気をティシュペーパーで吸うなどして、後片付けをしてください。手も石鹸でよく洗ってください。ここでは作業台の上で行う水研ぎとして紹介しましたが、ふだん刃物の研ぎなどを行っている流しなどがあるようでしたら、水道の水で流しながらの加工も良いと思います。



 上で紹介した安心安全な水研ぎによる加工法には反しますが、私は、この画像のように手に持って加工する事が少なくありません。ゴミ箱の上でさっと済ませてしまいますが、このようなやり方でも流しで水で流しながら行えば、敏感な方でも大丈夫だと思います。ちなみに、ここまで紹介してきた標準的な形の加工では、削り始めから仕上がるまで私は2分かかりません。慣れて早くなったというのもありますが、ガラスエポキシの加工はとっても簡単で、道具加工の初心者にも扱いやすい素材なのです。もちろん、もっと時間のかかる繊細な加工にもガラスエポキシは応えてくれますので、道具加工に慣れた方にもおもしろい素材だと思います。



 実際に使う時の形でご覧いただくと、このような感じになります。右が未加工の足で、左が標準的な加工をした足ですが、やや薄めに仕上がっています。革の縁から線を引く用途では、特に薄く作る必要はありませんが、いろいろな用途に使う前提で、薄めに仕上げたものです。



 薄くしなくても大丈夫という見本も一つ紹介します。標準的な加工法から、先端に向かって薄くする工程を省いた形状です。先端の形状を整えてから、角張っている部分を滑らかに研磨するだけです。この形が使いやすい用途もありますが、別のページで紹介するカービングでの利用や、コンパス的な使い方には不向きな形になります。最も簡単な加工ではありますが、汎用性の観点から標準加工とはしなかった形です。でも、いくつかの基本的な使い方には差し支えない形ですので、まずはこの形を試してから、薄くする加工も考えるというのも一法です。



 他にも、足の形状には様々なものが考えられます。私が試してみた形を並べて撮影しました。形だけ見ても使い勝手まではなかなか想像しにくいかもしれませんが、実際に使っているうちに、こうしたらもっと使いやすくなるかもしれないという発見が、きっとあると思います。用途や作業方法に合わせて加工をしやすいというのは、銀ペンホルダーの利点の一つです。

 標準的な足でほとんどの作業を行うことができますが、より専門的な道具に仕立てるために、いくつかの足を自分の作業用に選びました。私が仕事用として選択したのは、以下の5種類です。用途と合わせて、使い方のページであらためて紹介いたします。







【銀ペンの芯の取り付けと調整】

 これから銀ペンの芯を取り付けるという時の一式です。画像では本体の足が未加工の状態ですが、実際には足の加工後に取り付けたほうがいいでしょう。

 精密ドライバーも一緒に写してありますが、銀ペンの芯の取り付けではネジの締め加減が重要になります。締め過ぎないように、私は軸の細い精密ドライバーを使っています。注意すれば普通のドライバーで何ら問題無いのですが、私の場合は数を扱うこともあって、楽に使うことのできる精密ドライバーを使っています。お手持ちの精密ドライバーがあるようでしたら、使ってみてください。持っていないけど興味があるという人は、ホームセンターなどでも安価に販売されていますし、百均などでも販売されていますので、基本道具の一つとして用意しても良いかもしれません。私の精密ドライバーのシリコンチューブは自分で取り付けたものです。

 銀ペンの芯は、レザークラフト業界では一般的で入手しやすい、Schneiderのノック式銀ペン用の替芯をおすすめします。銀ペンホルダーは、足の厚みと芯の太さのわずかな違いを利用して機能するようにデザインされた道具なので、使用する芯の軸の太さがたいへん重要になります。Schneiderの芯の太さは約3.2ミリなのですが、この太さ約3.2ミリの芯を使うことによって、はじめて道具として機能するように作られています。レザークラフト業界では、もうひとつ白いエンドキャップの透明軸に入った状態で販売されている、SCHMIDTの銀ペンの芯が同じく太さ約3.2ミリですので、こちらも利用可能です。選択肢が複数あるわけですが、レザークラフトの各社が扱っていて入手がしやすい Schneider の芯を、まずはおすすめします。

 もっと細い軸の銀ペンも流通し販売されておりますが、これらの芯を使うときには太さの調整が必要になります。この点については、「困った時の解決法」のページで解説いたします。


 銀ペンホルダーは、足の上下を入れ替えると、芯と足の左右の位置関係が自由に変わるようになっていますが、まずは初期状態で試していただいて、具合が悪ければ変えていただくということで良いと思います。初期状態は、右利きの人が道具の表裏を自然に感じることが多い向きにしてありますが、実際にお使いになってみて、作業性が良くなる向きで自由にお使いいただければと思います。



 では、実際に芯を取り付けてみましょう。まず、中央の黒いつまみネジと芯固定用の4個の小ねじを緩めると、芯固定用の外側のネジと内側のネジの間に、銀ペンの芯が通るようになります。ネジを緩めるときに、緩めすぎるとナットなどが落ちてしまうことがありますので、注意してください。Schneiderの芯はノック式の芯のため、バネが当たる部分がプレス加工されて薄く広くなっていますが、芯を通しその部分が本体に対して斜めになるように合わせます。画像のような角度になります。これは必須ではありませんが、平らに取り付けるよりは何となくこの方が、剛性の面で多少なりとも有利になるのではないかという気がしています。単なる思い込みで、大した効果は無いかもしれませんが、念のためですね。ネジはまだ締めないでください。



 芯の固定位置は、足を最も短くした状態で、銀ペンの芯がわずかに長くなるような位置がおすすめです。上の画像の左側のような位置になります。よく見ないとわからないくらいですが、芯の先端のボールが少し足よりも出ているという感じです。もちろん、お好みの位置に取り付けていただいて結構ですが、芯が少し長いくらいの位置が汎用性があると思います。作業に合わせて、足の長さも調整しながら使いますが、足を伸ばすと画像の右側のようになります。芯の位置が決まったら、中央のつまみネジを締めて、芯が動かないようにします。



 次に、芯固定用の小ねじを締めますが、あまり強く締め過ぎないようにしてください。柄の太いドライバーで力を入れて締めてしまうと、銀ペンの芯がつぶれてしまう事があるからです。軸は薄い金属製のパイプですから、ほどほどの締め具合にするということです。軽めにネジが止まるまで締めます。精密ドライバーの細い柄を持って締めると、それほど力がかからないので比較的安全ですが、太い柄のドライバーと使うときには、締めすぎに注意してください。ネジは止まるまで回しますが、そこから締め込んでいかないということです。



 4個の小ねじを軽めに締めてから、中央のつまみネジをゆるめてみましょう。足は一応動くと思いますが、ほとんどの場合は動きがかなり渋いはずです。そこで、芯固定用の4個のネジのうち、外側の2個のネジを増し締めします。今度は、少し力を入れやすいように、精密ドライバーに取り付けたシリコンチューブの太い部分を持って回しています。ほんの少し2個のネジを締めることによって、足が軽く自由に動くなるようになりますので、様子を見ながら調整してみてください。

 外側のネジを必要以上に強く締めると、足が自由に動く反面、つまみネジを締めた時の足の固定力が弱くなってしまう場合がありますので、締めすぎには注意してください。バランスよく締めると、たいへん快適に使うことができます。簡単な調整ですが、初めての人は少しずつ慎重に行ってみてください。

 どうしても調整が上手くいかない時は、もう一度最初から行ってみてください。それでも上手くいかない時は、芯がつぶれて厚みが足りなくなっているかもしれません、その時の調整法は「困った時の解決法」のページで解説いたします。


 以上で、銀ペンホルダーの仕立てと調整は完了です。

 ページの上下に、使い方などを説明したページヘのリンクを設けておりますの。実際にどのような使い方ができるのかなどを、それぞれのページを開いてご覧ください。



【細い芯を使いたい場合】

 銀ペンにはいくつかのメーカーの製品があり、製品によりその太さが異なります。銀ペンホルダーは、太さが約3.2ミリの芯を使うようにデザインされていますが、レザークラフト業界にも3ミリ以下の細い軸の銀ペンがありますし、靴業界などでも細めの軸の銀ペンが流通しています。

 これらの細い軸の銀ペンを、銀ペンホルダーに使うときには、アルミテープで太さの調整を行うのが簡単です。上の画像の銀ペンの軸は、約2.8ミリなのですが、厚さ0.1ミリのアルミテープを2周巻いています。2周巻くということは、アルミテープ4枚分の厚みが加わりますので、おおよそ2.8+0.4で約3.2ミリの太さになるのです。この太さに調整すると、あとは普通に銀ペンホルダーに取り付けることができます。

 かなり大雑把な数字ですが、アルミテープを1周巻くとしたらテープの長さは約9ミリ、2周巻くとしたらテープの長さは約18ミリ必要になります。軸の太さに3を掛けた寸法が目安になるので、準備も簡単です。

 もうひとつ、足を薄く削るという方法もあります。ホームセンター等で販売されている、ダイヤモンド砥石をお持ちでしたら、削るのはそれほど難しくありません。使用する芯の太さよりも、0.1〜0.2ミリ程度薄くなるように削ってください。斜めに削れたり、部分により厚みの違いが大きくなると、足の動きや固定に問題が生じる場合があるありますので、ノギスなどで厚みの確認をしながら加工してください。







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