行列の標準形
(舞台設定)
K:体(例:有理数をすべてあつめた集合Q、実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)
A:体K上の(m,n)型行列
(主張の確認)
任意の「体K上の(m,n)型行列」Aにたいして、
ある有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積Pmと、
ある有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積Pnと、
ある「0を含めた自然数」rが存在し、
Pm A Pn=D(m,n,r)
を満たす。
(証明)
次の手順にしたがうことで、基本行列との積だけで、あらゆる行列を標準形に至らせることができる。
ただし、ここでは、体K上の(m,n)型行列Aがm>nである場合のみをとりあげる。
Step0:
体K上の(m,n)型行列Aが、零行列であるか否かをチェック。
(i) (m,n)型行列Aが、零行列であるケース
→Aは、もともと、D(m,n,r)である。1になっている成分の個数r (rankA)=0。
このとき、Im A In=D(m,n,0)
なお、Imは、m次基本行列type1でcij=1としたもの、m次基本行列type3でc=1としたもの
Inは、n次基本行列type1でcij=1としたもの、n次基本行列type3でc=1としたもの
であるから、
このケースで、
Aにたいして、
Imという、m次基本行列Pmと、Inという、n次基本行列Pnと、自然数r=0が存在し、
Pm A Pn =D(m,n,r)
が満たされていることが確認された。
(ii) (m,n)型行列Aが、零行列ではないケース
→step1へ進む。
Step1:
Step1-1:
(i) (m,n)型行列Aの(1,1)成分が非0である場合
A1=Aとおく。
(ii) (m,n)型行列Aの(1,1)成分が0である場合
行列積Qm[1]AQn[1]の(1,1)成分が非0となるように、
m次基本行列type2のみを有限個かけ合わせた行列積Qm[1] 、
n次基本行列type2のみを有限個掛け合わせた行列積Qn[1]
をとることができる。
(なぜなら)
|・Step0を経ているので、Aは零行列ではなく、どこかに、非0の成分を有す。
| したがって、
| 列の入れ替えを行う列基本変形type2 と、
| 行の入れ替えを行う行基本変形type2 だけを、それぞれ有限回用いて、
| Aを、(1,1)成分が非0の(m,n)型行列に、変形することができる。
|・ある行列の列の入れ替えを行う列基本変形type2 は、
| その行列の右からn次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行の入れ替えを行う行基本変形type2は、
| その行列の左からm次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・以上三点より、Aの右に、適当なn次基本行列type2を有限個かけ、
| Aの左に、適当なm次基本行列type2を有限個かけることによって、
| (1,1)成分が非0の(m,n)型行列を得ることができる。
|・つまり、行列積Qm[1]AQn[1]の(1,1)成分が非0となるように、
| m次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qm[1]、
| n次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qn[1]
└ をとることができる。
このQm[1]、Qn[1]にたいして、
A1=Qm[1]AQn[1]
とおく。なお、A1も、(m,n)型行列である。
Step1-2:
行列積Pm[1]A1Pn[1]が、
というかたちになるように、
m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[1]
n次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pn[1]
を定めることができる。
(なぜなら)
|・(m,n)型行列A1の(1,1)成分を要として第1行を掃き出す。
| それから、(m,n)型行列Aの(1,1)成分を要として第1列も掃き出す。
| すると、A1は、
| (1,1)成分が1、(1,1)成分を除く第1行第1列が全て0
| という(m,n)型行列に変形される。→詳細
|・上記の操作は、
| たとえば、
| 1回の列基本変形type3、有限回の列基本変形type1、有限回の行基本変形type1
| によって構成される。→詳細
|・ある行列の列基本変形type3は、
| その行列の右からn次基本行列type3をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の列基本変形type1は、
| その行列の右からn次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行基本変形type1は、
| その行列の左からm次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・以上4点より、Aの右に、有限個の適当なn次基本行列をかけ、
| Aの左に、有限個の適当なm次基本行列をかけることによって、
| 「(1,1)成分が1、(1,1)成分を除く第1行第1列が全て0」を満たす(m,n)型行列を
| 得ることができることがわかる。
|・つまり、行列積Pm[1]A1Pn[1]の(1,1)成分が1、(1,1)成分を除く第1行第1列が全て0となるように、
| m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[1] 、
| n次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pn[1]
└ を定めることができる。
このPm[1]、Pn[1]にたいして、
A1'=Pm[1]A1Pn[1]
とおく。
すると、A1'=Pm[1]A1Pn[1]=Pm[1]APn[1] であるか、
A1'=Pm[1]A1Pn[1]=Pm[1](Qm[1]AQn[1])Pn[1]=Pm[1]Qm[1]AQn[1]Pn[1]= (Pm[1]Qm[1]) A (Qn[1]Pn[1])(∵)
なお、A1'も、(m,n)型行列である。
Step1-3:(m,n)型行列A1'から、第1行・第1列を取り去った残りの(m−1,n−1)型行列が、
零行列であるか否かをチェック。
(i) (m−1,n−1)型行列が零行列であるケース
→A1'はD(m,n,r)に到達。r=1。
このとき、A1'=Pm[1]A1Pn[1]=Pm[1]APn[1]またはA1'= (Pm[1]Qm[1]) A (Qn[1]Pn[1])だから、
Aにたいして、
Pm[1]ないし(Pm[1]Qm[1])という、有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積Pmと、
Pn[1]ないし(Qn[1]Pn[1])という、有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積Pnと、
自然数r=1が存在し、
Pm A Pn =D (m,n,r)
が満たされていることが、このケースで確認されたことになる。
(ii) (m−1,n−1)型行列が零行列ではないケース
このとき、A1'=Pm[1]A1Pn[1]=Pm[1]APn[1]またはA1'= (Pm[1]Qm[1]) A (Qn[1]Pn[1])だから、
A1'は、Aの左から、有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積を、
Aの右から、有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積を、
かけたものである。
この点を確認したうえで、step2へ進む。
Step2:
Step2-1:
(i) (m,n)型行列A1'の(2,2)成分が非0である場合
A2=A1'とおく。
(ii) (m,n)型行列A1'の(2,2)成分が0である場合(下図)
行列積Qm[2] A1' Qn[2] の(2,2)成分が非0となるように、
m次基本行列type2のみを有限個かけ合わせた行列積Qm[2] 、
n次基本行列type2のみを有限個掛け合わせた行列積Qn[2]
をとることができる。
(なぜなら)
|・Step1-3を経ているので、
| A1'から、第1行・第1列を取り去った残りの(m−1,n−1)型行列は零行列ではなく、
| 第2行〜第m行・第2列〜第n列のどこかに、非0の成分を有す。
| したがって、
| 列の入れ替えを行う列基本変形type2 と、
| 行の入れ替えを行う行基本変形type2 だけを、それぞれ有限回用いて、
| A1'を、(2,2)成分が非0の(m,n)型行列に、変形することができる。
|・ある行列の列の入れ替えを行う列基本変形type2 は、
| その行列の右からn次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行の入れ替えを行う行基本変形type2は、
| その行列の左からm次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・以上三点より、A1'の右に、適当なn次基本行列type2を有限個かけ、
| A1'の左に、適当なm次基本行列type2を有限個かけることによって、
| (2,2)成分が非0の(m,n)型行列を得ることができる。
|・つまり、行列積Qm[2] A1' Qn[2] の(2,2)成分が非0となるように、
| m次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qm[2]、
| n次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qn[2]
└ をとることができる。
このQm[2]、Qn[2]にたいして、
A2=Qm[2] A1' Qn[2]
とおく。なお、A2も、(m,n)型行列である。
Step2-2:
行列積Pm[2]A2Pn[2]が、
というかたちになるように、
m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[2]
n次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pn[2]
を定めることができる。
(なぜなら)
|・(m,n)型行列A2の(2,2)成分を要として第2行を掃き出す。
| それから、(m,n)型行列A2の(2,2)成分を要として第2列も掃き出す。
| すると、A2は、
| (2,2)成分が1、(2,2)成分を除く第2行第2列が全て0
| という(m,n)型行列に変形される。→詳細
|・上記の操作は、
| たとえば、
| 1回の列基本変形type3、有限回の列基本変形type1、有限回の行基本変形type1
| によって構成される。→詳細
|・ある行列の列基本変形type3は、
| その行列の右からn次基本行列type3をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の列基本変形type1は、
| その行列の右からn次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行基本変形type1は、
| その行列の左からm次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・以上4点より、A2の右に、有限個の適当なn次基本行列をかけ、
| A2の左に、有限個の適当なm次基本行列をかけることによって、
| 「(2,2)成分が1、(2,2)成分を除く第2行第2列が全て0」を満たす(m,n)型行列を
| 得ることができることがわかる。
|・つまり、行列積Pm[2]A2Pn[2]の(2,2)成分が1、(2,2)成分を除く第2行第2列が全て0となるように、
| m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[2] 、
| n次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pn[2]
└ を定めることができる。
このPm[2]、Pn[2]にたいして、
A2'=Pm[2]A2Pn[2]
とおく。
すると、A2'=Pm[2]A2Pn[2]=Pm[2] A1' Pn[2] であるか、
A2'=Pm[2]A2Pn[2]=Pm[2](Qm[2]A1' Qn[2])Pn[2]=Pm[2]Qm[2]A1' Qn[2]Pn[2]= (Pm[2]Qm[2])A1' (Qn[2]Pn[2])(∵)
なお、A2'も、(m,n)型行列である。
Step2-3:(m,n)型行列A2'から、第1行・第2行・第1列・第2列を取り去った残りの(m−2,n−2)型行列が、
零行列であるか否かをチェック。
(i) (m−2,n−2)型行列が零行列であるケース
→A2'は標準形D(m,n,r)に到達。r=2。
このとき、step1-3-(ii) と、step2-2より、
Aにたいして、
有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積Pmと、
有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積Pnと、
自然数r=2が存在し、
Pm A Pn =D (m,n,r)
が満たされていることが、このケースで確認されたことになる。
(ii) (m−2,n−2)型行列が零行列ではないケース
このとき、step1-3-(ii) と、step2-2より、
A2'は、Aの左から、有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積を、
Aの右から、有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積を、
かけたものであることを確認したうえで、
step3へ進む。
Step3:
:
:
:
Step (n-1):
Step (n-1)-1:
(i) (m,n)型行列A'n-2の(n-1,n-1)成分が非0である場合
An-1=A'n-2とおく。
(ii)(m,n)型行列A'n-2の( n−1,n−1)成分が0である場合(下図)
行列積Qm[n-1] A'n-2 Qn[n-1] の( n−1,n−1)成分が非0となるように、
m次基本行列type2のみを有限個かけ合わせた行列積Qm[n-1] 、
n次基本行列type2のみを有限個掛け合わせた行列積Qn[n-1]
をとることができる。
(なぜなら)
|・Step(n-2)-3を経ているので、
| A'n-2から、
| 第1行〜第(n−2)行・第1列〜第(n−2)列を取り去った残りの(m−n+1,2)型行列は
| 零行列ではなく、
| 第(n−1)行〜第m行・第(n−1)列〜第n列のどこかに、非0の成分を有す。
| したがって、
| 第(n-1)列と第n列との入れ替えを行う列基本変形type2 と、
| 第(n-1)行と第n行〜第m行との入れ替えを行う行基本変形type2 だけを、
| それぞれ有限回用いて、
| A'n-2を、( n−1,n−1)成分が非0の(m,n)型行列に、変形することができる。
|・ある行列の列の入れ替えを行う列基本変形type2 は、
| その行列の右からn次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行の入れ替えを行う行基本変形type2は、
| その行列の左からm次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・以上三点より、A'n-2の右に、適当なn次基本行列type2を有限個かけ、
| A'n-2の左に、適当なm次基本行列type2を有限個かけることによって、
| ( n−1,n−1)成分が非0の(m,n)型行列を得ることができる。
|・つまり、行列積Qm[n-1] A'n-2 Qn[n-1] の( n−1,n−1)成分が非0となるように、
| m次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qm[n-1]、
| n次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qn[n-1]
└ をとることができる。
この Qm[n-1] 、 Qn[n-1] にたいして、
An-1=Qm[n-1] A'n-2 Qn[n-1]
とおく。なお、An-1も、(m,n)型行列である。
Step(n-1)-2:
行列積Pm[n-1]An-1Pn[n-1]が、
というかたちになるように、
m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[n-1]
n次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pn[n-1]
を定めることができる。
(なぜなら)
|・(m,n)型行列An-1の( n−1,n−1)成分を要として第(n−1)行を掃き出す。
| それから、(m,n)型行列An-1の( n−1,n−1)成分を要として第(n−1)列も掃き出す。
| すると、An-1は、
| ( n−1,n−1)成分が1、( n−1,n−1)成分を除く第(n−1)行第(n−1)列が全て0
| という(m,n)型行列に変形される。→詳細
|・上記の操作は、
| たとえば、
| 1回の列基本変形type3、有限回の列基本変形type1、有限回の行基本変形type1
| によって構成される。→詳細
|・ある行列の列基本変形type3は、
| その行列の右からn次基本行列type3をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の列基本変形type1は、
| その行列の右からn次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行基本変形type1は、
| その行列の左からm次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・以上4点より、An-1の右に、有限個の適当なn次基本行列をかけ、
| An-1の左に、有限個の適当なm次基本行列をかけることによって、
| 「( n−1,n−1)成分が1、( n−1,n−1)成分を除く第(n−1)行第(n−1)列が全て0」
| を満たす(m,n)型行列を得ることができることがわかる。
|・つまり、行列積Pm[n-1]An-1Pn[n-1]の( n−1,n−1)成分が1、
| ( n−1,n−1)成分を除く第(n−1)行第(n−1)列が全て0となるように、
| m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[n-1] 、
| n次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pn[n-1]
└ を定めることができる。
このPm[n-1]、Pn[n-1]にたいして、
A'n-1=Pm[n-1]An-1Pn[n-1]
とおく。
すると、A'n-1=Pm[n-1]An-1Pn[n-1]=Pm[n-1] A'n-2 Pn[n-1] であるか、
A'n-1=Pm[n-1]An-1Pn[n-1]=Pm[n-1](Qm[n-1]A1' Qn[n-1])Pn[n-1]
=Pm[n-1]Qm[n-1]A'n-2Qn[n-1]Pn[n-1]=(Pm[n-1]Qm[n-1])A'n-2 (Qn[n-1]Pn[n-1])(∵)
なお、A'n-1も、(m,n)型行列である。
Step(n-1)-3:(m,n)型行列A'n-1から、
第1行〜第(n-1)行・第1列〜第(n-1)列を取り去った残りの(m−n+1,1)型行列が、
零行列であるか否かをチェック。
(i) (m−n+1,1)型行列が零行列であるケース
→A'n-1は標準形D(m,n,r)に到達。r = (n−1)。

このとき、step(n-2)-3-(ii) と、step(n-1)-2より、
Aにたいして、
有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積Pmと、
有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積Pnと、
自然数r= (n−1)が存在し、
A'n-1=Pm A Pn =D (m,n,r)
が満たされていることが、このケースで確認されたことになる。
(ii) (m−n+1,1)型行列が零行列ではないケース
このとき、step(n-2)-3-(ii) と、step(n-1)-2より、
A'n-1は、
Aの左から、有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積をかけ、
Aの右から、有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積をかけた
ものであることを確認したうえで、
stepnへ進む。
Step n:
Step n-1:
(i) (m,n)型行列A'n-1の(n-1,n-1)成分が非0である場合
An=A'n-1とおく。
(ii)(m,n)型行列A'n-1の( n,n)成分が0である場合(下図)
行列積Qm[n] A'n-1 の( n,n)成分が非0となるように、
m次基本行列type2のみを有限個かけ合わせた行列積Qm[n]
をとることができる。
(なぜなら)
|・Step(n-1)-3を経ているので、
| A'n-1から、
| 第1行〜第(n−1)行・第1列〜第(n−1)列を取り去った残りの(m−n+1,1)型行列は
| 零行列ではなく、
| 第n列の第(n+1)行〜第m行のどこかに、非0の成分を有す。
| したがって、
| 第n行と第(n+1)行〜第m行との入れ替えを行う行基本変形type2 だけを用いて、
| A'n-1を、( n,n)成分が非0の(m,n)型行列に、変形することができる。
|・ある行列の行の入れ替えを行う行基本変形type2は、
| その行列の左からm次基本行列type2をかけることに等しい。(∵)
|・以上2点より、A'n-1の左に、適当なm次基本行列type2をかけることによって、
| ( n,n)成分が非0の(m,n)型行列を得ることができる。
|・つまり、行列積Qm[n] A'n-1 の( n,n)成分が非0となるように、
| m次基本行列type2のみを有限回かけた行列積Qm[n]
└ をとることができる。
この Qm[n] にたいして、
An=Qm[n] A'n-1
とおく。なお、Anも、(m,n)型行列である。
Step n-2:
行列積Pm[n]Anが、
というかたちになるように、
m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[n]
を定めることができる。
(なぜなら)
|・(m,n)型行列Anの( n,n)成分を要として第n列を掃き出す。
| すると、Anは、
| ( n,n)成分が1、( n,n)成分を除く第n列が全て0
| という(m,n)型行列に変形される。→詳細
|・上記の操作は、
| たとえば、
| 1回の行基本変形type3、有限回の行基本変形type1
| によって構成される。→詳細
|・ある行列の行基本変形type3は、
| その行列の左からm次基本行列type3をかけることに等しい。(∵)
|・ある行列の行基本変形type1は、
| その行列の左からm次基本行列type1をかけることに等しい。(∵)
|・以上3点より、Anの左に、有限個の適当なm次基本行列をかけることによって、
| 「( n,n)成分が1、( n,n)成分を除く第n列が全て0」
| を満たす(m,n)型行列を得ることができることがわかる。
|・つまり、行列積Pm[n]Anの( n,n)成分が1、
| ( n,n)成分を除く第n列が全て0となるように、
| m次基本行列のみを有限個かけ合わせた行列積Pm[n]
└ を定めることができる。
このPm[n]にたいして、
A'n=Pm[n]An
とおく。
すると、A'n=Pm[n]An-1=Pm[n] A'n-1 であるか、
A'n=Pm[n]An-1=Pm[n](Qm[n]An-1' )=Pm[n-1]Qm[n-1]A'n-1(∵)
なお、A'nも、(m,n)型行列である。
Step n-3:
A'nは標準形D(m,n,r)に到達。r = n。
step(n-1)-3-(ii) と、stepn-2より、
Aにたいして、
有限個のm次基本行列をかけあわせた行列積Pmと、
有限個のn次基本行列をかけあわせた行列積Pnと、
自然数r= nが存在し、
A'n=Pm A Pn =D (m,n,r)
が満たされていることが、このケースで確認されたことになる。