※総目次 |
定義:冪(べき)・累乗 power、指数exponent 〜指数を実数全体に拡張して |
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「冪・累乗なんて簡単だ」と思いがち。 しかし、 無理数を指数とする冪・累乗の定義に正面から向き合ってみると、 意外と手がかかることに気づく…。 →「実数指数の累乗」の定義 〜直感的具体的に 〜10進近似列を用いて 〜任意の有理数列を用いて 〜有理数上の集合の上限下限 〜解析的に 実数指数の累乗の定義 〜 直感的に・「『正の実数』aの実数r乗」arは、どのように定義されているのか?実数rは、有理数であるか、無理数であるかのいずれか。 (i) 実数rが有理数である場合、 arの定義として、「aの有理数r乗」arの定義をそのまま使う。 つまり、 実数rが有理数である場合、arとは、 z,nを「r=z/n」を満たす整数,自然数の組としたときの、
しかし、 (ii)実数rが無理数である場合、arに有理数乗の定義を使いまわすことはできない。 実数rが無理数である以上、 「r=z/n」を満たす整数,自然数の組z,nなんて存在しない。 では、 実数rが無理数であるとき、arは、どう定義されているのだろう? まず、aπ という具体例を通して、定義を例示してみよう。 [無理数を指数とする累乗の定義の具体例]無理数πを指数とする累乗aπ は、以下のように定義される。[step0]無理数πを小数で表す。π=3.141592… よく知られているように、無理数は、循環しない無限小数で表される。 だから、3.141592…も循環しない無限小数。 [step1]π=3.141592…の・小数点以下第一位までを残し、小数点以下第二位以下を切り捨てた数3.1 ・小数点以下第二位までを残し、小数点以下第三位以下を切り捨てた数3.14 ・小数点以下第三位までを残し、小数点以下第四位以下を切り捨てた数3.141 ・小数点以下第四位までを残し、小数点以下第五位以下を切り捨てた数3.1415 : という数列〜すなわち「πの十進近似列」〜をつくる。 この数列、すなわち「πの十進近似列」 3.1, 3.14, 3.141, 3.1415, … は、以下の性質を満たす(→実数の十進近似列の性質)。 [性質] すべての項は、分数として表せるから、有理数。 3.1=31/10, 3.14=314/100, 3.141= 3141/1000, 3.1415=31415/10000,… [性質]単調増大列だが、決してπ=3.141592…を超えない。 π=3.141592…に近づいていく。 [step2]上記の「単調に増加してπ=3.141592…に近づいていく、有理数列」3.1, 3.14, 3.141, 3.1415, … の各項を指数とする累乗の数列 a3.1, a3.14, a3.141, a3.1415, … をつくる、 なお、 a3.1, a3.14, a3.141, a3.1415, … の各項は、どれも指数が有理数だから、 有理数指数の累乗の定義にしたがって、定められる。 実際、
: [step3]有理数指数の累乗の数列 a3.1, a3.14, a3.141, a3.1415, … の極限値をとる。この数列の極限値として得られた実数が、「aのπ乗」aπ 。 aπ に限らず、 無理数rを指数とする累乗ar を、どれも、同様に定義する。 |
[有理数指数からの拡張として定義する文献][全般的なアイディア]・竹之内『経済・経営系数学概説』1.5累乗の一般化(p.35):全般的なアイディア。実数を、上と下から、有理数ではさんで…・http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%AF%E4%B9%97#.E6.8C.87.E6.95.B0.E9.96.A2.E6.95.B0 : aの冪乗はその指数に関して単調性をもつので、Rにおける有理数の稠密性 から、 これはR上で定義された連続関数に一意的に拡張される。 [定式化1:上限下限]・赤攝也『実数論講義』§7.2実数指数の累乗-定義7.2.1;定義7.2.2(p.210):有理数指数の累乗の集合の上限・下限をつかう。証明付。無理数の場合→有理数の場合と整合的だから、これを実数全体の場合の定義とする。 ・岡田章『経済学・経営学のための数学』1.4(p.26):赤と同一。 ・笠原皓司『微分積分学』2.9[1](p.71) ・小平『解析入門I』§2.3-b) (p.90): [定式化2:有理数列の極限][無理数に収束する10進近似列を用いて]・吉田栗田戸田『昭和63年3/31文部省検定済 高等学校基礎解析』啓林館、2章1指数の拡張(p.44): 指数として使われる実数に収束する有理数列の極限を指数とする。証明から逃げている。アイディアだけ。 ・上野健爾『代数入門1』§2.3(d)指数と対数(pp.69-71):非常に丁寧。 ・加藤十吉『微分積分学原論』4.4整数の実数乗と指数関数-(4)(pp.40-41);3.3有理数の稠密性(p.30) ・吹田・新保『理工系の微分積分学』1章§5(I)(B)(pp.27-28):無理数に収束する有理数の増加列。10進近似列とはない。 [任意の有理数列を用いて] 〜無理数に収束する10進近似列に限らず、無理数に収束するどのような有理数列をつかっても、結果はかわらない。 ・能代『極限論と集合論』22.無理指数のベキ(pp.44-7) ・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(pp.62-64): 指数として使われる実数に収束する有理数列の極限を指数とする。証明付。 ・高木貞二『解析概論』10.連続関数-指数関数について(p.25)。 ・入谷純・久我清『数理経済学入門』5.5(pp.128-130) [解析的な定義を示す文献]・黒田『微分積分学』5.2.3-定義5.4(p.167):定義5.2(p.164)で、1/xの不定積分として自然対数関数を定義し、 定義5.3(p.165)で、指数関数を定義し、 定義5.4(p.167)で、実数指数の累乗を定義する。自然数指数の累乗、有理数指数の累乗との整合性も検討。 ・ 松坂『解析入門1』5.2A一般の累乗関数(p.165): 5.1A(pp.155-6)で、1/xの積分として自然対数関数を定義し、 5.1C(p.159)で、自然対数関数の逆関数として、eを底とする指数関数を定義し、 eを底とする指数関数を拡張して、一般の指数関数[→5.1D(p.161)]、累乗関数を定義する。 ・笠原皓司『微分積分学』2.9[1](pp.72-4):普通の定義と両方乗せているところが特長。 関係ありそうな… ・志賀浩二『解析入門30講』23講(特に、p.172;179)。 [以下は、今後検討] ・『岩波入門数学辞典』「指数法則exponential law」(pp.244-5):有理数・実数の指数を定義。 「べきpower」(p.545):自然数指数から整数指数まで定義。;「指数(べきの)exponent」(p.241):説明なし [関連事項]・実数指数の累乗の具体例:→指数を自然数に限定した「べき」「累乗」の定義 →指数を正負の整数に限定した「べき」「累乗」の定義 →指数を有理数に限定した「べき」「累乗」の定義 |
→[実数指数の累乗定義冒頭] |
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実数指数の累乗の定義 〜 10進近似列を用いて・「『正の実数』aの実数r乗」arは、どのように定義されているのか?実数rは、有理数であるか、無理数であるかのいずれか。 (i) 実数rが有理数である場合、 arの定義として、「aの有理数r乗」arの定義をそのまま使う。 つまり、 実数rが有理数である場合、arとは、 z,nを「r=z/n」を満たす整数,自然数の組としたときの、
しかし、 (ii)実数rが無理数である場合、arに有理数乗の定義を使いまわすことはできない。 実数rが無理数である以上、 「r=z/n」を満たす整数,自然数の組z,nなんて存在しない。 では、 実数rが無理数であるとき、arは、どう定義されているのだろう? 無理数rを指数とする累乗ar は、以下のように定義される。 [step1]無理数rを小数として表すと、循環しない無限小数になる。循環しない無限小数(無理数)rの ・小数点以下第一位までを残し、小数点以下第二位以下を切り捨てた数r1 ・小数点以下第二位までを残し、小数点以下第三位以下を切り捨てた数r2 ・小数点以下第三位までを残し、小数点以下第四位以下を切り捨てた数r3 : ・小数点以下第n位までを残し、小数点以下第(n+1)位以下を切り捨てた数rn : という数列〜すなわち「無理数rの十進近似列」〜をつくる。 この数列すなわち「無理数rの十進近似列」 r1,r2,r3,…,rn,… は、以下の性質を満たす(→実数の十進近似列の性質)。 ・r1=整数/10,r2=整数/100,r3=整数/1000,…,rn=整数/10n,…といった具合に 分数として表せるから、 すべての項は、有理数。 (だから、ar1,ar2,…はどれも、有理数乗) ・単調増加列 (実数の十進近似列の性質1) ・有界 (実数の十進近似列の性質3) ・rに収束する (実数の十進近似列の性質4) [step2]上記の「単調に増加してrに近づいていく、有理数列」r1, r2, r3, …, rn,… の各項を指数とする累乗の数列
なお、
有理数指数の累乗の定義にしたがって、定められる。 実際、
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: [step3]・一般に、いかなる正の実数a, 有理数からなるいかなる上に有界な単調増加列p1,p2,p3,…に対してでも、
・step1で見たように、 「無理数rの十進近似列」r1,r2,r3,…は、 有理数からなる上に有界な単調増加列となるので、
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有理数指数の累乗の数列 | a | r1 |
,a | r2 | ,…,a | rn | ,… | の極限値をとる。 |
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a | rn | → a | r | (n→∞) | ||
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→[実数指数の累乗定義冒頭] |
実数指数の累乗の定義 〜 任意の有理数列を用いて・ |
[文献]・『岩波入門数学辞典』「指数法則」(p.245);・小林昭七『微分積分読本:1変数』2章4指数関数(pp.62-64): 指数として使われる実数に収束する有理数列の極限を指数とする。証明付。 ・高木貞二『解析概論』10.連続関数-指数関数について(p.25)。 ・入谷純・久我清『数理経済学入門』5.5(pp.128-130) |
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[自然数指数の累乗の定義との整合性]・[整数指数の累乗の定義との整合性] |
→[実数指数の累乗定義冒頭] |
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実数指数の累乗の定義 〜 有理数乗の集合の上限・下限 - タイプA ・「『正の実数』aの実数r乗」arは、どのように定義されているのか? |
「『aのz乗』のn乗根」 | ![]() |
az | |
「『aのz乗』のn乗根」 | ![]() |
az | |
→[実数指数の累乗定義冒頭] |
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実数指数の累乗の定義 〜 解析的に・・aqの「底」とは、aのこと。 ・aqの「指数exponent」とは、qのこと。 |
[文献]・黒田『微分積分学』5.2.3-定義5.4(p.167):定義5.2(p.164)で、1/xの不定積分として自然対数関数を定義し、 定義5.3(p.165)で、指数関数を定義し、 定義5.4(p.167)で、実数指数の累乗を定義する。自然数指数の累乗、有理数指数の累乗との整合性も検討。 ・ 松坂『解析入門1』5.2A一般の累乗関数(p.165): 5.1A(pp.155-6)で、1/xの積分として自然対数関数を定義し、 5.1C(p.159)で、自然対数関数の逆関数として、eを底とする指数関数を定義し、 eを底とする指数関数を拡張して、一般の指数関数[→5.1D(p.161)]、累乗関数を定義する。 関係ありそうな… ・志賀浩二『解析入門30講』23講(特に、p.172;179)。 |
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指数の累乗の基本性質 |
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I. |
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U. |
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指数法則 exponential law,指数公式 law of exponents |
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性質 |
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