R
2上の区間塊の面積を定義する集合関数μ( )の性質4の証明‐ケース4-4
・舞台設定
R2 : 2つの「実数の全体の集合」Rの直積。すなわち、
R×R={ (x ,y ) |x ∈ Rかつ y ∈ R }={ (x ,y ) | −∞<x<+∞かつ −∞<y<+∞ }
集合系(族)E : R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)。
※区間塊Eは、R2の部分集合だから、Eは R2の部分集合系(族)となっている。
Ψ(I) : R2上の区間の面積を定義する集合関数Ψ。
すなわち、
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] ={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちのR上区間の直積となるR2上区間Iに対して、
(i) I=(a, b]×(a', b'] (−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)ならば、Ψ(I) =( b−a ) (b'−a' )
(ii) I=φならば、 Ψ(φ) = 0
(iii) Iが上記以外〜つまり、(−∞, b]×(a' , ∞)など非有界の矩形〜ならば、
Ψ(I) =+∞
※値域は、広義の実数R*上の区間[0, +∞]となる。
「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。
・集合関数μの定義
Eに属す、すべてのEは、R2上の区間塊であるから、
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちの区間の直積の有限個の直和として表す
(=互いに素な有限個の「上記5タイプの区間の直積」へ分割する)
ことができる。
すなわち、
Eに属す、すべてのEには常に、
1以上の或る自然数nが存在して、
E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間の直積で、互いに素)
と表せる。※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
そこで、面積を定義する集合関数Ψを用いて、
μ(E)=Ψ(I1)+Ψ(I2)+…+Ψ(In)
と、 R2上の区間塊Eの面積を定義する集合関数μを定義する。
[
μ( )の性質4]
type 1: 左半開区間(a, b] (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちの
R上区間の直積である限りで任意の区間Iと、
区間Iにたいして任意にとったα<μ(I)にたいして、
(a*, b* ]×(a'*, b'* ] (ただし−∞< a*< b*<+∞ , −∞< a'*< b'*<+∞ )
空集合φ
のいずれかのかたちをした、ある有界区間
Jが存在し、
[J]⊂I かつ α<μ(J)
を満たす。
すなわち、
(a, b] , (−∞, b] , (a , ∞) , (−∞, ∞) , φのいずれかのかたちのR上区間の直積をすべて集めた集合系をI、
(a*, b* ]×(a'*, b'* ], φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をJとおくと、
(∀I∈I) (∀α<μ(I)) (∃J∈J ) ( [J]⊂Iかつα<μ(J) )
→
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[
μ( )の性質4の証明−ケース4‐4] [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(p. 20);]
[case 4-4: 区間Iが、type 4: (−∞, ∞)× (−∞, ∞)=R2 というかたちをしている場合]
step
0:証明すべき主張の分析
この場合、上記主張は、
「区間I=(−∞, ∞)×(−∞, ∞)と、
このI=(−∞, ∞)×(−∞, ∞)にたいして任意にとったα<μ(I)=μ((−∞, ∞)×(−∞, ∞))に対して、
ある有界区間J= (a*, b* ]×(a'*, b'* ] (ただし−∞< a*< b*<+∞ , −∞< a'*< b'*<+∞ )、ないし、J=φ
が存在して、
[J]⊂I=(−∞, ∞)×(a', b'] かつ α<μ(J)
を満たす」
となるが、
I=(−∞, ∞)×(−∞, ∞)ならば、μ(I)=Ψ(I) =+∞ (∵μ(I),Ψ(I)の定義を見よ)
I=(−∞, ∞)×(−∞, ∞)にたいして任意にとったα<μ(I)=+∞とは、任意の実数あるいは−∞である。
したがって、J=φは、任意の実数α<0に対しては、「α<μ(J)」を満たすが、
0≦α<μ(I) =+∞任意の実数αに対しては、「α<μ(J)」 を満たさない。∵μ(J)=μ(φ)=0
上記主張を証明するには、
「任意の区間(−∞, ∞)×(−∞, ∞) と、任意の実数αに対して、
ある有界区間J= (a*, b* ]×(a'*, b'* ] (ただし−∞< a*< b*<+∞, −∞< a'*< b'*<+∞ )
が存在して、
[J]=[a*, b*]×[a'*, b'*]⊂(−∞, ∞)×(−∞, ∞) かつ α<μ(J)
を満たす」
ことを示せば十分であるから、以下では、この点のみを証明する。
なお、Jは有界区間だから、μ(J)=Ψ(J) <+∞であることに注意(∵μ(I),Ψ(I)の定義を見よ)。
step
1: 区間Iを分割
・下記3条件を満たす数列{ak}をとる。
1.狭義単調減少列であること a1 > a2 > a3 >… (1-1)
2. ak→−∞ (k→∞) −∞に発散 (1-2)
・下記3条件を満たす数列{bk}をとる。
1.狭義単調増加列であること b1 < b2 < b3 <… (1-3)
2. 任意のkに対して、a1 < bk (1-4)
※1. 2. を合せると、 a1< b1 < b2 < b3 <…
3. bk→+∞ (k→∞) (1-5)
このような数列{ak} {bk}から数列{bk−ak}をつくると
bk−ak→+∞ (k→∞) (1-6)
・下記3条件を満たす数列{a'k}をとる。
1.狭義単調減少列であること a'1 > a'2 > a'3 >… (1-1')
2. a'k→−∞ (k→∞) −∞に発散 (1-2')
・下記3条件を満たす数列{b'k}をとる。
1.狭義単調増加列であること b'1 < b'2 < b'3 <… (1-3')
2. 任意のkに対して、a'1 < b'k (1-4')
※1. 2. を合せると、 a'1< b'1 < b'2 < b'3 <…
3. b'k→+∞ (k→∞) (1-5')
このような数列{a'k} {b'k}から数列{b'k−a'k}をつくると
b'k−a'k→+∞ (k→∞) (1-6')
step2: 区間Ikを定義
Ik=(ak , bk]×(a'k , b'k] とIkを定義する
つまり、I1= ( a1 , b1 ]×(a'1 , b'1] 、I2= ( a2 , b2 ]×(a'2 , b'2] 、I3= ( a3 , b3 ]×(a'3 , b'3] 、… といった具合になる。

step3: 区間Ikの性質
任意のkに対して、Ikの閉包[ Ik ]⊂Iとなる。
実際、 [ Ik ]=[ ak , bk ]×(a'k , b'k] ⊂(−∞, ∞)×(−∞, ∞)=I …(3)
step4: μ(Ik)の値
μ()の定義より、
μ(Ik)=μ( ( ak , bk ]×(a'k , b'k] ) =( bk−ak)(b'k−a'k) …(4)
step5: 任意の実数αにたいして、kを十分大きくとれば、 α<μ(Ik)
(1-6)より数列{ bk−ak}は∞に発散する。
(1-6')より数列{bk'−a'k}も∞に発散する。
ゆえに、数列{ bk−ak}と数列{b'k−a'k}との積の数列{ (bk−ak) ( b'−a'k)}は∞に発散する。
これと(4)から、
∞に発散するの定義より、
(∀α∈R) (∃K∈N) (∀k∈N) ( k≧K⇒ μ(Ik)>α) …(5)
step6:
(5)より、
任意の実数αに対して、kを十分大きくとれば、μ(Ik)>αを満たすIkが存在し、
このようなIkは、
(3)より、 [ Ik ] ⊂ Iも満たす。
したがって、
任意の区間I=(−∞, ∞)×(a', b'] (−∞< b<+∞) と、任意の実数αに対して、
上記のIk という有界区間Jが存在し、
[J]⊂ I= (−∞, ∞)×(a', b'] かつ α<μ(J)
を満たすことが確認できた。
→
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