順序集合上の諸概念
[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
最大元・最小元極大元・極小元
上界・上に有界下界・下に有界有界上限sup・最小上界lub下限inf・最大下界glb順序完備
稠密・自己稠密直後・直前の元全順序集合における直後・直前の元の性質 
順序集合関連ページ:順序と順序集合の定義
           
双対順序・双対順序集合・双対概念・自己双対的・双対命題・双対原理 
           
整列順序・整列順序集合 、整列定理・ツォルンの補題  

参考文献総目次

定義:最大元・最小元 maximum/minimum
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.22); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.90);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1).]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX
a:  A。つまり、 aA  
(本題)
・集合
Aaが「集合Aの最大元」であるとは、
 
A属すあらゆるxにたいして、が成り立つこと
     つまり、
aAが、( x A)  を満たすこと。
 をいう
・集合
Aaが「集合Aの最小元」であるとは、
 
A属すあらゆるxにたいして、が成り立つこと
    つまり、
aAが、( x A)  を満たすこと。
 をいう。
・最大元・最小元は、存在することもあれば、存在しないこともある。
・最大限・最小元が存在する場合、ひとつしかない。
・集合
A最小上界・上限が存在し、それが集合Aに属すならば、
 集合
A最小上界・上限は集合Aの最大元である。
   
[斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23);松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)]
・集合
A最大下界・下限

が存在し、それが集合Aに属すならば、
 集合
A最大下界・下限は集合Aの最小元である。
   
[斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23);松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.92)]
(記法)
集合
Aの最大元を、maxA、集合Aの最小元を、minAと書く。

最大元・最小元は互いの双対概念

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

定義:極大元・極小元 maximal/minimal
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.22); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.90);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1).]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX
a:  A 。つまり、 aA
(本題)
・集合
Aaが「集合Aの極大元」であるとは、
 
A属すいかなるxにたいしても、が成り立たないことをいう。
   つまり、
( x A)  
・集合
Aaが「集合Aの極小元」であるとは、
 
Aに属すいかなるにxにたいしても、が成り立たないことをいう。
   つまり、
( x A) 
・極大元・極小元は、存在することもあれば、存在しないこともある。
・極大限・極小元が存在する場合、複数あるばあいもある。
max Aが存在するならばmax AAの唯一の極大元。
min Aが存在するならばmin AAの唯一の極小元。
極大元・極小元は互いの双対概念

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

定義:上界upper bound・上に有界bounded from above
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.91);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1). 神谷・浦井『経済学のための数学入門p.59]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX

b:  X。つまり、 bX
a:
  A。つまり、 aA
(本題)
・集合
Xbが、「(集合Xのなかでの)集合Aの上界upper bound」であるとは、
  
Xbが、A属すいかなるaにたいしても、
     つまり、
( aA) 
  を満たすことをいう。
・集合
Aが「(集合Xのなかで)上に有界bounded from above」であるとは、
  「
(集合Xのなかでの)集合Aの上界upper bound」が存在することを言う。
   つまり、(
bX( aA) 

活用例:上限・最小上界有界実数における上界・上に有界

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

定義:下界(かかい) lower bound・下に有界bounded from below
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.91);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1). 神谷・浦井『経済学のための数学入門p.59]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX

b:  X。つまり、 bX
a:
  A。つまり、 aA
(本題)
・集合
Xbが、「(集合Xのなかでの)集合Aの下界(かかい)lower bound」であるとは、
  
Xbが、A属すいかなるaにたいしても、
     つまり、
( aA) 
  を満たすことをいう。
・集合
Aが「(集合Xのなかで)下に有界bounded from below」であるとは、
  「
(集合Xのなかでの)集合Aの下界lower bound」が存在することを言う。
   つまり、(
bX( aA) 

「下界」・「下に有界」の双対概念上界上に有界

活用例:下限・最小下界有界 

 

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

 

定義:有界bounded  
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.91);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1). 神谷・浦井『経済学のための数学入門p.59]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX

b, b' :
  X。つまり、 b, b' X
a:
  A。つまり、 aA
(本題)
・集合
Aが「(集合Xのなかで)有界bounded」であるとは、
 集合
A上に有界かつ下に有界であること。
   つまり、(
b, b' X( aA) 

  

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

 

定義:上限supremum・最小上界least upper bound 
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.91);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1);
  神谷・浦井『経済学のための数学入門p.59;杉浦解析入門Ip.6.; ルディン『現代解析学』項目1.34.]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX
(本題)
[簡潔な定義]
  集合A(集合Xでの)最小上界least upper bound」「上限supremum」とは、  
  
A(集合Xのなかでの)上界をすべてあつめた集合の最小元のこと。
[最小元の語義に遡った定義]
  集合A(集合Xでの)最小上界least upper bound」「上限supremum」とは、  
  集合
A(集合Xでの)任意の上界bにたいして、
   

  を満たす
A(集合Xでの)上界b*
  のこと。   
[最小元,上界の語義に遡った定義]
  集合A(集合Xでの)最小上界least upper bound」「上限supremum」とは、  
  以下の
2条件をともに満たす集合Xb*のことをいう。
  条件
1. ( aA) ()   
  条件
2. ( aA) ()を満たす限りで任意のbXにたいして、
             つまり、 
(bX ) ( aA) ()  
・集合
A(集合Xのなかで)上に有界で、(集合Xのなかでの)上界が存在したとしても、
  集合
A(集合Xでの)最小上界・上限は、存在することもあれば(→順序完備)、存在しないこともある。
・集合
Aの最小上界・上限が存在したとしても、それが集合Aに属すこともあれば、属さないこともある。
 集合
Aの最小上界・上限が集合Aに属すならば、集合Aの最小上界・上限は集合A最大元である。
(記法)
集合
Aの最小上界・上限を、l.u.b. Aないしsup Aと書く。

「上限」・「最小上界」の双対概念下限最大下界

(例)上に有界な集合なのに、上限すなわち最小上界をもたないケース
     有理数の全体
Qにおいては、上に有界な集合はかならずしも上限をもたない。
     たとえば、
AQ , A={ x | x Q ,  x22 } 
        集合
Aは上に有界。
          集合
A1つの上界として、
          
5Q,4Q,3Q,2Q,1.5=3/2Q, などをあげられる。
        しかし、上限すなわち最小上界
supAは存在しない。
        ルート
2は、Qの要素ではないので、上界の1つとなりえず、
        したがって、
supAとも呼べない。
        ルート
2より大きいが、ルート2にいくらでも近い有理数を考えることができ、
        「最小のもの」を指定できないので、
        有理数の全体
Qのなかに、supAは存在しないことになる。
     (吹田・新保
理工系の微分積分学p.4, 神谷・浦井『経済学のための数学入門p.60.)

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

 

定義:下限infimum・最大下界greatest lower bound
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.5(p.23); 松坂『集合・位相入門』第3章§1-C(p.91);
  『岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B諸定義 (pp.440-1);
  神谷・浦井『経済学のための数学入門p.59;杉浦解析入門Ip.6.; ルディン『現代解析学』項目1.34.]
(設定)
X: 集合
X上の順序関係
順序集合
A:
 X部分集合。つまり、AX
(本題)
[簡潔な定義]
  集合A(集合Xでの)最大下界greatest lower bound」「下限infimum」とは、  
  
A(集合Xのなかでの)下界をすべてあつめた集合の最大元のこと。
[最大元の語義に遡った定義]
  集合A(集合Xでの)最大下界greatest lower bound」「下限infimum」とは、  
  集合
A(集合Xでの)任意の下界bにたいして、
   

  を満たす集合
A(集合Xでの)下界b*
  のこと。
[最大元,下界の語義に遡った定義]
  集合A(集合Xでの)最大下界greatest lower bound」「下限infimum」とは、  
  以下の
2条件をともに満たす集合Xb*のことをいう。
  条件
1. ( aA) () 
  条件
2. ( aA) ()を満たす限りで任意のbXにたいして、
             つまり、 
(bX ) ( aA) ()  
・集合
A(集合Xのなかで)下に有界で、(集合Xのなかでの)下界が存在したとしても、
  集合
Aの最大下界・下限は、存在することもあれば(→順序完備)、存在しないこともある。
・集合
A(集合Xでの)最大下界・下限が存在したとしても、それが集合Aに属すこともあれば、属さないこともある。
 集合
A(集合Xでの)最大下界・下限が集合Aに属すならば、集合A(集合Xでの)最大下界・下限は集合A最小元である。
(記法)
集合
Aの最小上界・上限を、g.l.b. Aないしinf Aと書く。

「下限」・「最大下界」の双対概念上限・最小上界

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

定義:順序完備
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.9(p.24);]
(設定)
X: 集合
X上の全順序
全順序集合
(本題)
全順序集合順序完備であるとは、
空集合以外の、Xのいかなる部分集合にも、
  その
部分集合(集合Xのなかで)上に有界ならば(集合Xでの)上限が存在し、
  その
部分集合(集合Xのなかで)下に有界ならば(集合Xでの)下限が存在する
ことをいう。
すなわち、
全順序集合順序完備であるとは、
(AX)
  Aφ かつ bX( aA) ()
       (b*X) ( aA) () かつ (bX ) ( aA) ()  
ないし  
(AX)
 Aφ かつ bX( aA) ( )
       (b*X) ( aA) () かつ (bX ) ( aA) ()  
であることをいう。
活用例:実数体・実数の定義 

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

定義:稠密dense・自己稠密
  [斎藤『数学の基礎:集合・数・位相1章§3順序1.3.10(p.24);
    『岩波数学辞典(第三版)』項目168B諸定義 (pp.440-1).]
(設定)
X: 集合
X上の全順序
全順序集合
Y:
 X部分集合
(本題)
YXのなかで稠密denseであるとは、
 
X任意x,yにたいして、x<z<yを満たすYzが存在すること。
 すなわち、
(x,yX)(zY) ( x<z<y )
X自己稠密であるとは、
 
X任意x,yにたいして、x<z<yを満たすXzが存在すること。
 すなわち、
(x,yX) (zX) ( x<z<y )
 

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

 

定義:直後の元successor・直前の元predecessor  
 
[岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B (p.440);松坂『集合・位相入門』第3章§2-A(p.98);
  斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』第1章§3順序1.3.19(p.30);.]
(設定)
順序集合
a , b :
  X。つまり、 a , b X  
(本題)
Xのなかで「ba直後の元である」「ab直前の元である」とは、
 
a<b であり、
 かつ
 
a< x <bを満たすx X が存在しない
ことをいう。 

[トピック一覧:順序集合上の諸概念]
総目次

 

定理:全順序集合における直後の元・直前の元の性質
 
[岩波数学辞典(第三版)』項目168.順序B (p.440);松坂『集合・位相入門』第3章§2-A(p.98);
  斎藤『数学の基礎:集合・数・位相』第1章§3順序1.3.19(p.30);.]
(設定)
全順序集合
a :
  X。つまり、 a X  
(本題)
全順序集合であるならば、「a直後の元」「a直前の元」は一意的に定まる

 

 

reference
日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版) 岩波書店、1985年、項目156.実数の公理系 (pp. 417-418), 168.順序 (pp.440-441).
斎藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第1章§3順序(pp.21-33)
松坂和夫『
集合・位相入門』岩波書店、1968年、第3章§1順序集合(pp.87-96)
ブルバキ『数学原論・集合論・要約』東京図書、1968年、§6順序集合(pp.36-43)

神谷和也・浦井憲『
経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.56-64
高木貞二『
解析概論改訂第三版』岩波書店、1983年、pp.1-5.
杉浦光夫『解析入門I』岩波書店、1980年、pp.1-9.
Walter Rudin,
Principles of Mathematical Analysis,Mcgraw-Hill,1953-1976.
=ウォ−ルタ−・ルディン『現代解析学』共立出版、1971年、第1