骨折り損のくたびれ儲け
永田 敏男昔から「孫は、目に入れても痛くない」とかいいますが、私も、それを実感するじいさんの一人になっている。
5月の初めに会談の下で隠れていて、孫が降りてきたところへ、足をどんと踏みならしておどしたところ、右足の小指が階段のふちにあたり、激痛を感じました。
それ以後しばらく経って、さほどの痛みは感じなくなったので、明くる日も、いつもルーチンにおこなっている運動も行い、2・3日後の団体の遠足にも参加して、カキツバタを見に行き、1日中歩き回りもしました。
遠足の明くる日は、じっとしていても痛みを感じるようになりました。このあたりから「これは骨折だな」と思うようになり、整形外科へ行こうと決心しました。
このあたりでは有名な整形外科の病院へタクシーでかけつけました。
しかし、ものすごい人で、待つこと3時間といわれ、断念して私の近くの内科へ行きました。
昨年待ては我が家のかかりつけとして、病気に関してはいつもお願いしている先生が、よるとしなみで廃院されたので、やむをえずその近くの病院へゆきました。
午前の11時頃なのにすいていました。女房と「これは我が治療院と同じで、すいているな」といいながら入って行きました。
看護師さんが、「どうされました?」といわれたので、「足の小指を打ってひどく痛いので、見ていただきたい」といって呼ばれるのを待っていました。
呼ばれたので入って行くと、「ここは内科だぞ。整形へ行け」といわれ、私が「なんとかレントゲンでもとってもらえませんか」といったら、「内科だからそんなところはとれない。そんなものは、ほっておけばいずれなおる」といわれた。
私は「それでは湿布なりと出してもらえませんか」といったら、「そんなものは薬局で買え」といわれた。
今までかかっていた病院では、何かといえばレントゲンも撮ってくれたし、湿布も出してくれた。それも同じ内科である。
私はやむなく帰り、近いうちに新たに改印する整形外科に期待して待っていた。
5月12日、我慢して待っていた病院の開院の日である。朝の8時頃にやはりタクシーでかけつけた。
まだ早いせいか2・3人の患者が来院していた。
真新しい建物で、全てが新しい。
1時間近く待って、やっと診察の時間がきて、私は一番に呼ばれた。
開院して第1番目の患者である。
足を丁寧に診察して「そうだね、骨折かもしれないね。とにかくレントゲンを撮ろう」といって、看護師さんに案内され、レントゲン室に入った。
「それじゃ、こちらを頭にして寝てください」といわれ、冷たい鉄板のようなベッドにあがり、上向きに寝かされ、レントゲンを撮った。
再び診察室に入り、結果をきいた。
「完全に骨折です。ちょっと固定しましょう」といって、指の起伏に会わせた小さい金属の板で固定してもらった。
風邪も引いていたので、隣で診察している内科へもよって、血液から血圧からみてもらい、薬も処方してもらった。
ともあれ、優しい先生方を見つけ、しかも、運が良いというか、悪いというか、開院第1号は嬉しかった。
あれから2ヶ月になろうとしている。もうすっかり足はなおり、今は快適に生活している。
医者もいろいろで、優しい先生もあれば、じゃけんに扱う医者もいる。
病人はいうまでもなく弱い立場にある。もし自分の専門外であっても、どこかを紹介してくれるか、応急手当をするとか、医者の倫理として必要なステータスではないかと強く感じた。
我々も医学の一端を担うものとして反省すべき一つの事例である。
孫が可愛いばかりに、思わぬ落とし穴に落ち、骨は折るし、医者のいろいろな対応をみてひどく疲れるし、転んでただで起きないとしたら、教訓として「患者の弱みを感じる治療師になろう」と、今更ながら反省しきりです。