ユウスゲ

「ユウスゲや今宵一夜の宴かな」・・・・・読み人知らず

上記の俳句は句の出来としてはいかがかとも思うが、夕方から咲き始め、あくる朝にはしおれてしまうユウスゲの特徴を良く現している。 夕方四時頃からレモンイエロ−の可憐な花を開花させ、薄暗くなった夕闇の中で涼風にそよぐ姿は情緒があり、かすかな芳香性もある。


このように夕方咲いて翌朝にはしおれる花にはマツヨイグサの仲間が知られ、又、夕方から咲き始め、朝には花びらを閉じてしまうカラスウリ等、いずれも体内に夕暮れを感じる体内時計を持っている。 その他、フォーオクロックと呼ばれ四時ごろ花を開くオシロイバナや三時ごろに開くハゼラン等、特殊な体内時計を持つ野の花は多く、自然界の不思議である。 ( 「マツヨイグサと月見草」 「カラスウリとスズメウリ」 「オシロイバナと白粉」 「ハゼランは開花時刻を予知」 )の項を参照。
ユウスゲはユリ科ワスレグサ属の多年草で、この仲間は東南アジアに20種ほど生育しており、日本にも、ノカンゾウ、ヤブカンゾウ、ハマカンゾウ、ニッコウキスゲ、ユウスゲ等、10種近くが見られる。
 いずれも一日花であるが、夕方から咲き芳香性を持つのはユウスゲのみである。( 「低地ニッコウキスゲの謎」 「ノカンゾウは忘れ草」 )の項参照。
万葉の頃はひっくるめてワスレグサ(忘れ草)の名で登場し、この花を身に付けると花の美しさでいやな事や悲しい事を忘れられるとされており、大伴旅人に次の歌がある。 「忘れ草 わが紐に付く 香具山の 古(ふ)りにし里を 忘れむが為」。
その後、ユリ科ワスレグサ属の花としてノカンゾウ、ヤブカンゾウ、ニッコウキスゲ、ユウスゲ等、細かく分類されるようになったとされる。
ユウスゲ(夕萱)は夕方に咲いて葉がスゲ(萱)に似ているのでこの名があるが、その色合いからキスゲ(黄萱)とも呼ばれる。
本州から九州にかけて山地の草原や林の縁に育つが、群生する事も多く、ここ深谷市と県境を接する群馬県の榛名山の湖の近くにある 「ユウスゲの道」 と呼ばれる遊歩道が有名である。

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