カラスウリとスズメウリ

キカラスウリ

「花見せて 夢の景色や 烏瓜(からすうり)」・・・・青畝

カラスウリは夏の夜にレース飾りの妖しくも美しい花を咲かせ、句にあるようになんとも不思議な雰囲気をかもし出す。 夕方から開き始め、朝には閉じてしまうので散歩がてら花を見に行くにしても懐中電灯が必要となる。
夜に咲く花は蛾などの夜行性昆虫によって受粉し、昆虫もかぎられるので、受粉を確実にする為、さまざまな戦略を用いる。 カラスウリの場合、夜でも目立つ白色と、先端部にレースの様な飾りを目一杯広げる事で蛾を呼び寄せ、昼間はレースを閉じてしまう。
カラスウリにも5種類程有るようであるが、大きく分けると少し小ぶりな赤い実を付けるカラスウリと黄色い大きな実を付けるキカラスウリ(黄カラスウリ)の二種類に分かれる。 両者共、花の形は似ているが先端部のレ−スの付き方が異なり、キカラスウリの方は比較的明るい条件でも開花し、昼間にも有る程度花を開いているが、カラスウリの方は日没後、暗くならないと花を目いっぱい開かず、日中は硬く閉じている。
通常は五花弁の花を付ける雌雄異株の植物であるが、写真の様にたまたま四花弁のカラスウリにも出会うことがある。
種(たね)もカラスウリとキカラスウリは異なり、カラスウリの種が大黒様が持つ 「打ち出の小槌」 のようなユニ−クな形をしているのに対し、キカラスウリの種はあまり特徴がない。


夜のカラスウリ      夜のカラスウリ      昼のカラスウリ

カラスウリの果実と種

夜のキカラスウリ      夜のキカラスウリ      昼のキカラスウリ

キカラスウリの果実と種

名の由来はウリの様な実(み)を付けるが役に立たない事からカラスの名が付いていると言う説が一般的であるが、漢方の薬草として利尿、催乳に薬効があり、又、キカラスウリの根から取る澱粉は天花粉(てんかふん)と呼ばれ、昔は現在のシッカロールの代わりによく使われ、どうしてなかなか役に立つ植物であった。
又、カラスが好むからカラスウリの名があるとの説もあるが、散歩道の途中にぶら下がっている実も12月頃まで残っており、実際にはカラスはこの実を食べないようである。
その他、唐朱(からしゅ)と呼ばれる朱墨に色合いが似ている事から 「唐朱ウリ」 がカラスウリになったとの説もあり、名の由来には諸説ある。

秋になると黄色や赤い実を付け、高い所にぶら下がっているので良く目立つ。 夏の夜を彩り、秋の野原の風物詩でもある。

「カラスウリは ひのぼりゆきて 痩杉の こずえに赤き 実を垂らしたり」 ・・・・若山牧水

一方、カラスウリより更に小さな花と実を付ける同じウリ科のスズメウリもあり、大きさからカラスウリに対しスズメリと名付けられたとする名の由来説や実(み)をスズメの卵に見立てたとする説がある。
花はカラスウリと違って昼間に咲き、小さい実を付け、熟すと白色になる。

スズメウリの花と果実

カラスウリの花は夜に咲き、スズメウリの花は昼に咲くものの小さくて人目に触れず、両者共、花より実(み)で目立つウリ科の植物である。

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