ヒツジグサと睡蓮と水辺の花

スイレン科スイレン属の花は世界に何十種類もあるが、日本にはヒツジグサ(未草)と呼ばれる比較的小さな白い花を付ける一種のみが古来から生育している。 普段良く見る大柄のスイレンは明治時代以降に輸入された園芸種で、日本古来のヒツジグサを含め広くスイレンと呼んでいる。
未(ひつじ)の刻(午後二時ごろ)花を開くと考えられていた為、ヒツジグサの名があるが、実際には午前中から夕方まで咲いている。
スイレンの名も眠るハス(睡蓮)の意味で名付けられた名前であるが、由来ははっきりしない。
スイレン科ハス属のハスは午前五時ごろ頃から咲き始め、午前中には閉じてしまうが、ハスが咲く頃にはスイレンは開いていないと考えられたか、あるいは夕刻に閉じる為、眠るハスの意味でつけられたのかは定かでない。
ハスとスイレンは一見良く似ているが、スイレンは花も葉も基本的には水面に浮かぶように咲き、ハスは花も葉も茎が水面から立ち上がり、葉の形もスイレンには切れ込みがあるので区別は難しくはない。( 「ハスは君子の花」 の項参照) 

スイレン(ヒツジグサ)   スイレン(ヒツヒグサ)    外来種のスイレン

ハスやスイレンが咲く頃、池や沼や川や水田等、水辺にはホテイアオイやコウホネ、コナギ、オオカナダモ、バイカモ等、種々の可愛い花が咲き、水中に咲く花のシーズンとなる。

ホテイアオイ           コウホネ          コナギ

オオカナダモ

バイカモ

ミズアオイ科のホテイアオイは元々観賞用に持ち込まれた熱帯アメリカ産の帰化植物が大繁殖し、各地で問題になっている。 葉柄は膨れて浮き袋のようになり、これを布袋様(ほていさま)の腹に見立てて名付けられた。
近年、少なくなってはきたが、小川や浅い池、沼にはスイレン科のコウホネが咲き、根茎が白色で、肥大し、白骨のように見えるのでコウホネ(河骨)の名がある。
又除草剤を使わない水田には稲が実る頃、ミズアオイ科のコナギが可憐な花を付ける。( 「コナギと水田雑草」 の項参照)

カナダの名はついているものの南米原産のオオカナダモも最近では日本の池や沼に繁殖し、問題になりつつある。 トチカガミ科と言う聞きなれない科に属する花であり、大正時代、学校の実験用に持ち込まれたものが逃げ出したと考えられる。
バイカモ(梅花藻)は花が梅の花の形をしているのでその名があるキンポウゲ科の水生多年草で、水温14度ぐらいの清流にしか生息せず、この花を見るには関東でも奥日光等、場所が限られ、散歩がてらに見られる花ではない。
ハス、スイレン、ホテイアオイ、コウホネ、コナギ、オオカナダモ、バイカモは夏の水辺を彩る花々である。

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