ノカンゾウとヤブカンゾウ

ヤブカンゾウ

夏の山野を代表する花に尾瀬や霧が峰に群生するニッコウキスゲがあり、この地の観音山にも低地型ニッコウキスゲが咲くが、人里で普通に見られるキスゲの仲間がノカンゾウ(野萱草)とヤブカンゾウ(藪萱草)である。( 「低地ニッコウキスゲの謎」 の項参照)

霧が峰のニッコウキスゲ

ニッコウキスゲの花が横向きに咲くのに対し、ノカンゾウやヤブカンゾウは上向きに咲き、又、ノカンゾウがベニカンゾウ(紅萱草)とも呼ばれるように、紅色が強い。
花期もこの地の低地ニッコウキスゲより一ヶ月ほど遅く咲き、夏も盛りの頃になる。
ノカンゾウがキスゲのように一重咲きであるのに対し、ヤブカンゾウは八重咲きである。
ヤブカンゾウはまだ散歩道の途中のあちこちで見られるが、ノカンゾウの花を見る機会は稀で、この地でも、観音山と呼ばれる古墳程度の山の山裾で見られるぐらいである。

ノカンゾウの花

ヤブカンゾウの花

カンゾウ(萱草)の意味はこの美しい花を見ていると物も忘れると言う故事からの漢名で、忘れ草とも言う。
万葉集に次の歌がある。 「忘れ草 我が下紐に 付けたれど しこのしこ草 言にしありけり」(あなたを忘れようと思って、下紐に忘れ草を付けたけれど、言葉通りの効果は無く、思いは募るばかりです)。
中国原産の史前帰化植物で日本中に広がり、今でも山菜として食べられている。 春の若芽や葉は和え物、お浸し、煮物になり、花は料理に添えられる。 平安時代に編集された 「和名抄」 に若葉を食べると美味しくて憂いを忘れると記されている。 根は乾燥して利尿剤の漢方薬になる。
古今集に 「忘れ草 種とらましを 逢うことの いとかたきものと知りせば」 とあるが、3倍体の為種子ができず、根茎で増えるユリ科の花である。

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