マツヨイグサとその仲間

「待てど暮らせど来ぬ人を 宵待ち草のやるせなさ 今宵は月も出ぬそうな」・・・・竹下夢二(宵待ち草の歌)

竹下夢二が詠んだ 「宵待ち草」 の詩に曲が付けられ広く歌われた為、すっかり宵待ち草(ヨイマチグサ)の名が定着してしまったが、正式名はマツヨイグサで待宵草と書き、夕方から花を開いて朝になるとしぼんでしまうのでこの名がある。
 「マツヨイグサ」 より 「ヨイマチグサ」 の方が語呂も響きも良いので竹下夢二が意識して書き換えたのか、単純に間違えたのかは現代では知る由もない。
世間一般の通り名は月見草であるが、これも間違いで、実際の月見草は白花の別の花で日本ではほとんど見られないにもかかわらず、太宰治が 「富嶽百景」 の中でオオマツヨイグサを 「富士には月見草が良く似合う」 と書いた為、黄色のオオマツヨイグサが月見草として定着してしまった。
しかし、あまり硬い事を言わないでマツヨイグサ類は総て 「宵待ち草」 や 「月見草」 と呼んでも差し支えないと思われ、夕方に咲き、月を眺め、朝日を浴びて萎んでしまう姿は日本人の心を打つ花であり、ロマンチックな名前の方が良い。 「月見草 花のしおれし 原行けば 日のなきがらを 踏む心地す」 と与謝野晶子が詠っている。
マツヨイグサはアメリカ大陸原産で、幕末から明治にかけて帰化し、日本の野原では、マツヨイグサ、オオマツヨイグサ、コマツヨイグサ、メマツヨイグサの4種類が見られる。

 マツヨイグサ      マツヨイグサと咲きがら    オオマツヨイグサ

コマツヨイグサと咲きがら   メマツヨイグサと咲きがら   メマツヨイグサと蝶

いずれも咲く時期や大きさが異なり、又、マツヨイグサとコマツヨイグサは花の終わった咲きがらが写真の様に赤くなり、オオマツヨイグサとメマツヨイグサは多少赤味がかる事はあっても赤くはならない等、区別は可能である。
最初はマツヨイグサが主流であったが、オオマツヨイグサに取って代わられ、その後、コマツヨイグサやメマツヨイグサが主流となりつつある。 環境の変化や薬への適応性等が考えられ、植物の生存競争も容易ではない。
スズメガ等の夜行性の昆虫によって受粉するが、同じマツヨイグサ属でも花によって昆虫の種類が異なるようである。
晩春から夏にかけて、夜を彩るアカバナ科マツヨイグサ属の花で、何となくロマンチックな感情を起こさせる名前と風情を持った花であるが、表題の写真のメマツヨイグサから取られる月見草油はアレルギー体質の改善にも利用されている。

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