「序文」から引用する。
本書は数学のかんどころ 36 『正則関数』に続くもので,有理型関数のよく知られた基礎事項を解説する. 有理型関数とは,極と呼ばれる特異点を除いて正則な関数のことで,非常に応用に富む関数である.
本書は本文中に問題があり、巻末には問題解答がついているのだが、一部略されている解答がある。次がその一つだ。p.39 から引用する。
問題 3.3 `int_-oo^oo cosx/(x^2+1) dx` を求めよ.(ヒント:`e^(iz)/(z^2+1)` と図 3-1 の積分路に留数原理を適用)
仕方がないので、本書 p.37 の例題の解説や他の本を参考に自分で解答してみた。
まず被積分関数を複素関数に拡張して考える。すなわち`f(z) = e^(iz)/(z^2+1)` とおく。`f(z) = e^(iz)/((z+i)(z-i))` より `f(x)` は `i` と `-i` に 1 位の極をもっている。 `R gt 1` とし、`C_R` を図のようなジョルダン閉曲線とすると、これに囲まれる領域に含まれる極は `i` である。ゆえに留数の原理より
なお、上記を一般化して `int_-oo^oo cos{:px:}/(x^2+1) dx = pie^(-p)` が得られる(`p` は実数)。
p.123 にネヴァンリンナ空間に続いて、ハーディ空間が説明されている。
このほか,次に定義するハーディ空間はこの方面の分野では重要な関数空間である.`0 gt p gt oo` の場合,`D` 上の正則関数 `f` である。ここで
`underset(0 lt r lt 1)("sup") int_0^(2pi) abs(f(re^(it)))^p dt lt + oo`をみたすもの全体のなす族を `H^p(D)` で表わす.また,`D` 上の有界な正則関数全体のなす族を `H^oo(D)` と表す.`H^p(D) (0 lt p le oo) ` を総称してハーディ空間という.
「この方面の分野」は何を指すのか、前後を見たけれどわからなかった。 ところで、このハーディ空間というのは、職場で近くの同僚が`H^oo` 制御というのを検討していたときに聞いた。`H^oo` の H はハーディから来ているのだという。懐かしかった。
ASCIIMathを用いている。
書名 | 有理型関数 |
著者 | 新井仁之 |
発行日 | 2018 年 12 月 25 日 初版 1 刷発行 |
発行元 | 共立出版 |
定価 | 1900 円(本体) |
サイズ | A5版 184 ページ |
ISBN | 978-4-320-11390-9 |
NBC | 413.52 |
その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |
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