副題は「素因数分解と循環小数への応用」
pp.7-8 では、与えられた自然数 `a, b` に対してこれらの最大公約数 `d` と、 `d = ax + by` を満たす整数 `x, y` を求めるアルゴリズムがイデアルを用いて説明されている。 アルゴリズムは以下の通りであるが私の記述が稚拙なので、正しくわかりやすい説明は本書を参照してほしい。
この計算を JavaScript で実装してみた。a と b に自然数を入れて [計算] ボタンをクリックすると、 最大公約数 `d` とそれを生成する `x, y` を出力する。
このアルゴリズムの実装については、「最大公約数とユークリッドの互除法」 で述べた。
本書をペラペラとめくっていると、「十六夜環」なる文字が目に入った。記述を引用する。
`t` を変数とするとき `R = CC[t]` は多項式環であり,その既約元は 1 次式 `at+b(a != 0)` である.
`R_0 = CC[t^2, t^3]` とおくと,`t^4 = t^2t^2, t^5 = t^2t^3, cdots` により, `t` を除く `t^n` はすべて `R_0` の元になり `R_0` は `R = CC[t]` の部分環である. これを十六夜環という.(後略)
十六夜環には注釈がある。
いざよいかん.`R = CC[t]` はすべての `t^n` を含むが `R_0` では `t` が欠けている. 一方,満月の翌日の月は少し欠けるので「十六夜の月」という.そこで `R_0` を「十六夜環」 と呼ぶことを,卒業研究で係数体が 2,3 元体の場合に `R_0` を研究した染谷氏の提案.
なるほどなあ。まだそれでもわからなかったので調べると、昔の日本は太陰暦で、 (天体の)月の満ち欠けがそのまま(暦の)月の日になったという。月の満ち欠けの周期は約 29.5 日で、 月の 1 日は必ず新月(朔)であるので、月の 15 日が満月(望)となる。となると、 16 日は満月に少し足りなくなるので、十六夜という文字が充てられるということだ。 この名前を持ってきたところがしゃれている。
数式表現は ASCIIMathML を、 数式表現はMathJax を用いている。
書名 | 環論、これはおもしろい |
著者 | 飯高茂 |
発行日 | 2013 年 1 月 25 日 初版 1 刷 |
発行元 | 共立出版 |
定価 | 1500 円 |
サイズ | |
ISBN | 978-4-320-01997-3 |
NDC | 411.72 |
その他 | 川口市立図書館で借りて読む |
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