「序文」から引用する。
自然現象や社会現象の多くは多変数の関数で記述される.座標 `x` と時間 `t` の関数 `f(x,t)`, あるいは空間座標 `(x, y, z)` の関数 `f(x, y, z)` などである.このような多変数の関数を考察する数学の一つが多変数の微積分であり, 極値問題や重積分計算などを扱うアイデアやノウハウが多く集積されている.図形的には平面 `RR^2` や空間 `RR^3` のいろいろな曲線や曲面が登場し, ダイナミックで豊かな数学的風景が広がっている.
多変数関数で、極限が存在しない例がいくつか挙げられている。例 1.4 から引用する。
同じく,原点の外で定義された関数
`f(x, y) = (x^2y)/(x^4+y^4)`の場合,`(x, y)` が直線 `y = ax` に沿って原点に近づくときの極限は `a` の値によらず `0` であるが, 放物線 `y = ax^2` に沿って原点に近づくときの極限は `a/(1 + a^2)` になる.したがって,`f(x, y)` の原点における極限は存在しない.図 1-9
最初、この図は何を意味するのかわからなかった(なお、本来の図では分数は `1/2` のような表記になっているが、引用の都合で `1//2` のようにした)。長い間考えて、やっと次の結論に達した。 まず、(直線を含む)曲線に付けられている 0 や `1//2` のような数字は、その曲線に沿って原点に近づけたときの極限の値を表している。そして、それぞれの曲線は、`y = ax^2` の `a` の値を変えたものである (ただし垂直軸は `x = 0` であるので `y = ax^2` の形では表せない)。そして、`1//2` と書かれた曲線の方程式は `y = x` であって、これは `a = 1` の場合であり、極限は `a/(1+a^2)` に `a = 1` を代入した `1/2` になる、 という仕掛けである。`2/5` と書かれた曲線は二つあるが、上のほうは `y = 2x^2` を表していてこちらの極限は `a = 2` を代入した `2/5` であり、 下のほうは `y=1/2x^2` を表していて `a = 1/2` を代入した値でやはり `2/5` である。残りの `-1//2` や `-2//5` と記された曲線も同様である。
書名 | 多変数の微積分 |
著者 | 酒井文雄 |
発行日 | 2020 年 7 月 15 日 初版 1 刷発行 |
発行元 | 共立出版 |
定価 | 1900 円(本体) |
サイズ | A5版 186 ページ |
ISBN | 978-4-320-11391-6 |
NBC | 413.3 |
その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |
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