副題は 3 つの定理が織りなす華麗な世界
著者は「はじめに」でこう述べている
(前略) ベクトル解析の基本定理は,グリーンの定理,ストークスの定理,ガウスの定理であり, 多くの読者はこの 3 つの定理を理解するためにベクトル解析を学習していると言っても過言ではなかろう.
ベクトル解析として開講されている多くの講義において, 習得するべき内容は,ベクトル場の演算子とこの三定理だけにもかかわらず, この科目は鬼門とされている.(後略)
この鬼門とされている理由については本書を参照してもらいたい。鬼門ということばには実感がこもっている。
私には少なくとも鬼門であった。
では本書でベクトル解析が身近になったか。それはもう少し読んでから出ないとわからない。
なお、本書の最後には、ジョルダンの曲線定理の証明がある。この定理は、
実際の証明は非常に難しい。この定理については、小平邦彦がたびたび言及している。
たとえば、「怠け数学者の記」の p.121
などに言及がある。この定理の証明を見たのは本書が初めてで、
本書で 13 ページを費している。この定理の記述にはベクトル解析の用語はないが、
抽象的な連続写像を扱う際にベクトル解析が強力な武器となる
という。ただし、
本書の証明にベクトル場の演算子も三つの定理も陽に使われてはいない。
「はじめに」にあるように、ベクトル場の演算子と三定理が鬼門であるというならば、
ジョルダンの曲線定理の証明は省き、これら演算子と三定理を使った他の題材を用いるべきではなかったか。
書名 | 早わかりベクトル解析 |
著者 | 早野 嘉宏 |
発行日 | 2014 年 4 月 15 日 初版 1 刷 |
発行元 | 共立出版 |
定価 | 1700 円(本体) |
サイズ | A5 版 195 ページ |
ISBN | 978-4-320-11066-3 |
NDC | 414.7 |
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