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トップページ> 映画>レビュー> 2006年> 2月
February, 2006
ウォーク・ザ・ライン/君につづく道
Walk The Line
監督: ジェームズ・マンゴールド
原作: ジョニー・キャッシュ
脚本: ギル・デニス
ジェームズ・マンゴールド
音楽: T-ボーン・バーネット
出演: ホアキン・フェニックス
リース・ウィザースプーン
ジニファー・グッドウィン
ロバート・パトリック
ダラス・ロバーツ
ダン・ジョン・ミラー
シェルビー・リン
タイラー・ヒルトン
ウェイロン・ペイン
シューター・ジェニングス
ジョナサン・ライス
公式サイト(英語)
公式サイト(日本語)
第78回アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞
オレの聴かず嫌いを直してくれる傑作。 ★★★★☆
アメリカで最も有名な歌手のひとり、ジョニー・キャッシュの
全盛期から、彼の2番目の妻となるジューン・カーターとの
十数年に及ぶ「ドラマチックな愛の軌跡」を描いた映画です。

ジョニー・キャッシュ。
晩年、フィオナ・アップルとデュエットした曲や
U2のアルバムに参加した曲で、その声を聴いたことはありました。
でも、ぶっちゃけ、オレの好きな声ではなかったので
特に深い感慨もなく「へぇ〜、これがジョニー・キャッシュか」
と思った程度。
イメージとしては、ただのオッサン以上でも以下でもない感じ。

でした。
今までは。
でも。
この映画を観て、その印象はガラッと変わりました。

まぁ、話の流れとしては、けっこうありがちではあります。

必ずしも幸せとはいえない少年時代。
劣等感と孤独感を抱きながら大人になり、
音楽キャリアを自ら切り開いて
徐々に人気も出始め、ついに絶頂へ至る。
が、ドラッグに手を出して、ドツボにハマり、
妻以外の人を好きになり、結婚生活もうまくいかず、
ますます転落の一途をたどる…。
みたいな。

でも、気づくと
"おー、ジョニーよ、わかるよ、その気持ち!"と共感してる
自分がいるんですよね。彼の歌を聴いていると、自然とそう
思えてきたんだと思います。
ジョニー・キャッシュを見出したプロデューサー、
サム・フィリップスがこんなようなことを言ってました。

「おまえという人間はこういう人間だと、一回聴いただけで
 わかるような、そんな歌を作ってみろ!」

って。
そうなんです、これなんです!
ジョニーの歌を、ジョニーが歌ってる姿に触れてると
なんだかジョニー自身のことが理解できるような、
そんな気分になるんですよね。
これは、ジョニー自身の魅力であり、
ジョニーをそんな気持ちにさせたジューンの魅力であり、
彼らを演じた主役の2人の素晴らしい演技力のおかげ
なんだと思います。

いや、ほんとに素晴らしかった!

ホアキンは、俳優でありミュージシャンでもあったお兄さん
(リバー・フェニックス)をドラッグで亡くしているので、
ジョニー役はさぞツラかったはずなのに、
ここまで役に入り込んでいる姿は、アッパレ!
(っていうか、ジョニー本人よりも歌うまいんじゃん!?)
リーズも、オンナの感情の機微がビシバシ伝わってきましたし、
彼女も一切の吹き替えなしで歌っているなんて、うますぎ…!

ジョニーとジューンの歌を聴いてたら、
なぜか涙がボロボロこぼれてきました。
なんでなのか、観終わった今でもわかりません。
でも、彼らがオレたちに"近い"歌を歌ってるってことはわかった!
彼らの歌をもっと聴いてみたい!そんな気持ちでいっぱいです。
いろーーーんな才能が結集した、素晴らしい映画でした。

今年のアカデミー賞にノミネートされなかったのは、
絶対おかしーーーーーーーい!!
(作品賞も、音楽スコア賞も…)
こうなったら、主演男優/女優賞をダブルで受賞だな♪

p.s.
この映画を観てるあいだ、
「長いなぁ、いつまで続くんだろう?
 っていうか、ずっと続いてもいいんだけど!?」
と思ってました。実際は2時間16分の上映時間でした。
少なくとも3時間ぐらいの体感時間でした。
もっと観ていたかったです。
posted on 2006.02.24
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ジャーヘッド
Jarhead
監督: サム・メンデス
原作: アンソニー・スオフォード
脚本: ウィリアム・ブロイルズ・Jr
音楽: トーマス・ニューマン
出演: ジェイク・ギレンホール
ピーター・サースガード
ジェイミー・フォックス
ルーカス・ブラック
エヴァン・ジョーンズ
ブライアン・ガラーティ
クリス・クーパー
公式サイト(英語)
公式サイト(日本語)
戦争って、いったいなんなんだろ? ★★★☆
1989年、18歳のスオフォードは
海兵隊員の父親と同じ道を進むべく、自分も海兵隊に志願する。
狙撃手として湾岸戦争下のイラクに派遣されるが、
実践ではなく演習と待機の日々が待っていた…。
N.Y.タイムズが戦争文学の最高峰と絶賛した
海兵隊員のベストセラー回顧録
『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督が映像化した
戦争ドラマ。

と、こんな映画でございます。

リアルな戦争映画というと、
ベトナム戦争を題材にしたものが多いですよね。
あとは第二次世界大戦ですか。
鬼軍曹による"人間兵器"育成のための訓練の悲惨さとか、
一般市民も巻き込んだ市街戦の悲惨さとか、
ジャングルの中で泥沼の戦いを続ける悲惨さとか、
戦争から帰ってきた兵士たちが陥るPTSDの悲惨さとか。

「すべての戦争は違っていて、すべての戦争は同じである」

というセリフが、この映画の中に出てきましたけど、
戦争映画も、すべて同じようでもあり、違うようでもあり
いろいろあるんですね。

この映画では、戦闘で死ぬシーンがありません。
主人公たちは、ひたすら訓練して、
ひたすら開戦を待って、待ちくたびれてヘトヘトになり、
そして、あっという間に終わった戦争を体験しただけなのです。
ぼくらもテレビニュースで見ていた、あの湾岸戦争です。
人が人を殺す。それが戦争なんですが、
「人が人を殺す」という行為が、真実味もないまま
行われようとしている。ミサイルの先っぽについたカメラで
ビルが爆破される映像が思い出されますけど、
この映画では、その真実味のなさを
ひとりのちっぽけな兵士の視点から見せてくれます。

あまりの退屈さが、逆にすげぇリアルでした。

核爆弾の発射ボタンひとつで、世界が破滅してしまう。
たった数秒の判断に数十億人の命が懸かっている。
そんな現代のスピード感覚には、オレ、ついていけないわ…。
posted on 2006.02.20
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そして、ひと粒のひかり
Maria Full Of Grace
監督: ジョシュア・マーストン
脚本: ジョシュア・マーストン
音楽: ジェイコブ・リーバーマン
レオナルド・ヘイブルム
出演: カタリーナ・サンディノ・モレノ
イェニー・パオラ・ベガ
ギリード・ロペス
ホン・アレックス・トロ
パトリシア・ラエ
公式サイト(英語)
公式サイト(日本語)
第77回アカデミー賞主演女優賞ノミネート
この邦題は、ほんとにセンスが良いよ! ★★★★
コロンビアの田舎町に住む17歳のマリアは
町で唯一マトモな仕事である、バラ農園で働いて
家族全員の家計を支えていたが、上司とモメて辞めてしまう。
家族とも衝突が絶えず、好きでもない彼氏の子供を妊娠した上、
収入もなくなってしまった彼女は
麻薬の運び屋の話を持ちかけられ、乗ってしまう…。

と、まぁ、こんな感じで始まる、この映画。
前半部は、思わずウトウトしてしまいそうな展開で
コロンビア人のことがよく理解できんなぁ〜みたいな
若干距離を置いたところからしか物事を見られない
感じがしたんですね。

でも、「麻薬の運び屋」として仕事を始めたあたりから
マリアの言動に親近感が湧き始め、眠気も吹っ飛ぶ勢いで
スクリーンに吸い込まれていきました。

あの、どーーーーーーーしようもなく絶望的な環境の中で
ほんっとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーに
小さな希望の光を見つけたマリアを見て、

『そして、ひと粒のひかり』という邦題の意味というか
その雰囲気が映画にドンピシャだな!と感心しまくりなのです。

数年前に観た、オレのお気に入り映画『ひかりのまち』と
相通じるところがあるなぁ、と思いました。
邦題のセンスの良さだけじゃなく、映画の内容自体にも
共通点があるように思えたんですね。

どちらの映画も
主人公が前を向いて歩いていくシーンで終わるんですよ。
どちらも主人公は独りじゃなくて、だれかと一緒に歩いていくんです。
不安と絶望ばかりだった毎日を抜け出し、
小さな希望を胸に秘めながら、どこか吹っ切れたような表情で。

こういう映画って、好きだなぁ。ほんとに。
posted on 2006.02.19
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単騎、千里を走る。
Riding Alone For Thousands Of Miles
監督: チャン・イーモウ、降旗康男
脚本: ヅォウ・ジンジー
音楽: ガゥオ・ウェンジィン
出演: 高倉健
寺島しのぶ
リー・ジャーミン
ジャン・ウェン
チュー・リン
ヤン・ジェンポー
中井貴一
公式サイト(日本語)
チャン・イーモウ、あっさり味もうまい。 ★★★
中国を代表する映画監督・チャン・イーモウが
日本を代表する映画俳優・高倉健のために作った本作。

男鹿半島で暮らす漁師の高田剛一は、
息子・健一との間に、長年の確執によって生じた
親子のわだかまりを抱えていた。
その健一がガンに冒されたことを知った高田は、
民俗学者である健一の代わりに、
仮面劇「単騎、千里を走る。」をビデオに収めるため、
中国の奥地・雲南省麗江を訪れる。
その旅は彼にとって、親子の埋めることのできない
心の溝を埋めるための旅でもあった。
言葉のわからない地で次々と降りかかる難題。
だが彼の一途な想いが、周囲の人々の心を動かしていく。
そして高田自身も、多くの素朴な心情に触れ、
人が生来持っている優しさや、
自分が過去に見失ってしまった家族の意味を
少しずつ取り戻していく…。

(amazon.co.jpノベライズ本の紹介より)

というのが、お話ですが、
その父親が中国で遭遇する出来事や人々について
淡々と描かれています。

チャン・イーモウといえば、最近では『HERO』とか
LOVERS』とか、派手めな作品が続いていましたが、
もともとは『初恋のきた道』とか『あの子を探して』とか
今回の作品と似た系統である
「中国の片田舎を舞台にした、人の素朴な感情を
 丁寧に描く」みたいな作風を得意としていましたから
まさに本領発揮!って感じでした。

っつうか、高倉健さんですねぇ!
あれだけスケールのデカい中国四千年の風景に
あれだけしっかり馴染めて、しかも個性を失わない
存在感はすげぇなぁと思いました。

実をいうと、高倉健さんの演技をじっくり観たのは
今回が初めてのような気がします。
「自分、不器用ですから…」系の役柄のイメージしか
ないので、あまり興味が湧かなかったというか…。
ま、今回もその系統に近いものはあるんですけど、
時折見せる優しい顔とか、中国人の中にひとりポツンと
置いていかれてしまった孤独な顔とか、必死な顔、
泣いてる顔とか(まさか健さんが号泣するとはね!)
じんわりといい味出てましたねぇ。

そんな骨太な健さんのまわりに、
朴訥とした中国人がわらわらといる。みんないい人。
ヤンヤン(子供役)もヤンチャだけど、すごくいい子で
目力があり、画面から伝わるものがありました。

思わず泣いてしまったじゃないか!!

とはいえ、この映画はいわゆる「感動作」ではありません。
話の中身も詰め込みすぎず、ただ淡々と(だけど雄大に)
主人公の行動を見守っていた、ただそれだけの映画だった
のかな?と思いました。

これ、決してけなしているわけではありません。
そういう映画なのだ、と受け止めただけです。
posted on 2006.02.13
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ミュンヘン
Munich
監督: スティーヴン・スピルバーグ
原作: ジョージ・ジョナス
脚本: トニー・クシュナー
エリック・ロス
音楽: ジョン・ウィリアムズ
出演: エリック・バナ
ダニエル・クレイグ
キアラン・ハインズ
マチュー・カソヴィッツ
ハンス・ジシュラー
ジェフリー・ラッシュ
ミシェル・ロンズデール
アイェレット・ゾラー
モシェ・イヴギ
マクラム・クーリー
公式サイト(英語)
公式サイト(日本語)
第78回アカデミー賞作品・監督賞などノミネート
この映画では感動することはできない。
その前に深く考えるべきことがたくさんあるから。
★★★★★
1972年に開催されたミュンヘンオリンピックで
パレスチナゲリラ“ブラック・セプテンバー/黒い九月”による
イスラエル選手団11人の殺害事件が発生した。
この、実際に起きた悲劇の歴史に隠された後日談を、
史実をベースに映画化した問題作が、この『ミュンヘン』。
実話にインスパイアされ、実際に事件に関わった人々のコメントに
基づいて作られた物語は、事件そのものをイントロダクションとして
犯行メンバーの暗殺を命じられたイスラエル側工作員の葛藤に
スポットを当てながら、泥沼の紛争がもたらす犠牲を浮き彫りにする。
Yahoo!ムービー特集記事より)

オレが生まれる少し前の事件なので、
今の今まで、くわしいことは何一つ知りませんでした。
平和の象徴みたいなイメージのあるオリンピックに
こんな血塗られた歴史があったとはね…。

殺されたイスラエル人。
殺したパレスチナ人。
そして、殺したパレスチナ人を殺そうとする
イスラエル人たち。(彼らの視点から物語が進む)
そのイスラエル人たちも、標的のパレスチナ人を殺していくうちに
逆に殺しのターゲットにされていく。

これが「憎悪の連鎖」ですね。
憎しみが憎しみを生み、殺しが殺しを生む。
殺しても殺しても、後継者が次々と現れ、
いつまで経っても連鎖が止まらないわけです。

そして、殺す側、殺される側の人間性も
知らず知らずのうちに崩壊していく様子が、よ〜くわかりました。
最初はただの「サスペンスドラマ」を見てるだけのような
気がしていたのに、いつの間にか、観ているオレ自身までもが
殺人に対して不感症になり、主人公が壊れていくのを見て
ハッと我に返ることになろうとは…。さすがスピルバーグ監督!
話のもっていき方がすさまじいです。
スタンリー・キューブリックが描いたベトナム戦争映画
『フルメタル・ジャケット』でも、戦争に借り出された若者たちが
鬼軍曹による訓練によって「殺人マシーン」へと変貌していく
狂気が描かれていましたが、なんかそれに近いものを感じましたね。
『ミュンヘン』の場合はもうちょっと事態が複雑ですけど…。

そう、複雑なんです。
イスラエルとパレスチナについての、長ーーい歴史的背景を
理解して観るのと、知らずに観るのとでは、
観る側が感じる衝撃度がまったく違うと思うんですよね。
オレの場合、NHKの「週刊こどもニュース」を見て
ガキでもわかる解説を聞いたので、少しは知ってるつもりで
いたんですけど、実際、なんにもわかっていないことに
気づきましたし、映画に登場するすべての人たちの痛み
みたいなものも、本当にわかってあげられたかどうか…。

平和ボケした幸せな環境の中にいるオレには
ものすごく痛いんだろうな、という想像しかできません。

愛国者であり、暗殺者であり、よき家庭人だった主人公。
彼の背負ったもの、彼を取り巻く多くの人たちが背負ったものの
大きさが、すでにオレの想像を超えています。
とんでもない映画です。この映画を観られてよかったです。
posted on 2006.02.06
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