EHN 2017年6月20日
多くの科学者らが 抗菌化学物質の使用の注意を呼びかけている (トリクロサンとトリクロカルバンに関するフローレンス声明) ブライアン・ビエンコウスキー(EHN) 200人以上の科学者らが トリクロサンとトリクロカルバンの広範な懸念を示し、 世界中でその使用を減らすよう求めている 情報源:Environmental Health News, June 20, 2017 Hundreds of scientists call for caution on anti-microbial chemical use More than 200 scientists outline a broad range of concerns for triclosan and triclocarban and call for reduced use worldwide By Brian Bienkowski (EHN) http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2017/june/triclosan-warning 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2017年6月23日 このページへのリンク http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ ehn_170620_Hundreds_of_scientists_call_for_caution_on_anti-microbial_chemical_use.html 本日、200人以上の科学者と医療従事者らによって発表された声明によれば、バクテリア、新菌類、及びウイルスを殺すために数千種の製品中で用いられている二つの成分は、環境中に残留し、人の健康にリスクを及ぼしている。 科学者らは、ある種の石けん、練り歯磨き、洗剤、塗料、カーペットなど多くの製品中で使用されているトリクロサン及びトリクロカルバンのほとんどの用途におけるありそうな便益は、そのリスクに値しないと述べている。本日、『Environmental Health Perspectives』誌に発表されたその声明(訳注:トリクロサンとトリクロカルバンに関するフローレンス声明)は、”国際社会はトリクロサン及びトリクロカルバンの製造と使用を制限し、他の抗菌剤の使用も問題にする”よう促している。 彼らはまた、トリクロサン及びトリクロカルバンを含有する全ての製品にも警告表示をすること、及びそれらの化学物質がもたらす環境的損害についての研究の促進を求めた。 その化合物が水中、陸上、野生生物、及び人間に蓄積していることを示す証拠は行動を起すのに十分に値すると同声明は述べている。 ”我々は、多くの製品中で抗菌剤の使用が増大していることに注意を喚起したい”と科学と環境健康ネットワーク(Science and Environmental Health Network)の科学ディレクターであり、同声明の署名者の一人であるテッド・シェトラー博士は述べた。”トリクロサンとトリクロカルバンは非常に長い期間使用されており、暴露は非常に広範に及んでいるので、その使用はトップに位置する。”。 それらの化学物質は、人々を病気にするバクテリアやウイルスのような微生物を殺すために用いられる。しかし、両方の化学物質はともに、動物のホルモン系に影響を与え、生殖及び発達への障害を引き起こす。そして、その影響は人間にも広がり、胎児の成長低下、早産、出生時の男児の小さい頭囲に関連付けられるという初期の証拠がある。 それらの化合物は 2,000 種の製品中で使用されていると推定されるが、ある用途はすでに廃止されている。2月に EU は衛生用品中でのトリクロサンの使用を禁止した。アメリカの製造者らは、食品医薬品局(FDA)がその化合物が男児のホルモン系をかく乱することを懸念して昨年9月に禁止してから(訳注1)トリクロサンの手洗い石けんでの使用を廃止している。 FDA は、その制限事項の中で、抗菌手洗い石けんは、病気を防止するうえで最早、非抗菌石けんと水より効果的ということはないと述べた。 ”トリクロサンとトリクロカルバンは、それらが便益をもたらすという決定的な証明もなく、長年使用が許されてきた”とグリーン政策研究所(Green Policy Institute)の副ディレクターで、声明の署名のひとりであるアベリー・リンデマンは述べた。それらの化合物は、抗菌まな板やソックスのような多くの製品のための”販売戦略”以上のものではないと、彼女は付け加えた。 石けんの禁止にもかかわらず、トリクロサンはコルゲート・トータル社の練り歯磨き、ある洗浄剤、及び化粧品中で使用されている。もっと不安なことには、身体手入れ用品のある製造者らはトリクロサンと同じリスクを人々と環境に及ぼすかもしれない他の抗菌剤にトリクロサンを単純に代替しているとリンデンマンは述べた。 トリクロサンとトリクロカルバンはまた、建築資材のような奇妙なところにも出現しているとシェトラーは述べた。”ある建築資材は、真菌のようなものに侵されて微生物分解するので、製造者らはリスクを低減するために、そこに抗菌剤を施す”と、彼は述べた。 広範に使用されているために、ほとんどの人々は体内にあるレベルのトリクロサンを持っている。2008年の米国住民調査で、テストを受けた人々の約75%の尿中からトリクロサンが検出された。 それらの化合物が一旦、環境中に入り込むと、それらは容易には消えない。研究者らは、飲料水、海、及び河川を含む世界中の水及び堆積物中にトリクロサンとトリクロカルバンを検出している。アメリカ地質調査所はアメリカの河川の60%にトリクロサンを見出している。 それらの化合物は、動物実験でホルモンに影響を及ぼす。そして、それらは発達中の赤ちゃんにも同様に作用するかもしれないことを示す証拠がある。適切にホルモンが機能することは赤ちゃんの適切な発達にとって極めて重要である。先月、ブラウン大学の研究者らは、母親の妊娠中のトリクロサンへの暴露は、出生時の低体重、短頭囲、及び早産に関連していたと報告した。彼らは子どもたちが成長して、歯を磨いたり、手を洗った後に、トリクロサンのレベルが急上昇することを見出した。 内分泌かく乱の懸念に加えて、リンデンマンとその他の署名者らはトリクロサンへの暴露による他の二つの潜在的な人間への健康影響の概要を示した。すなわちアレルゲンへの過敏反応と抗生物質耐性である。 アメリカとノルウェーで行われた大規模な子ども研究は、トリクロサンをアレルギーとぜんそくの悪化に関連付けた。そして、トリクロサンへの耐性を獲得したバクテリアはまた、他の抗菌化合物にも耐性を持つ証拠がある。 コルゲート社のような会社は、トリクロサンの使用を防衛してきた。化学物質製造会社を代表する米国化学工業協会はこの声明に関するコメントを断った。 同声明の著者らは、抗菌剤の必要性を認めており、全面的禁止を求めていないと、シェトラーは述べた。トリクロサン入り練り歯磨きは歯周病の人に役立ち、病院では、手術前のそのような殺菌石けんの使用及び免疫系障害を持つ人々の周囲での使用は極めて重要であると、彼は述べた。 しかし、毎日の使用は抑制することができ、望むことは同声明が広範な対話の出発点となることであると、彼は加えた。 ”それが政策レベルに影響を及ぼすかどうかわからないが、消費者の関心と懸念を通じて、製造者を徐々に方向転換させつつ、多くのことが一体となって起きる可能性がある”とシェトラーは述べた。 訳注1:トリクロサン禁止関連情報
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