EWG 2008年7月
石けん、歯磨き、母乳中に含まれる農薬トリクロサン
それは子どもに安全か?
概要と勧告


情報源:Environmental Working Group July 2008
Pesticide in Soap, Toothpaste and Breast Milk - Is It Kid-Safe?
Summary & Recommendations
By Rebecca Sutton, PhD, EWG Scientist; Olga Naidenko, PhD, EWG Scientist;
Natalia Chwialkowski, EWG Intern; Jane Houlihan, Vice President for Research
July 2008
http://www.ewg.org/reports/triclosan

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年8月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ewg/08_07_ewg_triclosan.html


 幼児への健康リスクの評価もなしに、連邦政府規制当局はホルモンをかく乱する農薬、トリクロサンを、液体手洗い石けん、歯磨き、肌着、子どものおもちゃなど、140種類の消費者製品に使用することを承認している。この化学物質が母親の母乳に蓄積し乳児と子どもの発達に潜在的な有害性をもたらすという事実があるにもかかわらず、この物質への暴露は放置されてきた。

 これらのリスクに加えて、エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)は、トリクロサンの液体手洗い石けんやその他の消費者製品での広範な使用が消費者に約束している殺菌の利益をもたらしてるという証拠は見出していない。米国医師会(AMA)、米食品医薬品局(FDA)諮問委員会、及び数十人の科学研究者らは、殺菌石けんは感染症の拡がりを防いだり皮膚の細菌を減らすのに通常の石けんと水より効果があるということはないと結論付けている。

 法に基づき、米環境保護庁(EPA)は、トリクロサンの健康安全データを現在見直している。これは、この有害な殺菌剤への暴露を削減するために必要な健康と環境の厳格な保護をもたらす重要なプロセスである。しかし、EPAのトリクロサンのリスク評価草稿(ドラフト)は懸念を与えるものである。データの欠如と矛盾がいたるところにあり、その評価は現状を追認するために巧みに作られたものである(EWGからEPAへの書簡を参照のこと)。

 EPAは、クレジット・カードや調理台から赤ちゃんの涎掛けや毛布にいたるまで、消費者製品に適用される20種の農薬成分への使用に対しトリクロサンを承認してきた。連邦農薬法の無感覚で不当な濫用の中で、母乳、マットレス、幼児の寝巻き、毛布、涎掛けおもちゃ、家屋内の埃、オムツかぶれクリーム、その他その使用が承認されたことにより生ずる可能性がある暴露源中のトリクロサンへの赤ちゃんと子どもの暴露の安全性を検討しなかった。

 トリクロサンは、環境中に残留し、野生生物にとって非常に有害な物質に分解し、ヒトの体を汚染し、ほとんど調査されたこともなく、十分に理解されていない健康リスクを及ぼす。トリクロサンは効果がないことが証明されており、EPAは子どもに対する安全性評価を実施しないので、我々は次のように勧告する。

  • 立証されている抗菌剤の抵抗力が公衆の健康に影響を及ぼさず、またそのような製品が感染症を防ぐことに効果があることが示されるまで、抗菌剤の消費者製品での使用は止めるベきとする米国医師会の結論に従い、身体手入れ用品及びその他家庭で使用されるどのような製品中においてもトリクロサンの使用を禁止すること。
  • その他の消費者製品での使用について、EPAはトリクロサンとその分解成分の胎児、幼児、子ども及びその他の脆弱な集団に対する安全性を十分に評価すること。
  • 消費者は、トリクロサンを使用した製品の使用を極力避けること。
  • 製造者は、消費者製品中でのこの有害で残留性がある化学物質の使用を法的強制力のある規制が実施される前に自主的に縮小すること。
消費者製品中のトリクロサンは
ヒトと環境への広範な汚染をもたらす
Notes and references
  1. Testing sponsored by triclosan manufacturer Ciba found the pesticide in 60 of 62 breast milk samples from mothers in San Jose, CA and Austin, TX (Dayan 2007).
  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC) detected triclosan in 75% of 2,517 people 6 years of age and higher, in tests of the chemical in urine samples (Calafat 2008).
  3. Triclosan was detected in 8 of 17 cord blood samples in a study conducted in the Netherlands (TNO 2005).
  4. The U.S. Geological Survey (USGS) detected triclosan in 58% of 85 rivers and streams tested in 30 states (Kolpin 2002).
  5. Triclosan's toxic breakdown product methyl triclosan has been detected in fish downstream of wastewater treatment plants (Balmer 2004), and studies indicate that it persists in sediment for at least 40 years (Miller 2008). Though its widespread use and persistence in the environment indicate it might pollute tap water and food, testing is not required and no studies on this have been published.
  6. EWG researchers compiled a comprehensive listing of 140 types of consumer products that can contain triclosan, from technical information and pesticide labels published by EPA [see the data], and from EWG's in-house database of ingredient listings on 30,000 personal care products (EWG 2008).
  7. In a survey of personal care product ingredient labels, EWG found triclosan in 112 of 259 liquid hand soaps (43%) and 47 of 609 toothpastes (7%). The data are drawn from EWG's personal care product ingredient database (EWG 2008).

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