EHN 2009年6月18日
抗菌剤トリクロサン イルカから検出
解説:カレン・キッド

情報源:Environmental Health News, Jun 18, 2009
Antibacterial found in dolphins
Synopsis by Karen Kidd
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/
newscience/antibacterial-agent-found-in-dolphins/


オリジナル:
Fair, PA, H-B Lee, JAdams, C Darling, G Pacepavicius, M Alaee, GD Bossart, N Henry and D Muir. 2009. Occurrence of triclosan in plasma of wild Atlantic bottlenose dolphins (Tursiops truncatus) and in their environment. Environmental Pollution doi:10.1016/j.envpol.2009.04.002.
http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6VB5-4W68F27-3&_user
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訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年6月19日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090618_triclosan_found_in_dolphins.html


 よく使われる抗菌剤トリクロサンが初めて海洋哺乳類の血中から検出された。

 広範な消費者製品中で使用されているこの殺菌化学物質は、台所や浴槽から流れ出してアメリカの沿岸にすむイルカの体内まで達する。

 研究者らは、海洋哺乳類であるバンドウイルカが下水処理水放出水域でトリクロサンを体内蓄積していることを初めて報告した。この研究は、サウスカロライナとフロリダの河川、河口、港、及び潟の動物を調査した。

 トリクロサンは、バクテリアやそれらが関連する疾病を抑制するために使用されている石けん、消臭剤、練り歯磨き、その他身体手入れ用品中の共通の添加剤である。また、ソックス、まな板、生ゴミ袋の様な消費者製品中でバクテリアの繁殖を抑制するために使用されている。

 この抗菌剤は主に家庭の流しから下水に入り込む。下水が処理されるときにそのほとんど(95%位まで)は除去されるが、それは下水処理施設排出口の下流の河川や河口で最も一般的に検出される汚染物質である。

 トリクロサンは水路中に残留し、バクテリアや藻類の生態系に影響を与え、また、魚類やその他の水生生物中に蓄積する。それはまた、ヒトの尿、母乳、及び血液の中で見出されている。

 バンドウイルカは温帯及び熱帯の水域に住む。それらはアメリカ東海岸沿いに最も多く生息するイルカ種である。それらはしばしば、人口密集地帯を含む港や河口に現れる。

 この調査では、野生のバンドウイルカは、サウスカロライナ州のチャールストン及びフロリダ州のインディアン・リバー潟で2005年に生きたまま捕獲された。血液サンプルは各場所13頭から採取されトリクロサンが分析された。

 抗菌剤は二つの場所でそれぞれ31%及び23%のイルカから、0.025〜0.27ppb のレベルで検出された。これらのレベルはヒトの血液中で測定されたものと同等である。

 海洋動物が、たとえばPCB類のような通常の残留性有機汚染物質(POPs)で汚染されていることはよく知られていることである。この新たな研究は、人口密度の高い地域に住むバンドウイルカは身体手入れ用品中に見出されるひとつの化学物質で汚染されてきていることを示している。

 まだわからないことはこの汚染がどのように広がったのか、そしてそれがどのように動物の健康に影響を与えるのかということである。研究者らは、環境中のトリクロサンに関連する相互作用と影響、他の有害物質への転換の可能性、及び極めて低い用量であっても生物学的システムを変えることができるホルモン系を阻害する可能性を理解するために、さらなる研究が必要であると示唆している。


訳注:トリクロサン関連記事


化学物質問題市民研究会
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