EHN 2014年8月10日
殺菌化学物質
妊婦と新生児中に共通にみられる

リンゼイ・コンケル (EHN スタッフライター)

情報源:Environmental Health News, August 10, 2014
Germ-killing chemicals common in pregnant women, newborns
By Lindsey Konkel, Staff Writer, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2014/aug/germ-killing-chemicals

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年8月18日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_140810_Germ-killing_chemicals.html


 ブルックリン地域で行われた調査で、新生児の半分は、消費者製品中で広く使用されている殺菌化学物質(germ-killing chemicals)であるトリクロサン(triclosan)に母親の胎内で暴露していたと、化学者の年次総会で本日、研究者らが報告した。

 ”我々の調査は、妊婦らは、内分泌かく乱作用を持つこれらの化合物にひどく暴露しているかもしれないということを示唆している”とニューヨークのサニーダウンステイト医学センターの環境健康学者で、本研究の共著者であるローラ・ギールは述べた。

 トリクロサンに加えて、約4分の1の新生児は、固形石けんのあるものの中に見られる、もうひとつの殺菌化学物質であるトリクロカルバン(triclocarban)に暴露していた。

 研究者らはまた、化粧品殺菌防腐剤であるブチルパラベン(butylparaben)のレベルが高い妊婦は、低いレベルの妊婦に比べて身長がより小さい赤ちゃんを産んだと本日報告した。身長がより小さいことが赤ちゃんに健康影響を与えるとしても、それがどのようなものか明確ではないと、ギールは述べた。これらの発見は予備的なものであり、まだ発表されていので、ギールは身長差の詳細を明らかにすることを断った。

 ”出生サイズの変化は内分泌かく乱の兆候かも知れない”と彼女は述べた。”我々は将来の研究で、これらの化学物質に関連する有害健康影響の疑問をに対応できればと思う”。

 この発見は、サンフランシスコで開催されているアメリカ化学会の年次総会で発表された。彼らは消費者製品中の抗菌化学物質(antimicrobial chemicals)の安全性についての討論を高めている。トリクロサンとトリクロカルバンは、練り歯磨き、液体石けん、洗剤、衣類、おもちゃなどを含んで、2,000品目以上で使用されている。

 昨年、米食品医薬品局(FDA)は、この二つの化学物質を含む抗菌ハンドソープとボディウォッシュは、通常の石けんと水に比べてもっと効果があるわけではないと発表した。FDA は、これらの安全性と可能性ある健康影響を見直しをしており、2016年には判断を下すことが予想されている。今年の初めに、ミネソタ州は、いくつかの家庭用品中でのトリクロサンを禁止する最初の州となった。

 トリクロサンとトリクロカルバンは、抗生物質耐性バクテリアを拡散し、脳と生殖系の発達をかく乱し、植物と動物中に蓄積するかもしれないと研究が報告している。エストロゲン擬態として特定されていパラベンは、アレルギーと皮膚の炎症はもちろん、実験動物の生殖問題にも関連している。

 ギールとアリゾナ州立大学の研究者らによるブルックリン調査によれば、テストを受けた184人の妊婦の全てが尿中にトリクロサンの痕跡をもち、86%がトリクロカルバンを持っていた。33人の女性について、へその緒の血液がテストされた。妊婦と胎児についてトリクロカルバンが調査されたのは初めてのことであった。

 女性たちは平均して、一般的アメリカ人に比べて、これらの化学物質のレベルが高かった。テストをうけた女性のほとんどは黒人であった。

 ”もし暴露源を断てば、最終的にはトリクロサンとトリクロカルバンは速やかに希釈されるであろうが、実際に我々は、これらの化学物質を広く使用しており、したがってまた、広く暴露している”と、この研究の主調査者であり、アリゾナ州の環境調査センターのディレクターであるロルフ・ハルデンは声明の中で述べた。

 アメリカのクリーニング製品産業界を代表する米クリーニング協会の準副会長であるポール・デレオは、見つかった痕跡はどのような影響をも及ぼさない微量であると述べた。

 ”周りにあるどのようなものも我々の体に入る。しかし彼らが見つけているレベルは極めて低い。毒性学のテスト基準に基づけば、これらのレベルと安全ではないとみなされるレベルには安全性について広い範囲の余裕がある”と彼は述べた。

 しかし専門家らは、標準毒性学テストは、多くの影響を、特にホルモンかく乱に関連する影響を検出しないと述べている。

 ギールは、暴露を減らしたいと望む妊婦は製品の裏にリストされている活性成分をよく調べるべきであると述べた。”’抗菌’と表示されている製品は、活性成分としてトリクロサンとトリクロカルバンを含んでいるようなので、使わないように”と彼女は述べた。

 有名な製造者である Proctor & Gamble と Johnson & Johnson は、彼らの製品からトリクロサンを廃止しつつあると発表した。多くの化粧品会社は、パラベンを使用しない製品を市場に出している。


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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