【徳之島トライアスロン2014・パワーレポート】
適当な飛行機が取れなくて、徳之島に着いたのはレース前日の夕方。
それから自転車を受け取って、組み上げてから試運転。大分遅くなってしまった。
予約しておいた民宿に電話すると・・・
「えー、予約してましたぁー?」エアコンもテレビも夕食も無い・・・
≪決戦の時≫
朝から、昨日買っておいた、特大オニギリ2個(多分普通のオニギリ5個分ぐらいある)と、チョコレートバー。
食べ過ぎた。
自転車置き場まではバスで。自走する人が多いけど、予備のチューブラーを一本しか持ってこなかったから、できる事なら1ミリでも走りたくない。
自転車置き場で、準備してると滝のような雨。みんな、手を止めて『マジかよ〜』って感じ。
自転車置き場から会場までの5キロは自走。小降りになったタイミングで、出発。
急な坂を降って自転車をセットしてウェットスーツを着る。今年は体重を絞ったのでトライスーツの上からウェットスーツが着れる。
登録を済ませてチョット泳ぐ。水が綺麗で気持ちいい。案外調子イイかも知れない。
会場ではスピーカーから盛り上げようとDJみたいな声が聞こえる。『さぁ、スタートまでいよいよ25分』
あー、ヤダ。早く始まって、サッサと終わらないかしら。
この頃が、一番憂鬱。ビーチに出てスタートを待つ。
≪SWIM≫
最短距離を狙う選手と後ろの方の選手とでは、1,2分の差がある。アタシは真ん中より少し後方から。今回は、何となくガツガツ行かない。
『5、4、3、2、1スタート!』
ここの水泳は、1000メートル真っ直ぐ泳いで引き返してくる。1000メートル先の折り返し地点はよく見えない。
それから、時計回りに泳ぐから、ブイとロープを進行方向右手に見ながら進むことになる。
アタシは左呼吸なのでブイが見えない。何だかやけに斜めに泳いでいる奴が居ると思ったらアタシが真っ直ぐ泳げていなかったり、きっと随分無駄に泳いでいたのだと思う。
水は、綺麗だけどカラフルな熱帯魚を鑑賞しながら泳げるというほどじゃぁ無い。そうそう、ウミヘビが泳いでいましたよ。
それにしても、みんな速い。プールだと滅多に抜かれないんだけど、バンバン抜かれる。
参加者も石垣の3分の1だからバトルも無いと思っていたけど、何のなんの、結構しんどい。
前を塞がれたり、横からアタックされたりの繰り返し。その度に先を譲ってしまう。
アタシはこんなに緩い性格だったかしら。養殖者(プール育ち)の弱さが露見した感じ?
前方に船が見えてきた。どうやら、あれが折り返し地点らしい。
という事は未だ、半分も来ていない。
この後バイクで75キロ走ってからラン21キロ。
始まったばかり。先は長い。何だかなぁ〜。
折り返した後は流れに乗って泳ぐので、同じ1ストロークでも得した様な気分。だからと言って楽になった訳でもなければ、真っ直ぐ泳げるようになった訳じゃない。
ブイの真横を泳いでいたかと思うと、次の瞬間には随分と遠くにブイが見えていたり。
「あー、何と無駄なことをしてしまったのか」
それでも、確実にスイムのゴールは近づいてくる。
水から上がると、シャワーで潮を洗い流している人を横目にバイクに急ぐ。泳ぎで抜かれた分は、こういう所で補うのだ。セコいと言われようが。。。
≪BIKE≫
バイクはスタートするやいなや、ペダルからシューズが外れて、ついでにシューズが脱げてしまった。
輪ゴムで格好良くシューズを止めておいたのに完全に失敗。結局、バイクから降りてシューズをチャント履き直してスタート。
折角シャワーを浴びている人を追い越したのに、多分これで抜かれた。
さぁ、気を取り直して頑張って行こう!
ところがいきなり急な登り坂から始まる。ギヤをローに入れておけば良かった。
来る時同じ坂を降りてきたのだから、気付いても良さそうな物だが・・・
坂は、それほど長くない。一般道に出ると、いよいよカンチェラーラの出番だ。DHバーを握って颯爽と進む。
ところが、みんなカンチェラーラより早い。
なんで?
ホイールやパーツ等、今回に向けて投資したモノのせいにはしたくないし、かと言って自分のせいにするのはもっと嫌だ。
残るは、古いフレームとテレビもエアコンも無いあの宿と食べ過ぎた朝食だ。
スイムの疲れを引き摺って、結構頑張っているのに中々10キロ地点に着かない。
ついでにユピテル(スピードメーター)は、水が入って曇ってしまって全く見えない。
きっと、10キロの標識を見逃したんだろう。ヨシッ、20キロの標識目指して頑張ろう!
なんて、思ってから暫くして10キロの標識が現れた。
あと、バイク65キロ、それからラン21キロ。
それにしても、登りが多い。
登りになるとコンタドールに変身。
石垣の登りでは追い抜かれる事はほとんど無く、むしろ追い越すほうが多かったのだが、コンタドールも効かない。バンバン抜かれる。
ついでに、下ってその勢いで登ろうとした瞬間に工具を落としてしまった。
何で、よりによって谷底で落ちるかね?
皆が下った勢いで登ってゆく中、一人でえっちらおっちら登坂。
その後は、CO2のボンベを落としてしまう。「こんなのいらない」とも思ったのだが、沿道の人が拾ってくれたので置いてゆく訳にも行か無い。お礼を言って受け取る。
すると今度はボトルを落としてしまった。
これも沿道の人に拾ってもらう。
ところが、拾ってくれたのが太ったオヤジで遅い。
「モタモタするな!」と、言いそうになるのを<グッ>と堪える。
周囲の人が「田代さん、早く早く」と、その太ったオヤジを応援してる。
それにしても、登りが多い。10登って3しか下ってないような損した気分。
そんな登坂の途中、明らかにアタシの方が速そうなのだが、これまたデブに抜かれた。
「今日は暑く無くて最高のコンディションですねー」なんて言いながら・・・
「べつに〜」
悔しいから、別のヤツを抜くときに声かけてやった。
「登りばっかりですね」なんて言うと、「マジ、キツイです」なんて返ってきた。
いい人だ。
残り10キロくらいの所で反対側からランの先頭がやって来た。
コッチは珍しく気分よろしく下っていると言うのに心が晴れない。
『オレ、あとでここランで登るのかぁ?』
できる物なら代わってもらいたい。
ここでもう一度スピードメーターを見てみる。やっぱり、ダメだ。曇ってしまって何も見えない。
何の役にも立たないと分かると、無性に腹が立ってバイクがキツイのをどうにかユピテルのせいにできないだろうか。
それでも、どうにかゴールが近付いてきた。たくさんのランナーとスレ違う。
バイクゴール。3時間2分。
予定では2時間30分だったのだが、これじゃぁ、時速25キロしか出てないことになる。ただのサイクリングだ。
バイクをスタンドに引っ掛けると既に沢山のバイクが。。。そりゃぁあれだけ抜かれれば、しょうが無いな。
≪RUN≫
気分一新、ランのスタート。
これまで一年間、ランは結構頑張って走って来た。去年は一年間で1500キロぐらい走っている。
走りだそうとすると、トイレが目に入った。見ると皆が走る前にトイレで用を足している。
何だか、吊られるようにアタシも。。。
どうしてもトイレに行きたい訳では無いのだが、その間は堂々と休めるような気がしたのかもしれない。
大して出もしないまま、用をたすといよいよ、ランのスタート。
あと、21キロ。
ところが、ここへ来て調子が良い。足取りも軽く、のっけから10人程を一気に追い越す。
これは、ひょっとするととんでもない事になるぞ。
快調に前をゆくランナーを次から次へと追い越し進む。
しかし、またしても『登り』。。。
あーヤダ。しかも、段々日差しが強くなってくる。
ここでグッとスピードが落ちる。スピードなんて単語は似合わないぐらいに落ちる。そして落ちたスピードは二度と元には戻らない。
前をゆくランナーをがたまらず歩き出す。コッチは意地でも歩かないと決めたので頑張って走るが、一向に前を歩くヤツとの距離が縮まらない。
沿道からは「頑張って!」の声援が続くが、力ない笑みを返すのが精一杯。
真っ黒いサングラスをしているので、弱りきった目元を見られることは無いが、きっと、かなりだらし無い顔をしていたのだと思う。
最初の内は登っては降りがつづくが、そのうち行けども行けども登りばっかり。
あのコーナーを過ぎれば登りは終わる。何て、思って通り過ぎるとそそりたつよな登り坂が続いている。
「登りばかりですね」ここでも追い越しがてら声を掛けてみた。
「まだまだ続きますよ」
嫌なヤツだ。
『オッ、何か、描いてあるぞ。。。』
『5キロ』
『ハァー?』未だ5キロしか走って無い?ちゃんと測ったのか?ユピテルが壊れてなかったら明日来て測り直してやりたいぐらいだ。
この辺りでもバイクとスレ違う。
その数も徐々に減ってくる。やがて白バイに守られるようにしたバイクが通り過ぎる。これが最後の一台かな?
ここ、徳之島の大会はエイドステーションが充実している。
それでも、この辺りまでは殆んどお世話にならないで来られた。
ところが日差しが強くなってくると、肩のあたりがヒリヒリ。
エイドステーションでは、スポンジや飲み物の他にも氷の入った袋が貰える。
この氷の入った袋を帽子の中に入れて走ったら気持ちいいだろうなぁ(帽子を忘れてしまった)。
仕方ないので袋を破いて、中から大きめの氷を取り出し、トライスーツの中に落とす。
氷はズルズルと下の方に下がって行って、マズイッと、思った時には丁度、股グラ辺りで止まった。
前から見たら変な所がおかしな形で膨らんでいる。
「あの人何考えながら走ってるんだろう?」とか思われたら嫌だ。
でも、走りながらだと簡単には取り出せない。トライスーツは<遠山の金さん>みたいに片肌脱がないと、そこまで手が届かない。
ひたすら早く溶けるのを祈るしかない。
その間は、疲れているのを忘れることができた。
「もうそろそろ半分ぐらいかね」沿道の人が話しているのが聞こえた。
『そうか、あと10キロかぁ』何だか、久しぶりに聞いた、いいニュースのような気がする。
ところが、10キロの標識が見えたのはそれから随分してからだった。
戻って文句言う気力も無い
普段家の近くで走る10キロとは全く違う10キロだった。
脚が攣る気配は無いが、全くスピードが上がらない。多分時速10キロも出てないんだと思う。
北島康介なら、「何にも言えねぇ!」、岩崎恭子なら、「今まで生きてきた中で、一番シンドイ」
もう、どうにでもナレ!と言う感じ。
最後の5キロが長いこと長いこと。
もう、ヤダ。なんでもイイから早く終わってくれ。
ゴールがこっちに来りゃぁ、いいんだ・・・
そして、「ゴール!」
もう、二度とやらない。冗談じゃない。
「走り終えた後の感動の瞬間」なんてウソだ。
人間は、こんなに草臥れてもいいのだろうか?
皆どうかしてる。この星の住人は。
なぜか・・・つづく
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