地球温暖化論への挑戦

薬師院仁志 (八千代出版、2002)

 

1990年頃からこの方、「地球温暖化」に関するニュースや話題は絶えることなく、今や人類にとって最重要課題であるかのように議論されています。しかし、その割には対策は遅々として進まず、先進国間で二酸化炭素排出枠の「取り引き」などが行われていて、各国指導者たちはどこまで真剣に考えているのか、よくわかりません。

さて、現在「地球温暖化」説では、おおよそ次のようなことが言われています。

  • 産業の発達により化石燃料の使用が増えたため、大気中への二酸化炭素の排出が増えた。
  • 大気中の二酸化炭素濃度が上昇したため、地球の平均気温が上昇している。
  • 平均気温がこのまま上昇し続けると、極地方の氷が溶け出し、また海水が膨張するだろう。
  • その結果、海面が上昇し、海岸地帯の一部や小さな島が水没するだろう。
  • また、平均気温が上昇すると異常気象が増え、生活環境や農業に大きな被害が出るだろう。
  • だから、二酸化炭素をはじめとする「温室効果ガス」の排出を減らす必要がある。
  • そのためには化石燃料(石油)の使用を減らす必要がある。

ところが、本書によると、これらは世界の科学者(気象学者など)たちのコンセンサスではないようです。つまり、たとえば次のように主張する人々も多いのです。

  • 二酸化炭素濃度の上昇は平均気温の上昇の原因ではなく、むしろ結果だ。
  • 地球の平均気温の変化は太陽活動(黒点)の変化と最も関係が深い。
  • 仮に平均気温が数度上昇しても、海水は表面の温度がわずかに上昇するだけだろう。
  • 気温が上昇すると海水がより多く蒸発し、極地方では雪が多くなり氷はむしろ増えるだろう。
  • したがって、平均気温がかなり上昇しても海面はほとんど上昇しないだろう。
  • 平均気温が上昇すると、むしろ異常気象は減り、また農産物の収穫は増えるだろう。

私の若い頃(1970年代)は、世界中の気象学者が「地球は寒冷化している」と言っていて、マスコミも「氷河時代がやってくる」と危機感を煽っていました。その時の気象学者たちの多くが、現在は「地球は温暖化している」と叫んでいるそうです。科学と政治が結びつくとろくなことにならないと、よくいわれますが、はたして「地球温暖化問題」とは地球規模のマインドコントロールなのでしょうか。その狙いはいったい何か?

社会学者が「地球温暖化説」のトリックに挑んだ本書に関しては、「市民のための環境学ガイド」の中のページが参考になります。また、より一般的な啓蒙書としては、伊藤公紀『地球温暖化』(日本評論社、2003)がお薦め。

 

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