歴史を変えた気候大変動

ブライアン・フェイガン
(東郷えりか・桃井緑美子 訳、河出書房新社、2001)

 

今では雪と氷に覆われたグリーンランドはかつて、文字通り緑の島でした。北欧のヴァイキングが北ヨーロッパ全体を荒らしたのは、紀元800〜1200年頃の温暖な時代です。このときすでに彼らは、北米大陸を「発見」していました。その後ヨーロッパは寒冷化へと向かい、氷河が前進し、荒れた厳しい気候になります。その頃に描かれたピーテル・ブリューゲルの絵画作品には雪景色がいくつもありますが、現在のフランドル地方ではこれらの絵のような深い雪に覆われることはそれほど多くないようです。およそ1300〜1850年のヨーロッパは「小氷河期」と呼ばれ、その前の「中世温暖期」と対比されます。

本書は中世温暖期から小氷河期を通じたヨーロッパの気候の変化を跡付け、これがヨーロッパの歴史にいかに大きな影響を与えたかを論じたもの。歴史に影響を与えたというよりも、邦題にあるように、気候の変化が歴史を作ったというべきかもしれません(原題は『小氷河期』)。冒頭で触れたヴァイキングの活動はもとより、中世末期の漁業の隆盛と、その後の農業革命。大飢饉に続く黒死病(ペスト)の猛威。前進する氷河に飲み込まれる村や農地、有名な「囲い込み」運動。そして農業革命が遅れたフランスの市民革命、アイルランドの大飢饉と北米大陸への移民。

このように紹介すると、まるで環境決定論のように聞こえますが、著者はそうではないと強調しています。そして、最後の章では現代の地球規模の温暖化が取り上げられています。ここで初めて、気候が歴史を変えるのではなく、歴史(=人間の活動の結果)が気候を変えた? さて、「地球温暖化」の結末はどうなるのでしょうか。

 

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