スノーボール・アース

―生命大進化をもたらした全地球凍結―

ガブリエル・ウォーカー
(川上紳一監修、渡会圭子訳、早川書房、2004)

 

20世紀末の科学界の話題をさらった「スノーボール・アース(雪玉地球)」、すなわち「全地球凍結仮説」の誕生から現在までの歩みを紹介した本。といっても、この仮説の確立に貢献した科学者たちの研究と論争をめぐる、人間ドキュメントです。

今からおよそ8億年前から6億年前まで、地球全体が何度か雪と氷に覆われ、ほとんどの生物(すべて単細胞生物)が死に絶えました。そして、最後の全地球凍結から数千万年後に、わずかに生き残っていた単細胞生物の子孫から、あの「カンブリア紀の大爆発」が起こったのです。これは、かつての「大陸移動説」(現在は「プレート・テクトニクス」)の衝撃に匹敵する、地質学・地球科学の革命です。いったいどうやって地球全体が氷に包まれたのか。その原因は。そのメカニズムは。そして、氷に包まれた地球が、どうやって再び元の姿に戻ったのか。地質学の常識を覆すこの大胆な仮説は、どのようにして出現したのか。本書にそのすべてが書かれています。

発表されてからまだ10年にも満たないこの仮説をめぐって、現在も熱い論争が続けられていますが、「全地球凍結」そのものを疑う学者は少ないようです。世界各地で発見されるさまざまな地質学的証拠が、この仮説によって説明されつつありますが、まだまだ説明されるべき現象や因果関係は多く、おそらく今後数年から数十年かけて研究が続けられ、より確固とした地球史像が打ち立てられることでしょう。できることなら、それを見届けたいものです。

 

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