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劉連仁訴訟 最高裁 決定に対する弁護団声明

1 本日、最高裁判所第2小法廷は,劉連仁中国人強制連行・強制労働事件について,上告を棄却し,また,上告審として受理しない旨の決定を行った。
すでに同日,同種事件である西松訴訟事件で最高裁が、日中共同声明により個人請求権は実体的に消滅しないが,裁判上訴求する権能が失われたとして,広島高 等裁判所の判決を破棄し,中国人被害者らに敗訴の不当判決を言い渡した直後に出された決定であり,私たちこの決定に断固として抗議する。

2 劉連仁事件は,戦時中の強制連行,強制労働の違法性とともに,故劉連仁が逃走した後の戦後の国の保護義務違反が問題となった。故劉連仁は,戦時中の残 酷な被害だけでなく,戦後13年間の北海道の原野での過酷な逃亡生活という辛酸をなめ,二重三重に日本国と加害企業とによって被害を被った犠牲者である。 その壮絶な生き様は,中国人強制連行強制労働の犯罪行為を日本や中国だけでなく世界に広め,またその闘う姿は被害の回復に向けて闘う被害者の人達のシンボ ルであった。

この事実に目を向けるなら,最高裁はこの劉連仁の過酷な被害の事実に真摯に向き合い,加害行為と被害事実を認め,この国の責任が除斥期間や相互保証主義に よって否定されることが正義に適うかどうかを判断すべきであった。しかし,最高裁は上記の争点を何ら真摯に検討することなく,一片の決定で劉連仁事件を終 結させた。

また,西松建設最高裁判決は,強制連行・強制労働の事実関係を認め,個別具体的な請求権についての債務者側の任意な自発的な対応に言及し,被害者らの精神 的・肉体的な被害の甚大さと,企業側の獲得した様々な違法利益を考慮すれば,関係者において被害者らの被害の救済に向けた努力を行うことを期待すると述べ ている。そうであれば,劉連仁事件においてもまさに日本国自身こそが本件強制連行強制労働を画策,実行した主犯として,また,戦後の保護義務を怠った当事 者としてこの問題の解決に向けて真摯な努力を行うべきであり,その旨を最高裁判決は正面から指摘すべきであった。

しかるに本件決定は,この最高裁に託された最高司法機関としての責務を放棄しており,到底受け入れることはできない。

3 中国人強制連行強制労働事件は,すでに国際的にも大きな問題とされ,ILOでは,条約勧告適用専門家委員会によって,強制連行強制労働問題が慰安婦問題とともに,解決すべき問題として幾度も勧告がなされている。

劉連仁はすでに死亡し,また多くの中国人被害者もすでにこの世を去り生存する人達は残り少なくなっているが,被害者の命あるうちに一日でも早く,その国家犯罪による被害と人権の回復を図ることは,日本国の道義的、人道的,政治的責任である。

私たちは,中国人強制連行・強制労働問題の最終解決に向け,国が正義の道理にしたがって行動に踏み出すことを強く要求するとともに,さらに被害者と連帯し,また国内外の支援者と共に最後まで闘うことを改めてここに表明するものである。
以上

2007年4月27日

中国人戦争被害賠償請求事件弁護団
団長   弁護士 尾山   宏
団長代行   弁護士 小野寺 利孝

 

 

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