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強制連行東京第二次訴訟東京高裁判決に対する弁護団声明

  1. 2006年6月16日,東京高等裁判所第15民事部は,中国人強制連行・強制労働事件訴訟に関し,被告(被控訴人)国及び企業10社(青山管財(旧間 組),古河機械金属,鉄道建設,西松建設,宇部興産,同和鉱業,日鉄鉱業,飛島建設,日興ホールディング(旧ジャパンエナジー),三菱マテリアル)に対す る請求について、原告(控訴人)らの請求を棄却する判決を言い渡した。

  2. 判決は、強制連行・強制労働について、国と各企業との共同の不法行為について次のとおり明確に認定した。

    「本件強制連行は,企業らの関係団体からの要請を受けた国が主導し,企業らも関与して行われ,また,本件強制労働は企業らが主体となって行ったものといえる。国と企業らは,本件強制連行・強制労働について・・・共同不法行為責任を負う。」

    そして,本件強制連行・強制労働が閣議決定を経た国策として行われたことも正しく指摘した。

    全国の多くの裁判所が認めているように,東京高等裁判所が中国人強制連行・強制労働という事実を,各被害者ごとに加害行為と被害実態の両面にわたって認定 したことは、高く評価することができる。また,企業については安全配慮義務違反についても明瞭に認めている。

    しかし、国と企業の共同不法行為および企業の安全配慮義務違反を認定しながら、賠償義務を否定したことは極めて不当である。

  3. 判決は、原告(控訴人)らの請求に対して「除斥期間」および「時効」を適用し,国と各企業の賠償義務を免除した。しかも,いずれも起算点を1945年(昭 和20年)12月初めとし,日中の国交も回復していない1955年12月に消滅時効が完成し,また,1965年12月に除斥期間が満了したと判断したこと は,あまりにも現実を無視した形式的判断である。また,戦後,証拠隠滅をはかり、国会の場で繰り返し虚偽の答弁を行った国の責任を免罪する極めて不当な判 断である。

    しかしながら,本判決は,本件事件の法的障碍は「ときの壁」のみであることを示している。われわれは、最高裁判所においてこの争点は必ずや克服されるであろうと確信している。

    判決は、中国人被害者の過酷な被害実態と国と企業の共同不法行為を正面から認めながら、原告(控訴人)らの請求を棄却した。私たちは裁判の結果に失望を禁じ得ない。この判決は,日本ばかりでなく中国の国民に日本の司法への失望を招くものである。
  4. 本判決は,法的責任とは別に国と各企業には現在もなお政治的・道義的責任が未解決のまま残っていることを改めて強く示したものである。

    ときが経過したことのみによって責任を免れようとする国や各企業の姿勢は,国際的非難を免れない。

    国及び各企業は、判決の認定した加害事実と被害の重みを真摯に受け止め、さらに、共同不法行為や安全配慮義務の法的責任が認められた事実を正面から受け止 め、裁判の最終結果を待つことなく、中国人被害者に対する謝罪と補償の実現に向かって取り組むべきことは明白である。

    私たちは、連行された中国人すべてに対する謝罪と補償のための「強制労働補償基金」を政府及び連行企業が共同で実現するよう要求する。また,企業に対し,政府の解決を待つことなく,自ら「個別企業補償基金」を設立して被害の回復を図ることを強く訴える。

    既に多くの被害者が亡くなり、時間的な余裕はない。解決を先延ばしにすることは,日中関係の改善を妨げるばかりでなく,両国民の感情的悪化を増幅しかねな い。それはまた,企業の中国内での経済活動にも少なからず悪影響を及ぼすであろう。この現実を直視して、国及び企業は、本問題について全面解決の道筋をつ けるべきである。

    われわれは、日中の心ある人々と手を携え、本問題の全面解決のために闘うことをここに声明する。

    2006年6月16日
    中国人戦争被害賠償請求事件弁護団
    団長   弁護士 尾山 宏
    団長代行 弁護士 小野寺 利孝
    中国人強制連行・強制労働事件弁護団全国連絡会
    事務局長 弁護士 森田 太三

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