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強制連行新潟訴訟 最高裁 決定に対する弁護団声明

1 2008年7月4日、最高裁判所第二小法廷は、中国人強制連行強制労働事件・新 潟訴訟の上告申立事件について、上告棄却及び上告不受理の決定をなした。

その内容は、被害者である上告人らの真摯で切実な300頁以上にわたる中立理由書および上告受理中立理由書に対し、その内容に真摯に応えることもなく、まるで「三下り半」を突きつけたような形式的な決定であり、到底、司法の役割を果たしたものではない。日本や中国をはじめ世界の人々から厳しい批判を受けるのは必至である。

最高裁判所が是認した東京高等裁判所の判決は、第二次大戦末期に日本の国策として中国人901人が新潟港に強制連行強制労働させられた事実を「極めて悪質な行為」「およそ人道上詐されない強制労働」と断罪し、国と加害企業新潟港連梶i現在の潟潟塔Rーコーポレーション)の責任を認めた第一審新潟地裁の判決を不当にも取り消し、被害者らの請求を棄却した。

2 しかし、その高裁判決も、日本国が閣議決定の上暴力と詐言をもって901人の中国人を新潟に強制連行し、そのうち159人が死亡するほどの過酷な労働環境と暴力で強制労働させたことにつき、それらは明確に不法行為であったとし、さらに加害企業については労働者に対して負うべき企業の安全配慮義務も怠っていた、と認定しているのである。

そのような非人道的で許されざる行為の責任が、「消滅時効」や「除斥期間」という年月の経過を理由に消滅することはない。

これは世界世論の常識である。これまでILOは、合計7回にもわたって、日本に対し強制連行強制労働問題や慰安婦問題の解決を勧告した。 ドイツでは、強制労働問題が国と企業の連帯責任で解決された。最近では、アメリカ合衆国下院やカナダ、オランダ、欧州連合で戦争慰安婦の問題解決を求める議会決議が相次いで決議されている。これら事実は、戦争中であったとしても悪質で非人道的な行為を償わなければならないし、その責任は時の経過を理由に消滅するものではないことを示している。

3 今回の決定を出した最高裁第二小法廷は、同種の強制連行・強制労働事件である広島西松事件について、昨年4月27日、国家による賠償請求権の放棄を理由に、中国人被害者ら個人の請求につき訴訟上の救済を斥けたものの、請求権自体が存在していることは認めた。しかも、「本件被害者らが被った精神的・肉体的苦痛が極めて大きかったこと」などとして「関係者において、本俸被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される」と判示し、国や加害企業を含めた関係者による解決努力を求める提言を示した。

しかしながら、「関係者」たる国と企業は、この提言に反し被害救済を怠り続けている。このような状況をふまえ、被害者らは、最高裁に対し、単に「期待する」だけではなく一歩を進めて自ら積極的に解決に向けた努力をすべきでありそれが司法の役割であると要請したが、今回の決定はその点につき何らの答えも示しておらず、極めて遺憾である。

4 今回の最高裁の決定は、いまも続く中国人被害者らの痛ましい被害に対して眼をつむるだけではなく、人道からの要求や問題提起を無視し、世界の世論にも背を向ける歴史的な汚点を残すものとなった。

しかしながら、今回の決定により、過酷な強制連行・強制労働をなした国と新潟港連梶i現在の潟潟塔Rーコーポレーション)の残虐な加害行為の事実は、公権的に認定され確定した。また、被害の救済に向け加害者ら「関係者」が努力するよう求めた最高裁の先の提言が生きていることも明らかである。

国と潟潟塔Rーコーポレーションは、人道上の立場に立ち、またその社会的責任として、中国人強制連行・強制労働問題に真摯に向き合い、被害者の救済に向けて1日も早く解決に向けた努力をすべきである。それがまた、中国をはじめアジア諸国民の真の信頼を築くための不可欠の条件であり、また真の日中友好とアジアの平和のためにも必須の条件である。

以上、最高裁判所の不当な決定に対して抗議するとともに、このことを各界に広く訴え、正義と人道に基づいた解決を呼びかける。

以上のとおり声明する。

2008年7月8日
中国人強制連行強制労働新潟訴訟 原告(被害者)団
中国人強制連行強制労働新潟訴訟 弁護団
新潟港に強制連行された中国人の被爆者張文彬さんの戦後補償裁判を支援する会
中国人戦争被害者の要求を支える会新潟県支部

 

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