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強制連行北海道訴訟 札幌地裁 判決に対する弁護団声明(1)現地弁護団声明

1 2004年3月23日、札幌地方裁判所は、「中国人強制連行・強制労働事件北海道訴訟」に関し、被告国及び被告各企業に対する請求について、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

2  判決は、強制連行・強制労働について、被告国と被告各社との共同の加害行為を明確に認定した。司法が「中国人強制連行、強制労働」という歴史的事実を 明確に認定したことは、当然のこととは言え、評価することができる。しかし、被告国と被告企業の共同の加害行為の悪質さを認定しながら、法的責任を一切否 定するという判断は、論評に値しない史上最低の判決である。

3 判決は、被告らの「除斥」の主張を容認し、被告らの加害責任を免除した。これは2001年7月22日の劉連仁判決(東京地方裁判所)が国の除斥期間の 適用を制限し、2002年4月26日の強制連行福岡判決(福岡地方裁判所)が被告企業の除斥期間の適用を制限して、原告の請求を認めた判決に逆行する不当 な判断である。

4 判決は、被告国の行為とその悪質さを認めながら、「国家無答責」を理由に被告国の責任を認めなかった。この点は、昨年の京都地裁判決、東京地裁判決に 逆行するものであり、司法の後退と言わざるを得ない。判決は、企業と共同不法行為を担い、戦後証拠隠滅をはかり、国会の場で繰り返し虚偽の答弁を行った被 告国の責任を免罪するものであり、極めて不当である。

5 判決は、原告ら中国人の過酷な被害実態を認めながらも、原告らの請求を棄却した。私たちは裁判の結果に深い失望と怒りを禁じ得ない。司法とは正義を実 現する場である。正義を実現し得ない裁判所は司法の名に値しない。私たちはこの判決を乗り越え、原告らを含む約4万人の連行された中国人すべてに対する補 償と謝罪を求めるたたかいを一層強力に進めることを誓う。

6 判決は、「原告らが、暴力的にあるいは威嚇等によりその意思を制圧され、又は欺罔されて我が国に連行され、人格の尊厳と健康を保持することが困難とな るような劣悪な環境の下で、戦争が終了するまでの間、その意思に反して重労働を強制された」事実を認定している。被告国は、判決の認定した事実の重みを真 摯に受け止め、政治的責任を自覚し、裁判の結果を待つことなく、原告らに対する謝罪と補償の実現に向かって全力で取り組むことを要求する。

私たちは、原告らを含む連行された中国人すべてに対する補償と謝罪の措置を政府及び連行企業が共同で実現するよう要求する。本判決が認定した基本的事実関 係は、原告ら以外の4万人近くの中国人被害者に対しても妥当する。今後、各地の訴訟で判決が言い渡されるが、これらの判決を待つことなく、政府とすべての 連行企業は、共同不法行為に基づく責任を自覚し、既に多くの被害者が亡くなり、原告らの生存被害者の人生も多いとは言えない現実を直視して、本問題につい て全面解決の道筋をつけるべきである。

われわれは、日中の心ある人々と手を携え、本問題の全面解決のために闘うことをここに声明する。

2004年3月23日
中国人強制連行事件北海道訴訟弁護団

強制連行北海道訴訟 札幌地裁 判決に対する弁護団声明(2)全国弁護団声明

中国人戦争被害者賠償請求弁護団
団長   尾山 宏
団長代行 小野寺 利孝
中国人強制連行・強制労働事件弁護団全国連絡会
事務局長 森田太三

1  2004年3月23日,札幌地方裁判所は,「中国人強制連行・強制労働事件北海道訴訟」に関し,原告らの請求を棄却する判決を言い渡した。この判決 は,被告国と被告企業の共同加害行為の事実を認定しながら,国に対しては国家無答責,企業に対しては除斥期間の適用を認めて請求を棄却したものである。

2  判決は,強制連行,強制労働について,「第2次世界大戦中,日本国内の炭鉱等における労働力の不足を補うため,中国人を我が国の炭鉱等で就労させる施 策を国が企画立案し,国及び被告企業を含めた炭鉱等を経営する我が国の企業がこれを実施して,原告らを含めた多くの中国人が我が国の炭鉱等に強制的に連行 され,そこで労働を強いられた。」「原告らが,暴力的にあるいは威嚇等によりその意思を抑圧され,又は欺罔されて我が国に連行され,人格の尊厳と健康を保 持することが困難となるような劣悪な環境の下で,戦争が終了するまでの間,その意思に反して重労働を強制されたという事実の概要(本件加害行為等)につい ては,優にこれを認めることができる。」とし,被告国と被告企業との共同加害行為の事実を認定した。司法が「中国人強制連行,強制労働」という歴史的事実 を認定し,しかも被告企業と被告国の共同加害行為の事実を認定したことは,当然のこととはいえ,これまでの一連の判決の流れを定着させたものであって評価 される。

3 しかしながら,判決は,国家無答責,除斥期間の適用を認めて原告らの請求を棄却しており,この点はこれまでの同種の判決の成果を後退させるものと厳しく批判せざるを得ない。

中国人強制連行、強制労働事件は,北海道,新潟,長野,群馬,東京,京都(大阪),福岡,広島,長崎の全国各地で国や関係各企業を被告として闘われている が,すでに2001年7月に、東京地方裁判所の劉連仁裁判において、戦後の国の救済義務違反を理由とする国に対する金2000万円の損害賠償を認める画期 的な判決が言い渡され,2002年4月には福岡地方裁判所において、戦時中の強制連行、強制労働そのものについて国と企業の共同不法行為の事実を認め,被 告三井鉱山株式会社に対して原告一人につき金1100万円の損害賠償を認めるという判決が言い渡されている。その後も、2003年1月には京都地方裁判所 において請求は棄却されたものの、国の不法行為責任を国家無答責の法理を排斥して認め、また被告日本冶金株式会社に対しても不法行為責任、安全配慮義務違 反を認めるという判決が続き、さらに2003年3月には、企業10社と国を被告とした東京第2次裁判においても、東京地方裁判所は請求を棄却したものの, 国の責任を同じく国家無答責の法理を排斥して認めた。

これらの判決の多くは、戦前の不当な強制連行の事実、中国人被害者の耐え難い奴隷労働の事実及びこれらの強制連行・強制労働が国策に基づきなされた事実を詳細に認定し、国と企業の共同不法行為責任が成立したことを明白に認めたものになっている。

中国人被害者の被った過酷な被害を見れば、国の責任が戦前の法理で戦後はすでに克服されている国家無答責により否定され,あるいは責任が認められ発生した 損害賠償請求権が時効・除斥期間という単なる「時の経過」で消滅したとして、未解決のまま放置される結果となることは正義と人道に反するものといわざるを 得ない。

4 これまでの言い渡された判決はいずれも, 国と企業の共同加害行為の事実あるいは共同不法行為責任を明白に認めており,これを否定した判決は一つもない。この司法の流れはすでに定着している。今こ そ,国及び企業はこれまでの司法判断を真摯に受け止め,中国人被害者に対し謝罪と賠償をはじめとする中国人強制連行,強制労働事件の前面解決に向けた政治 的決断をなすべきである。

 

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