公表されている2000年度の吹田市の決算書を見ると、僅かですが教育費の具体的な使われ方を知ることが出来ます。教育環境整備のためにといっても、大きく分けると建物・設備の経年劣化に対応する維持管理的経費とパソコン整備やエアコン設置などの新たな機能を加える経費に分けることが出来ます。どのような仕様で、どれほどの規模をしたのかは決算書だけでは不明であるため、工事のやり方と経費のバランスが適切であるかどうかは、業界関係の人しか分からないと思います。 私たちが現場で見て明らかに「高いのでは?」と感じるものもありますが、情報公開の観点からも広く市民が判断できる工夫が必要だと思われます。神奈川県・横須賀市のように電子入札で公共工事を発注する自治体の動きもあります。一昨年の市政研究集会では、地元の多くの業者のみなさんが仕事を求めている姿が紹介され、予算を持った公共機関が小さくても継続して地元の業者に発注することの大切さを訴えておられました。 |
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注
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校舎改造、グランド・フェンス、防水・塗装、設備・プール、空調設備、その他工事等の分類は、他市との比較を容易にするために便宜的に行った。 |
老朽化に追われる施設整備 |
平成10年以降に目覚ましく増額されてきた吹田の学校施設整備予算ですが、小学校の工事関係費を内容別に見てみると、維持緊急工事と設備関係の比率が大きいことを示しています。これは、子どもたちの安全に直結する施設設備の老朽化に施設設備の改修が追いつかないことを表していると考えられます。 その一方で、他市では大きな比重を占める耐震補強工事や校舎改造 等の根本的な安全対策と建物・設備の耐久性向上につながる予算は、決定的に小さく、このようなペースでの改修では、全体の老朽化はさらに深刻になるでしょう。 |
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中学校の施設関係費では、校舎改造関係の工事費がやや多いようですが、内容を見ると建具の改修工事のように、本来、大規模改修工事の対象にしなかった部分の老朽化が進み、追われる形での改修工事になっています。 |
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耐震補強工事予算は、小学校同様に校舎においては全く組まれていません。 付属池田小学校の痛ましい事件の教訓は、多くの安全対策の課題を教育関係者と社会になげかけるものでしたが、フェンス関係の予算がほとんどゼロであることは、教育委員会の安全管理の認識の実態を自ら明らかにしています。 |
補修工事費急増だが |
校舎等補修工事費は、幼稚園分も含めると12億円を超えるかつてない水準になっている。しかし、ここ数年で倍額になったとしても膨大な老朽化した施設整備の更新にすら追いつけていないのが、実態です。とりわけ千里ニュータウンの学校では、今年から創立40年を迎える学校が出始めるように老朽化が進行しています。鉄筋コンクリートの耐用年数と言われる60年の中間には、給排水管の更新や電気設備などの更新を行わなければなりませんが、10年前の大改修では、予算不足のために屋上防水、外壁塗装、一部の鉄製サッシのアルミ化等が中心になってしまい、大部分の設備の更新は見送られました。そのため、今になってガス管を入れ替えなければならなかったり、建具の更新が行われる結果になったのです。職員室改修やトイレの改修もそうです。 |
吹田の整備の特徴は、全体の整備項目と目標を設定し5〜6年で整備を進めるというものです。職員室と校長室のエアコン整備、職員室の改修、トイレ整備、中学校での相談室整備などがそうです。しかし、この一律整備のやり方の問題点は、それぞれの学校施設の問題点改善を明らかにした整備計画を立案しないで、全体計画を無理矢理課題の違う学校に適用するもので、これまでの逐次整備が抱えてきた問題点を再生産するだけです。 建具の入れ替え工事にしても、これまで増築の度に違うメーカーの違う規格を施工してきたために、ひどい場合は5,6種類が同一校で混在するケースが多く見られます。 規格統一の無いままの施設設備の更新は、学校現場での営繕・維持管理作業を複雑で能率を低下させるだけでなく、管理コストの上昇を招きます。市独時の規格を定め、継続した大型発注のメリットを生かし、施工費も低減させている他市の経験を早急に実現する必要があります。 |
青山台中学からスタートしたトイレの改修事業は、この年度だけでも小・中学校併せて2億円以上の予算が使われています。6年計画で学校のトイレ総数の15〜20%を最新式のトイレに生まれ変わるようにする改修工事計画ですが、給排水管が補修のためにさわることすら出来ない40年が経過した学校と20数年の学校を同列において一律整備すること自体に問題があります。校舎全体が老朽化しているのに、数千万円のお金をかけてなぜ一部のトイレだけを最新設備にしなければならないのでしょう。1階トイレは対象とせず、2、3階のトイレを整備するというのも不思議な話です。 池田小学校事件を契機に導入されることになった学校にモニター付きインターホーンを設置する計画でも、正門に設置しょうとする教育委員会と裏門に設置したいとする学校側の要望がすれ違うこともありました。 |