子ども達にも住民にも大切です珍しい開放廊下型校舎など長期的な営繕計画の欠如と財政当局の罪長期低落傾向の学校教育予算学校を支える教諭以外の職員

安全で快適な教育環境とは

 

明治に生まれ地域の
  中心になった学校

明治に始まった近代日本の教育制度は、120年の歴史を迎えましたが、封建体制から日本を近代国家に生まれ変わる上で、大きな役割を果たしました。
 確かに歴史の事実は、明治の国家体制が天皇中心の国家観を作り上げる中心的な役割を教育が果たし、第二次大戦の500万人を超える国民の犠牲 に結びついたことも教えています。
 その歴史の悲劇のあまり、近代日本の礎を築いた全てを否定することは本当の教訓を導き出すことにはなりません。
 長野県松本市に残された明治時代の校舎を見学すれば、その時代に整備された学校施設は、明治時代にはその地域の最も近代的で大きな建築物でした。
 ガラス窓、洋風建築、ストーブを使った暖房、机とイスの採用など、当時の日本の生活様式からは何十年も進んだものでした。時代を抜け出た施設が子どもたちの教育環境として整備されていったのです。
 今で言うところの近代的な会議施設のような学校に通ったのです。学校は、自然に地域の住民にとって文化的にも精神的にも中心的な存在になっていったのです。
 展示されている実際に使用された教材も、明治の創生期には当時の教育者が直接ヨーロッパに赴き手に入れたものや、その模倣品など一地方の学校でありながら、新時代を担う子どもたちの教育にかけた先駆者の精神が伝わるものです。
 資料では、その学校の建設に当時の松本県の年間予算の半額が充てられました。
 現在の学校行事の運動会の原型が、すでに行われていました。




 20世紀を前に創られた
   公立学校


長野県松本市・旧開智学校(現在は、博物館)
昭和38年まで90年間学校として使われました

 幕藩体制から明治体制に移行する黎明期の日本の学校教育は、藩校・寺子屋体制から全国的な統一制度創設への急速な移行を短時日の内に行うものでした。
 当初、教育を重視する藩体制の下で発足した自治体では、来る時代の人材育成の意気込み を学校施設の建設に見いだしました。お城、寺院に次ぐ大型建築物でありながら、西洋生活様式を大胆に取り入れたものが全国各地に生まれました。


博物図の写真

博物誌 松本市博物館・蔵



 痛感した
  教育行政マンの不足

教育改革を言うときに、子どもたちに与えるものは本当に多くのものを含んでいなければなりません。私たちは、教育環境の問題を考えるために、学校現場に働くものとして、専門外の教育にかかわる分野の勉強をしてきましたが、そこで痛切に感じたのは、学校現場の抱える問題に精通した教育行政に携わる専門家の決定的な不足です。
  教育環境の専門的知識を持たないで(知っているのに?)、国、都道府県の指導や指示、つまり補助金行政と言われるその時々の流れに沿うことばかりを重視し、自らのプランを持たない事務執行の姿が、いかに多いかと言う点です。
 大阪大学・人間科学部の小野田教授の指摘は、建築家の手による新しい学校建築が各地で生まれていながら、教育の専門家によるその検証は十分ではなく、参考になる研究・報告はありません。
 私たちは教育現場の声に耳を傾けながら長期の課題を見据えた施策を進める自治体が全国に散在することを知りました。

 現実から乖離した
  教育基本法「改正」論

 教育を巡る多くの課題は、「人格の完成」を目的に掲げた教育基本法が制定後一貫してその精神から遠のく施策が国、自治体の教育行政において行われ、日本の教育を歪めてきた「受験戦争」の弊害と深く結びついています。
 成長期にある児童・生徒は時代を鏡のように映しながら人間形成に影響を受けるものです。社会が人間の尊厳や人権を軽視し、社会的責任をなげうった企業論理が横行し、その波は児童・生徒の生活圏である地域と家庭を直撃し、深刻な影響を及ぼしています。
 この現状を直視し、人間としての成長を支えるのが教育の役割であるはずですが、「改革」「改正」の名の下に審議会や委員会で生み出される「回答」は、株式会社の学校設立などに典型的に見られる効率や人材を謳う 企業論理を教育の場に持ち込むもので、事態をさらに悪化させる危険性を含んでいます。
 成長期にある児童・生徒は、地域社会でも学校でも多くの人々との交流無しには総合的な人間発達が実現されません。 高校・大学への進学に当たり、特定教科の成績の善し悪しだけを評価の基準としてしまう現在の受験システム。
 
そのために勉強以外の社会的教育の時間を失った児童・生徒のありのままの状態に手を付けない「改革」論は、事態をさらに深刻なものにすると言わねばなりません。
 まして、教育の国家統制の強化を盛り込み、「愛国心」という価値観の強制を滲ませる「改正案」。
 国会において自民党・公明党が成立させようとする教育基本法「改正」の動きは、あまりに拙速であり国民が切実に改善を望む大きな課題を、上からの号令で無理矢理解決しようとするもので、教育の現場を混乱させるものと言わなければなりません。
 
教育基本法の精神に照らした教育行政が本当に実現されていないことは、教育環境作りの面だけを見ても明らかであるのに、三位一体の改革の中で国の予算を削減し自治体財政による格差を容認しながら教育基本法のどこを変えるというのでしょうか。
 今一度、国民のみなさんが補則も含めて11条の簡潔な教育基本法を、是非読んで頂くことを願います。

    教育基本法へ

 

公教育の創世期には、学校教育環境は時代の先端ともいえる水準で整備されていました。

 

開智学校の新築当時、フランスから輸入して使われたステンドグラス
松本博物館・蔵

木曾の木工制作技術により生み出されました 

明治時代から使われていた児童用机・イス 松本市博物館・蔵

教育環境整備でも自治体格差広がる
  地方財政危機が追い打ち

教育政策の中で教育施設整備が
重視されているか

 市町村教育委員会が、自治体の学校設置者としての方針に大きな影響を与えることは、言うまでもありませんが、実際は教育委員会の独立性は予算編成などでは、守られていないのが実態です。
 自治体が公共事業として学校教育施設整備を位置づけると同時に、自治体としての街作り、村作りと教育施設整備事業を結びつける 政策が採られることが、大切になっています。(「子どもを安心して育てられる街づくり」等)
 阪神・淡路大震災から復興に取り組んできた神戸市等の例を見ても、21世紀にふさわしい教育環境整備の課題と新たに求められる地域とのつながりを生み出していく課題を統合した政策の一貫性が明らかです。各教育委員会が発行する各市の教育政策を知らせる冊子が毎年出されますが、その中で教育施設整備についての項目をどのように持っているかが分かります。
 残念ながら、吹田市では教育施設に関する項目は一時期全く見られなくなることもありました。教育委員会の施設整備指針や中・長期の計画が示されているか是非市民のみなさんがご自分でご確認下さい。PTAの役員をされている方は、学校でご覧になることが出来ます。また、市の図書館でも行政資料コーナーには必ずあります。


 

長期的計画・政策のない自治体は


自治体財政危機が叫ばれる現在、自治体財産の大きな部分を占める学校教育施設は、人口急増期に建設された25年を超える老朽化したものが増えています。
 児童生徒数の減少だけを捉えて教育財政の先細り現象を当たり前のように受け止める議論がありますが、建築物は良好な維持管理を不断に行うことが必要であり、経年変化による維持管理予算の在り方は、建設省大臣官房官庁営繕課が示しています。
 建物のライフサイクルに応じて良好な維持管理のためには、竣工後から5年、5〜10年、10〜15年、15〜20年の1u当たり変動する改修工事単価をかける必要を述べています。
 建物の耐久性を高める施工を行っていたとしても、このような計画無しには、将来における大きな財政負担をもたらす教育施設の荒廃は避けられません。また、長期的なしっかりとした計画なしにやみくもにお金を投入することは、効果が乏しいばかりでなく問題の再生産につながる危険さえあります。
 また、学校が複合的な施設として本格的に整備され、町の中心施設として生まれ変わる事例が全国から報告されています。(りんくぺーじから三春町学校建築を訪ねて下さい。)

 
   
 

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