文部科学省が2002年から取り組んだ全国公立学校施設の耐震化促進のための取り組みは、8年間の成果として、耐震診断は98%に達し、耐震補強工事の進捗により耐震化率は73.3%になりました。
1995年の阪神・淡路大震災後、長期にわたり学校施設の耐震化に取り組んだ自治体では、耐震改修工事と大規模改修工事を合わせて行って来ましたが、ここ数年の短期間に急速な学校耐震化を急いだ自治体では、耐震工事のみを行い、老朽化が一層進行しています。
1981年以前の旧基準による学校施設を60%以上保有する都府県は、15ありました。数千の棟数を抱えながら、現在90%前後の耐震化率を達成している東京都、神奈川県、静岡県、愛知県などでは、長期にわたって学校耐震化を重要政策として位置づけ、取り組んできました。そのため、耐震化にあたり大規模改造工事を同時に行う相当規模の工事を時間と予算をかけてきました。
耐震診断の結果、一定基準に照らして建て替える判断を行うなど、ライフサイクルコストを考えた整備計画を持った学校施設の安全対策を進める自治体が、これらの都県では多く見られます。
それに反して、耐震化だけの課題に追われ、本来の良好な教育環境形成をどう図るかの施策が欠けたままの自治体が見受けられます。
吹田市の事例を見ると、2007年頃までの学校体育館耐震工事では、新築と間違えるほどの大規模改造工事が行われていましたが、2008年に行われた学校耐震工事では、何処を工事したのか判らないという違いがあります。
2010年4月調査結果
全国最大の56年以前建築の校舎をかかえる大阪府(5342棟)は、ようやく73.3%となりました。緊急の課題として、子どもの安全を最優先に置き、耐震化を急ぐことを私たちも求めてきましたが、急速な取り組みの中に、本来建て替え工事とすべき施設をむりやり耐震工事の対象にしているケースが心配です。
各市が一斉に取り組んでも、大阪府下の処理件数は限られ、国の補助予算も年間4,000棟程度の枠しか無く、大阪府だけで500棟分を確保するのが限界点と言われます。
全国30,000棟を5年で終えるには、今のペースでは足りません。
学校施設の地震対策の遅れは、子ども達の安全に直結するだけでなく、教育の場を失い、地域のコミュニィを失い、地域の防災拠点としての学校の機能を失うことになります。
一次避難所に指定される過半数が学校であるということを考えると、大規模改修にあたり防災機能の強化という観点からの設備整備も必要です。
大震災から復校した神戸市、芦屋市等の例を見ると太陽光発電の導入、災害時給水施設、災害時のトイレ転用が出来る下水道設備(簡易トイレに転用できるマンホール)などが、学校、公園などの公共施設にみることができます。
千里ニュータウンの学校は、1,2階建ての校舎が多く、耐震工事は少ない個所で良いのではという希望的観測がありました。
古江台小学校は、北千里小学校の廃校に伴う美装工事を2008年度に行いましたが、耐震診断の結果は想定外の工事となりました。
2010年夏に行われた耐震工事は、1階地中梁の補強工事と柱の増築(右 写真)と桁行き方向の揺れに対応するための1,2階を通す耐震壁の増築が行われることになりました。
廊下に面する教室のサッシが全て取り去られ、行われました。