トップページ  病気の解説  手術の説明  くすりの説明  その他

  ● 頚椎前方除圧固定術●
   
  ● ページの内容 ●
 頚椎前方除圧固定術について解説します。この手術法は首を切開して頚椎を展開し、椎体と椎間板を削ってゆくことで脊柱管へ到達します。神経の圧迫を取り除いた後に削った部分に骨移植を行い、さらに金属インプラントを設置することで安定化させます。
   
■ 頚椎症に対して行う場合
  下の図は手術手順の概略を示しています。
1. 頚椎症で神経が圧迫された状態
2. 手術で椎体と椎間板を削った状態
3. 削った椎体に再度骨を移植して、さらにインプラントで固定した状態
   
   実際の症例で除圧部分を下の図に示します。
   ■ 症例の提示
   この方法での手術症例を紹介します。症例は60歳代の女性で半年前からの左肩から腕にかけてのしびれ感と痛みがあります。肩凝り感がつづいています。左肩から腕にかけて冷たくてしびれた感じがあり、体の左を下にして寝るとこの部分が痛くなってきて眠られません。左腕の後ろ側の皮膚はしびれが切れたような感じがあり触ると違和感があります。左中指とくすり指はピリピリとしびれています。左腕の力と握力は落ちています。診察で頚椎症と考えられ、他に原因となりそうな病気の既往や職歴などはありません。
   
   手術は上の図のように、第5頚椎を削る方法での前方除圧固定術となりました。手術後のレントゲン写真で白く写っているのが金属のインプラント。右写真がインプラントを紹介するパンフレットの表紙です。インプラントのネジのところで骨にしっかりと固定されます。骨の並びが矯正されて首の格好が良くなっています。手術後のCTで削られた骨のところと移植した骨がわかります。白く写っているのはインプラントです。
   
   上の図は手術後のレントゲン・CT・MRI検査の結果です。手術では手術用顕微鏡で見ながら骨と椎間板を除去していきます。計画どおりにできているかをCTで確認します。右上図で十分な幅で骨が削られていいることがわかります。右下のMRIでは前方から骨と椎間板を除去したことで神経のスペース(脊柱管)が広がって脊髄がふくらみ、まわりに十分な余裕ができていることがわかります。
   ■ 手術の効果と手術後の経過
    手術直後から左腕の痛みはなくなりました。頚椎のカラーで首を保護して手術後1週間以内には病院の中を歩けるようになりました。切開した首の痛みはあまりありません。ただし、移植骨を採取した腸骨部(骨盤の骨でよこにでっぱった部分)は、おなかに力を入れたり太ももに力を入れたときに引っ張れた痛みが2週間程ありました。移植骨が安定していることが確認できる1月から1月半程度まではカラーをつけて大事をとります。神経はよく回復して、以前と同じようにピアノが弾けるようになりました。