実
n次元数ベクトルが基底とならないことの十分条件の証明
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(舞台設定)
R:実数体(実数をすべて集めた集合)
Rn:実n次元数ベクトル空間
+:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているベクトルの加法
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:実n次元数ベクトル空間Rnにおいて定義されているスカラー乗法
v1, v2, …, vl:l個の実n次元数ベクトル。
具体的に書くと、i=1,2,…, lにたいして、vi1, vi2, …, vin∈Rとして、vi=( vi1, vi2, …, vin )
したがって、v1, v2, …, vl ∈Rn 。
なお、個数lが有限個であることに注意。
(
定理)
実n次元数ベクトルv1, v2, …, vl の個数lがnより少ないならば、
v1, v2, …, vlが一次従属の場合もあれば一次独立の場合もありえる。
もし、ここで、v1, v2, …, vlが一次独立だとしても
v1, v2, …, vlは、l<nである限り、Rn の基底になりえない。
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(証明) [永田『理系のための線形代数の基礎』定理1.2.4(p.14);]
一次独立な実n次元数ベクトルv1, v2, …, vlが、基底の定義を満たすには、
条件P1:v1, v2, …, vlは一次独立。
条件P2:v1, v2, …, vlの一次結合として、Rn に属す「任意の」実n次元数ベクトルを表せること。
( ∀v ∈Rn ) ( ∃a1, a2, …, al ∈R) ( v =a1u1+a2u2+…+alul )
が満たされねばならない。
しかし、l<nならば、条件P2を満たすことは不可能である。
v1, v2, …, vlの一次結合としては表し得ない「Rからつくった実n次元数ベクトル」があることは、
次の点について考えてみると判然とする。
|Rn の単位ベクトルは、いつでもn個ある。
|また、Rn の単位ベクトルは、いつでも一次独立である。(∵)
|つまり、Rn には、一次独立なn個の実n次元数ベクトルが、単位ベクトルを実例として存在している。
|ところが、
|l < nという設定下で、v1, v2, …, vlの一次結合をn個つくると、
|このn個の「v1, v2, …, vlの一次結合」は一次従属にしかならない。(∵)
|「v1, v2, …, vlの一次結合」としてあらわしうる、一次独立なベクトルの個数は、l以下である。(∵)
|したがって、
|単位ベクトルを実例とする、一次独立なn個の実n次元数ベクトルを、
| 「v1, v2, …, vlの一次結合」として表そうとしても、
|表せない(n−l)個のベクトルが存在することになる。
したがって、「Rからつくった実n次元数ベクトル」v1, v2, …, vl の個数lがnより少ないケースにおいては、
たとえ、v1, v2, …, vlが一次独立だとしても
v1, v2, …, vlは、Rn の基底になりえない。
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