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わが町の歴史・八王子
(村上 直/沼 謙吉他 文一総合出版 昭和54年)

 1 あとがき

一章 原始・古代の八王子
二章 中世の八王子
三章 近世前期の八王子
四章 近世後期の八王子
五章 明治時代の八王子
六章 激動の大正・昭和時代
七章 戦後の発展・学園都市へ
付録 略年表など

編著者紹介
村上 直(むらかみ・ただし)
沼 謙吉(ぬま・けんきち)
樋口豊治(ひぐち・とよじ)
服部敬史(はっとり・けいし)
馬場憲一(ばば・けんいち)

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 東京の都心から西へ約四〇キロ、美しい山なみをバックに、なだらかな丘陵に囲まれた都市、これが約一八八平方キロメートルの面積をもつ、都下最大の都市八王子市である。
 市の西部には、関東における屈指の山岳仏教の霊地である高尾山や陣馬山がつづく関東山地がある。
 そこから幾筋もの丘陵が東へ突出し、さらにその間に南浅川・北浅川・谷地川・川口川・湯殿川・大栗川の諸川が東流し、そして扇状地状の八王子盆地や、平地が屐開している。
 八王子の歴史は占い。八王子のあけぼのともいえる旧石器時代から脈々として地域の歴史が繰り広げられている。
 古代から中世にかけては横山党が活躍し、戦国の乱世では滝山城や八王子城が大きな役割を果した。
 近世では八王子千人同心や八王子代官が在住し、宿場・在郷町として地方行政や文化の重要な拠点となった。
 また幕末の開港により、絹の道と八王子機業の発達、そして近代の夜明けを告げる自由民権運動など。
 こうしてみると八王子の歴史は、多摩地域の中心であるとともに、まさに日本の歴史の発展のあとを具体的に示しているといえるのである。
 八王子市に私か親しみをもつようになったのは、昭和一九年頃からである。つまり八王子市が戦災にあう以前、学徒勤労動員のため富士森公園の付近で働いたときからである。
 そして終戦後、私は多摩に七年間在住したが、そのときから八王子の歴史に深い関心をよせるようになった。
 それを一層育てていただいたのは、昭和三〇年代から多摩文化研究会を主催されていた鈴本龍二氏であった。
 鈴木氏によって八王子を中心とした『多摩文化』が刊行され、私はそこで多くのすぐれた地方史の研究者の方々に接することができた。
 もちろん、そのなかに沼謙吉・樋口豊治の両氏もいた。
 監修者の豊田武先生、また文一総合出版の鈴木幹三氏から『わが町の歴史八王子』の出版についての話があったとき、早速、沼氏に会って相談をしてみた。
 そして、沼氏の快諾を得て、樋口氏と新進気鋭の服部敬史・馬場憲一の両氏に参加を願い、執筆にとりかかることになったのである。
 しかしながら、八王子には、佐藤孝太郎氏の『八王戸物語』をはじめ、すぐれた数多い研究業績がある。
 これをすべて吸収して一書にまとめることは、紙幅の制限もあってきわめて難かしい。
  そのため意外に長い日時を経過してしまった。
 けれども、ようやくここに本書の刊行をみることになったのは、何といっても嬉しい。

 執筆者の分担は次の通りである。
  一章 原始・古代の八王子……………服部敬史
  二章 中世の八王子…………………樋口豊治
  三章 近世前期の八王子……村上 直/樋口豊治
  四章 近世後期の八王子……………馬場憲一
  五章 明治時代の八王子……………沼 謙吉
  六章 激動の大正・昭和前期…………沼 謙吉
  七章 戦後の発展・学園都市゛…村上 直/沼 謙吉
 なお、全体のまとめを村上が行なった。
 八王子は、緑の美しい自然に恵まれ、史跡の多い都市である。
 しかし近年は急増する宅地造成、百貨店や大型スーパーの進出、学園地帯の拡張など、今やかっての溪口実落としての町から、近代都市へと大きく変貌しつつある。
 そしてそれだけに環境保全や公告防止などの大きな課題もかかえでいる。
 本書がこうした八王子の歴史の移り変りや地域的特性を理解していくための一助ともなれば執筆者としても望外の喜びである。
 刊行に当ってば、八王子市郷土資料餡の方々、また、文一総合出版の村田火氏には随分お世話になった。
 ここに記して謝意を表するしだいである。

         昭和五十四年十一月     村上 直

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