飛騨牛とうなぎの偽装による爪痕 ( 安全・安心のイメージ #10 )


・ 2008年6月
岐阜県養老町の大手食肉卸販売業 丸明(まるあき) が基準に満たない肉を「飛騨牛」と偽装表示して販売。
ここでいう飛騨牛の定義なのだが、肉質等級3等級以上、岐阜県で14ヶ月以上肥育というものである。
肉質等級なんて一般の消費者はあまり気にしたこともなかったのかもしれないが、今回のニュース報道等でワイドショー番組を中心にかなり詳しく解説されていたので、一気に認知度は高まったのかもしれない。
とても判りやすく言うと、数字が大きくなるほど良いお肉と言うこと。
等級は1〜5までの5段階で表示され、その格付けは 社団法人 日本食肉格付協会 が行っている。3等級がいわゆる標準品であり、5等級ともなれば、庶民にはなかなか手が出ないほどの極上品となる。
逆に2等級1等級なんて、市場にはあまり流通しないほどの程度の低い肉となる。

どのように食肉が格付けされるのかというと、これが結構複雑で難しい。
まずは歩留まりで A・B・C の3段階に評価される。
歩留まりとは、枝肉重量に対する部分肉重量の割合を示した等級のことなのであるが、要は元々の重量に対して、製品(商品)となる割合が多いかどうかという話である。Aがいちばん評価が高く、Cが最も悪い。

次に肉質等級の決め方であるが、以下の4項目のそれぞれ すべてにおいて5段階評価し、4項目の中で最も低い等級のついたものをその肉の肉質等級とする事となっている。
4項目とは以下の通り。
1.脂肪交雑
2.肉の色沢
3.肉の締まり及びきめ
4.脂肪の色沢と質

( 詳しい図解入りの説明は (社)日本食肉格付協会 の 取引規格 > 規格の説明 >肉質等級 を参照してください。)

一般的には サシ と呼ばれる霜降り度合いだけが注意を集めがちだが、実は総合的に肉の格付けは行われていたのである。

飛騨牛の定義は、実は平成14年12月に変更になっており、それ以前は格付け5等級のものしか飛騨牛という名前を使うことが出来なかったのであるが、これ以降は3・4・5等級のものが飛騨牛という名前を使っても良いことと 緩和されている。
平成13年9月に日本国内で初の狂牛病の症例が確認されてからというもの、食肉・畜肉業界は大きな痛手を負っており、生産農家が減少し、産業自体の存続をも危ぶまれる事態になったことからの措置と推測される。


・ 2008年6月
うなぎ輸入販売会社 魚秀(うおひで)と 水産物卸売会社 神港魚類 が、中国産のウナギのかば焼きを「三河一色産」と産地偽装して販売。

日本国内のうなぎの産地として、いわゆるブランド化されているのは、浜名湖と三河一色だろうか。
うなぎはもともと難しい要素をたくさん抱えていた。
100%の養殖はまだ難しいし、100%の天然物の流通もこれまた難しいのである。
更には、小売りの表示を規制する法律も消費者のニーズに行政が追いついていない状態で、出生と養殖の国籍が異なってもそれをしっかり取り締まる法律が整備されていないことを問題視する声も少なくないと俺は認識している。

あさり等他の海産物でもかなり指摘されてはいるが、一生を特定の1つの国籍で過ごすわけではない商品に対してのきちんとした法律の整備が追いついていないのが、1つの問題であると言わざるを得ない。
里帰りだとか言われても、それがどういう事なのかもっと判りやすくしなきゃ駄目と言うこと。
現在のJAS法では、最も長く生育した地域が原産地としても良いことから、日本で育てた幼魚を暖かい台湾などへ運んで短期間で成魚に仕上げ逆輸入しても合法的に国産と表示していたことが、今の問題。

消費者が求めることに対して、法律が追いついていない。
法律で帰省されていないから、ぎりぎりのきわどい違反をする。
消費者の国産志向に答える為に、供給量を追いつかせる為に違反をする。
どれも全部間違っていることは明らか。

その場しのぎの目先だけの商売はやめにして、業界も消費者もきちんと納得の出来る関係を気付いていかなければならないことは、誰にだって判っているはず。


最後にとても判りやすい実話。
ギフト市場の話。

お中元とかお歳暮とか、お世話になった方へ贈る商品の売れ行きの話。
今回偽装に利用された 三河一色産のうなぎはまったく売れていないどころか、既に契約をいただいていた話もキャンセルの続出。そりゃあそうでしょう。気持ちを贈る為のギフトに、何かしら問題のあるような物は贈れないでしょう。

見栄っ張りな人が多いと言うこと。
安くて品質の良い物を求める人がいることも事実。
疑わしい物をギフトに選ぶことが出来ない人が多いいることも事実。

小売の現場に置いては、安くて品質の良いもの、ブランドにこだわってお買い求め頂けるお客様が多いことも事実。

「どれも全部 疑わしいわよね〜」 とか わざわざ声を大にして言うな。
「これ本当に大丈夫!?」 って 毎回毎回 聞くな。

面倒くさい。


2008.7.9.
2012.3.25. (タイトルを修正。)



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