マザーグース

Mother Goose 伝承童謡のおばさん

いつおぼえた歌ですか?

 ♪ずいずいずっころばしごまみそずい…
 いつどこで誰からこの歌を習ったのだろう。意味もわからないままおぼえたいくつもの歌。マザーグースの歌は、
アメリカ人にとってそんな歌だ。
 ♪Mary had a little lamb (メリーさんの羊…)
 子どもたちは歌いながら駆け回り、まりをつき、 子守りをし、なぞなぞを出し合った。
 バーチャル・メディア時代の子どもはマザーグースの歌を歌うのだろうか。

掲載:NHKラジオ英会話入門2000年6月号表4

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参考資料

"The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes (Oxford Dictionary of Nusery Rhymes"

Iona and Peter Opie(ed.), Oxford University Press, 1983

 1951年刊のイギリス童謡集の集大成。550篇の歌は、その歌の主題のABC順に並べられ、それぞれに細かい解説がついています。編者のオーピー夫妻は、マザーグースではなく、ナーサリー・ライムということばを使っています。おおざっぱに言って、イギリスはナーサリーライム、アメリカはマザーグースと言うことが多いようです。

"The Puffin Book of Nursery Rhymes"

Iona and Peter Opie(ed.), Cahners Business Information, Inc., 1985

 オーピー夫妻によるパフィン・ブック版の童謡集。"The Oxford Dictionary of …"と違って、解説はつかず歌だけが並んでいるという形式です。かわいいイラストもたくさん付いていて、親しみやすい本になっています。個人的なことですが、最初に読んだマザーグース本がこれだったので、わたしにとっては特に愛着がある一冊なのです。

"The Annotated Mother Goose"

William and Cecil Baring-Gould(ed.), The World Publishing Company, 1967

 イギリスの代表的マザーグース本がオーピー夫妻の"The Oxford Dictionary of Nursery Rhymes"なら、アメリカのそれはベアリン・グールド夫妻のこの本であるようです。全体は18章に分かれていて、1章の「マザーグースの全て」と18章の「マザーグースの将来」以外の、2章から17章までが歌の紹介とその注釈となっています。全部で880編あまりの歌を収録。著者のウィリアム・ベアリン・グールドは、シャーロック・ホームズの研究家としても有名で、"The Annotated Sherlock Holmes"といった著書もあるようです。
 なお、この本は2003年に翻訳が出ました。日本語で読めるのはありがたいものの、原詩が載っていないというのは、こういう本としては大きな欠陥ではないかと思いました。
『完訳 マザーグース』ウイリアム・S・ベアリン・グールド、セシル・ベアリン・グールド(編)、鳥影社、2003

 

『マザー・グースの唄』

平野敬一著、(中央公論社、1985)

 前半は、マザーグースに関係する2つの歴史が語られます。ひとつは、日本に紹介されてきた歴史。もうひとつは、イギリスにおいて童謡がどう集成されてきたかが、18世紀から20世紀まで3つの本を通して語られます。後半は、代表的な童謡をとりあげ、その背景などが解説されます。単なる語句解説に終わらず、日本語訳なども交えながら著者の考えが展開されているのがおもしろいところです。

『マザー・グースの世界:伝承童謡の周辺』

平野敬一著(英語教育協議会、1982)

 同じ著者の『マザー・グースの唄』が公式見解なら、こちらの方は私的見解という感じでししょう。歌の紹介とその解説というより、マザーグースをめぐるエッセイと研究論文の中間という感じです。これらの歌は、「向こうの文化」ではありますが、それをなるべく自分に引き寄せて、しかも研究者としての視点を失わず語りきっています。一通りマザーグースを知っていると、一層おもしろく読める本です。

『マザーグースの英国』

藤野紀男著(朝日イブニングニュース社、1985)

 マザーグースの歌をいくつかのテーマに分類し、解説をつけた本です。「人」と「場所」に大きく二分したあと、「人」の部では「国王たち」、「史実」、「伝説」、「謎解き」を扱った歌を紹介し、「場所」の部では、ロンドン、イングランド南部・中部・北部、スコットランドの歌を集めています。

『マザー・グースの誕生』

鈴木一博著(社会思想社、1986)

 マザーグース本はたいてい、歌の紹介とその解説・うんちくという形式でできています。これもそうした一冊。ここでは、イギリスの歴史に関係する歌と、自然や風俗に関する歌が集められています。冒頭にマザーグースの歌に登場する地名を示した地図が出ていますが、これはイギリスの地理に精通していない者としては便利だなと感じました。

『まざあ・ぐうす』

北原白秋(訳)、角川書店、1976


『マザー・グースのうた(全4冊)』

谷川俊太郎(訳)、堀内誠一(イラスト)(草思社、1975)

 マザーグースの日本語訳はたくさん出ていますが、日本を代表する詩人2人による訳本をあげておきます。
 北原白秋訳は、大正9年から雑誌に発表され始め、大正10年(1921年)に刊行されたものだそうです。やっぱり白秋だなあと思わせる、良い意味でもそうでない意味でも、個性的な訳です。
 谷川俊太郎訳は、年から刊行されベストセラーになりました。一時マザーグース・ブームを起こした本です。とてもさらっと訳した感じのかわいた訳です。
 両者を比べると、ことばは時代によって変わるというあたり前のことを、あらためて痛感します。大きな違いは、リズム感の違いでしょう。同じ童謡の訳を並べてみます。

(白秋訳) 額のまんなかに、きらきらちぢらした
ちいさなまきげの、
ちいさなおじょっちゃん、
ごきげんいいときゃ、
それはそれはいい子で、
おわるいときにはこォわい子。ソレ、こォわい子。

(谷川訳)
ちいさなむすめがいたってさ
おでこのまんなかかわいいまきげ
いいこのときはとてもとてもいいこ
だけどわるいこのときはぞっとする

 

 

更新情報

2012年5月19日
冊子・広報誌(六弦堂の仕事2)に、今年作ったもの2点を加えました。
2012年5月1日
六弦堂ページをリニューアルしました。
2012年1月4日
プレイ・ザ・スラッキー・ギターに「ビデオ(教則)」を加えました。
2011年12月26日
六弦堂ページをアップロードしました。

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参考文献

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アメリア・イヤハート(*)
アメリゴ・ヴェスプッチ
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