転身する

 

 

 本来は梅雨という、優れない天気が続いてもおかしくない時期である。だが、1999年6月12・13日は、雨の降り出す気配のない、朝から会場前に長い列を作るには支障のない二日間であった。

 この両日は、「第10回次世代ワールドホビーフェア」が幕張メッセで行われ、我々ゾイドファンは、近い将来復活するゾイドがどのような形での復活になるのか、メディアの中だけではなく、初めて実物をまじえて、実感する機会となった。当然のごとく、惑星政府も視察団を送り込む事になる。

 

 会場は、いつものゲームショーとは違う、その正面にある幾分小振りな建物であった。原則として小学館とからみのある企業のみの参加のためなのか、参加企業数からして、これでも十分のスペースのショーであるといえる。

 こうした大きなイベントには必ずトミーが持ち込む丸いバルーンはここでも健在。視察団は、入場後すぐにこれを探すことになるのである。幸いにも、今回は入り口からそれほど離れていないところにブースは設けられていた。

 バルーンの下に位置するトミーブース。いわゆるブース正面は、昨年アメリカで人気が沸騰したファービーと、トミーが並行輸入する事になったスターウォーズがメインとなる作りになっており、ゾイドのかけらは感じられるモノではなかった。また、いわゆるブース中にあるメインの物販コーナーには、ポケモン、ヤキューマンがところせましとならべられ、ゾイド販売はないかと思わせられてしまう。

 しかし、正面右側に回ったところに、ちゃんとゾイドのコーナーが設けられ、忘れてはならないディオラマ展開とともに新シリーズが出展されていたのである。そこでは、スタッフから、新シリーズのロゴとヘリック共和国、ガイロス帝国の新しい国旗をあしらい、旧製品のパッケージを並べたポスターともカタログともとれるパンフレットが配布されていた。

 こんな大きなレッドホーンを見ることが出来るとはと思わせられるようなブースの展開。そこには、「コロコロコミック、好評連載中!!」の文字。この時点で、マンガの連載は1回のみこの後すぐの発売でやっと2回目なのに、これは誇大広告では?と考えさせられながらも、目はその正面に移動する。旧シリーズにおいて、レッドホーンの最初のライバルとなったのは、ゴジュラス。新シリーズでもそれが意識されているのか、この大きなレッドホーンの正面には、更に大きなゴジュラスが対峙するのである。そして、そのゴジュラスに重ねられているのは、「アニメ化決定!!」の文字。いずれもゾイド再販に向け喜ばしいイベントであり、これらメディアミックスの展開であることが、ゾイド復活の条件といえ、新シリーズは最初からメディアミックスが意識された商品展開がされるであろう事を、理解させらるコーナーの作りになっていることを思い知らされた。

 とにかくブースは大にぎわい。本音、視察団は、このブースのにぎわいはまったく予想していなかった。過去数回行われたゲームショーにおけるゾイドの紹介は寂しいモノがあり、にぎわったのはゾイド本体が限定販売される物販コーナーのみという印象であった。以下の画像を見て、そんなににぎわっていないのでは? と思わないでほしい。これは、コーナーの様子が分かるようにするために、あえて人が少ない時をねらって画像におさめたものである。この先、やっと8月末に発売される新商品にこれだけの子供達が集まることに、既に先行して発表されているコロコロコミックというメディアの後押しが、いかに力強いモノであったかを更に思い知らされたのであった。画像の中央には、モニターがある。コーナーに持ち込まれたモニターにはCGで作成されたゾイドが繰り返し流されていた。今回ここで流されていたのは、8月末に発売が決定している、コマンドウルフ、モルガ、プテラスなどであった。また、そのすぐ右側には、コロコロコミックで連載されている上山道郎氏の「機獣新世紀ゾイド」のタイトル画があることも忘れてはならない。メディアミックスは新シリーズに欠かすことの出来ない要素なのである。

 では、発売されるゾイドとは?

 ケースに収められた新シリーズをよそ目に、コーナーの一部には、ゾイドに触れることの出来るテーブルが用意されていた。全て旧シリーズの商品である。小学生の彼らの目に、ゾイドは本当に巨大に見えるであろう。今にも壊さんばかりの扱い方に、少々ヒヤリとさせられる瞬間もあったが、かつて我々パワーユーザーも好きだったゾイドを壊し、悲しい思いをしたことが思い出された。そうした事を教訓に次回はもっと大事に扱うようになったり、その壊れたゾイドを修理する目的でゾイド改造に乗り出すなど、後で思い返せばそれはステップであったかも知れない。

 トミーは、このコーナーで、小学生にスタッフが一人ずつ付いて、アンケートをとっていた。こうしたアンケートとゾイドに実際に触ってもらった様子をあわせ、彼らニュージェネレーションの目にも、輝きを与えることの出来るゾイドの魅力を、トミー自身にもっと理解してもらい、より発展的なゾイドの展開を期待したいモノである。そしてニュージェネレーションには、ゾイドの魅力を知るために、壊すまで遊び倒して、旧世代には思いもよらないアイディアをゾイドの中に吹き込んで欲しいと思わされた。

 

 このゾイドコーナーの展開で残念であったのは、ゾイドが組み立ておもちゃであるという事がすぐにもわかるような紹介がなかったことである。各種模型ショーでは、新製品がガラスの中にランナーのまま並べられると言う展示も見られのに、ゾイドがプラモデルであること、ゴムキャップを使って組み立てるという特徴がわかるようになっていなかったのは、今後の新製品の紹介として、説明不足ではないかと思われる。プラモデルといえども、これだけ完成度の高いゾイドである。ここでなり、店頭なりで動いているゾイドを見て、完成体と思ってそれを買ってかえったら組み立てなければならなかったというのは、ある意味がっかりさせることにもなりかねない。また、こうしたモノを作ることになぜかすべての母親が必ずしも理解してくれるわけでないので、

「何でこんな作れもしない難しいおもちゃを買ってくるの」

と怒られる原因にもなりかねない。これらを考慮して、コーナーには、ゾイドが組み立ておもちゃである事がわかるような展開が必要であったと思われる。

 ゾイドコーナーでは、旧シリーズの何種類かと99年春のゲームショーで発売されたテレホンカードとピンズが販売されていた。ゾイド本体は、両日とも会場から1時間もしないうちに完売したことにトミースタッフも驚いていた。98年春のゲームショーで限定生産されたダークホーンとデッドボーダーが各2000円で売られていたのはお得な買い物であった。

 

後日談 

1999/6/14掲載の報告

 

 

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ゾイドパッケージより転載