転身するゾイドは、いかなるモノか? これが我々ファンがもっとも気になるところである。次世代ホビーフェアに足を運ぶファンは、ゾイドが再販されると言う確信と、その再販の形態をいち早く知りたいのである。残念ながら会場で配布されたパンフは、旧製品のパッケージを集めたモノであったため、新製品の様子を知るに足るモノではないので、コーナーに展示されていたモノから直接その様子を知る必要がある。

 コーナーに並ぶ3つの六角形のケース。入り口を作る六角柱のように並べられていた。

 ほぼ大人の腰の高さ程度のところが台となり、その上に透明のケースが被さっている展示ケース。かつての子供達は、腰をかがめてみなければならないのであるが、ニュージェネレーションにはちょうど良い目の高さのはずである。

 メインとされていたであろう、真ん中におかれたケースの中では、ゴジュラスが専用展示台の上で目を光らせ動いていた。色は、ZOIDS2のZoidsZillaを彷彿とさせるゴジュラスである。ZoidsZillaよりもメタリック部分が増え、パワーユニットを取り囲むメインフレームまでもがメタリック仕様になっていた。ZOIDS2はメッキ仕様が一般的に言われるが、ZoidsZillaは、メッキというよりも、成形プラスチックにメタリックを織りまぜたモノであるので、このゴジュラスは最初ZoidsZillaがそのまま展示されているモノかと思わさせられた。が、良く見ると、ZoidsZillaよりも艶が消されているのか、黒めに塗られているのか、落ちついた色使いになっていた。目はオレンジ色。旧Mk-1が赤、旧Mk-2量産型が緑からすると、あまりに発光していることにストレートすぎる色選択のように感じられた。

 その足元にいるプテラス。旧プテラスよりも明るい青となった成形色であるが、メッキが使われた旧シリーズ新世紀ゾイドの頃のラインナップと比較すると、明るすぎる訳でもなく、キャラクターとしてのアピールと、ミリタリー要素のギリギリのラインとも思われる色使いといえる。

 ゴジュラスの隣に追随するのはゴルドス。ゴジュラスと同じメインフレームを持つ、ビガザウロ級の3号機体である。こちらも動いての展示であり、首を左右に振りながらの口の開閉、そしてB/Oゾイドの原点となる足の動きを十分にアピールしていた。もともとのゴルドスは、全ての成形色を黒の濃淡、要は、黒からグレーへの色の違いで表していたが、新シリーズでは、ボディーとなる部分に深緑の成形色を用いている。この選択は、黒ほど地味ではなく、かといって明るすぎる訳でもない、新しい選択と思われる。また、モチーフとなっているステゴザウルスの想像図に緑系の色が塗られていたこともあわせると、メカでありながらも、他のゾイドと比較した場合、背びれのおかげでかなりモチーフに近い形をしてみえるゴルドスに、色もモチーフに近い色にすることで、目を惹きやする狙いもあるのではないだろうか。また、アンテナという設定になっている背びれがシルバーなのは、メカらしさと設定への説得力につながっていると思われる。

 もう一つ緑色に塗られていたのは、バリゲーターである。旧シリーズでは、上面は濃い青で塗られていたが、やはりこちらもモチーフに色を近づけるという選択がされたのではないかと思われる配色である。バリゲーターの緑は、灰緑とも思える緑であり、ミリタリーモデルにでも使われていそうな、かなり濃い地味な緑である。ここで、このバリゲーターのパッケージに目を通してもらいたい。パソコンのプリンターで打ち出されたサンプルパッケージであるが、そのディオラマ写真に新しい息吹が感じられる。旧シリーズでは、砂漠など荒涼としたディオラマが主体であり、パッケージのディオラマに植物が配置されていることは少数派であった。旧シリーズでは、各ゾイドはモチーフに関係なく、その目的を達成するためにたまたま使われた生物という印象が強かった。例えばシンカー。エイ型のゾイドであるが飛行能力を持っている。ブラキオスも、水陸両用と設定されていたが、水で闘っているようなイメージを思い浮かべることが少ない運用のされかたであった。これら旧シリーズと比較して、このディオラマがそのまま新シリーズの方向性を示すのであれば、各ゾイドは、それぞれのモチーフとなる生物の住んでいる環境がそのまま戦場となり、生物の形をした兵器を戦闘に用いることの単純明快な合理的説明をして、ストーリーへの説得力を持たせようとする力が働いているのかも知れない。

 

 走るシールドライガー。正面から見て、一番左側のケースの中で動いていたゾイドである。新シリーズのシールドライガーは、旧Mk-1の色と同じ配色でありながらも、それぞれの色が濃くなっているという印象である。水色は青に、ライトグレーはダークグレーにといった感じである。やはりあの足の動きは十分に引きつけるモノがある。しかし、右側にはガイサックのパッケージがあり、左側には、レドラーのパッケージがおかれてしまっているという、囲まれ壁の間での配置だった。そのため、あの足の動きを側面から見やすいという展示方法でなかったのは残念で仕方がない。シールドライガーは、所詮サーベルタイガー二番煎じかも知れない。しかし、あの足の動きがあるからこそゾイドであり、単なるライオン型のロボットでない所以である。せっかく電池で動かしての展示であるのだから、あの足の動きがもっと見やすい展示方法をとって、ニュージェネレーションの度肝を抜いて欲しかった。

 シールドライガーが従えていると言えば、やはりコマンドウルフ。ゾイド・バトルストーリーでも編隊を組んでいたし、Mk-2時代には同時に同じ方向性を持ってアップブレードされた、よき相棒である。本会場においても、そのチームワークは十分にアピールされているようである。色は、旧タイプのグレーの部分がより明るくなったという配色であり、リアルなイメージは醸し出しているかも知れない。しかし、シールドライガーとチームを組むにあたって、旧シリーズニュータイプ時のような、配色をあわせるという方法が採られていないことは、今回は単体でのメディア展開が予定されていることを意味しているのであろうか。だが、白い部分は無色と考えれば、そこに色を塗ってカラーリングをあわせるのはユーザーに任された改造の余地ともとれるかも知れない。

 ガイサックの販売を気にしているファンは多かったであろう。コロコロコミックで新たに始まったゾイドの連載マンガで、いきなり登場したゾイドであり、再販は約束されたようなモノととられていたからである。そして、マンガからは知ることの出来ない、カラーを知ることが出来るからである。もともと、砂漠に住むサソリであり、マンガ冒頭も砂漠のシーン。デザートカラーは、一部のファンには予想されていた配色だったかも知れない。モチーフの生物の住む環境が戦場となるのであれば、不思議でない選択である。

 ガイサックを見てわかるとおり、共和国軍ゾイドのコクピットは、いずれもかなり濃いオレンジ色である。せっかくの大型キャノピーを用いたコクピットであるのだから、内部にフィギュアがのっている事がわかるようにするため、もっと色を失わせるべきではないかと思われる。

 前述の通り、シールドライガーと同じケースにはレドラーが入っていた。同じケースだからといって、帝国から共和国に編入し直されての展開というわけではない。やはり帝国サイドの機械獣である。レドラーは、旧シリーズの赤い成形色の部分が、紫になっての登場である。もともとは「レッドドラゴン」を略して「レドラー」と命名されたであろうが、そこは見逃して理解するしかない。一緒におかれていたサンプルパッケージは、雲の上を飛行するシーンとなっており、今にもジェット音の聞こえてきそうな、旧シリーズにはないスピード感のあるモノとなっているといえる。やはりこれも新シリーズに向けての方向性の一つであると考えるべきであろう。旧シリーズが本体主体であったため、ディオラマであっても、そういう形をしたおもちゃであると言うことをアピールするようなパッケージの作りになっていたが、新シリーズは展開当初からメディアミックスを完全に意識してのそういうキャラクターであることをわからせるパッケージになっている事を物語っている。つまり、おもちゃとしては絶対に飛行することの出来ないモノに、ここまでスピード感を与えているのは、メディア面から、そのゾイドの設定の補いがあることを意味していると見ることが出来るのである。

 

 3つ目のケースには、レッドホーン、モルガ、ヘルディガンナー、ブラキオスが入っていた。

 電池が入れられ動いていたレッドホーンは、旧レッドホーンよりも明るいが、旧シリーズゼネバス帝国Mk-2部隊の内部構造の赤よりも暗い赤となっていた。また、各所にすすけた汚れが施されてもいた。どうやらダークホーンに色を塗って赤くし、レッドホーンに準じた装備しかしていないようである。赤い部分の塗装が剥げて黒が見えているところがあった。実際、今回の出展において、上記のゴルドスやシールドライガーにも、塗装した上での展示というカラーはあり、全てが全て、商品としてロールアウトするものではなく、試作品、あるいはパッケージを作るために用いられた、塗り替えただけの旧製品と言えるのである。今度のレッドホーンの赤は、前述の通り明るすぎる訳でもないが、旧シリーズよりも目立つ赤になっているといえる。その意味では、店頭展示でデモを行っても十分目立つモノになったといえるかも知れない。そして、今度のレッドホーンで注目すべき点は、コクピットの透明パーツが緑になっていることである。展示品は、クリアーグリーンを塗ったであろう、濃すぎる緑であったが、製品になったときに、旧ゴジュラスMk-2量産型程度の緑であれば、なかなか見栄えのする緑になったといえよう。この、赤いボディーに緑の透明パーツという配色は、ゼブルシリーズのゼーヴァ帝国ゼブルにも行われた配色であり、トミーとしてはシリーズ自体は成功とは言いづらいモノの、とりあえずは気に入った無難な選択をしたと思われる。本体に隠れて見づらいのであるが、レッドホーンのパッケージは、コロコロコミック1999年7月号に載ったレッドホーンのディオラマが用いられている。

 すこし、驚いたのはヘルディガンナー。旧シリーズでは、販売期間が短かさを競う、シリーズ終了までもたなかった、唯一の暗黒ゾイドである。それが、今回新シリーズとして早々とラインナップに加わっているのは、見逃すことの出来ない展開である。全体的に黒いボディーに、赤いクリアパーツ。動力パイプがどうも他の帝国ゾイドと違和感を持つのは仕方ないが、赤を織り込んで、色の統一を図ろうと言う努力が見られる。

 ブラキオスは、赤の濃さが変わったとはいえ、どうしても旧シリーズニュータイプのカラーに近くなってしまっている。コロコロコミックの設定を見る限り、帝国軍に装甲があるのは当たり前のようなもっていき方になっており、それにのっとれば説明のしやすいゾイドであるので、早々とラインナップに加わえることで、帝国共和国のゾイドの違いをアピールする狙いがあると思われる。。

 旧製品が、背中の成形色が統一されていたことを考えると、新シリーズのモルガは、パワーユニット部分の成形色が異なっているのがわかる。この成形色の異っぽくなっている部分は、ZOIDS2のSlitherでメッキが使用されている部分であり、色は異なるモノの、配色のコンセプトにZOIDS2が影響していると感じさせられるのは、少々考えさせられた。だが、この反動がゾイドの塗り替えに向けられ、ひいては大幅な改造になっていくのであれば、それは大きな成果であると言える。

 

 こうしてみてくると、新シリーズの共和国軍ゾイドには、帝国ゾイドほど共和国軍としての色の統一を感じることが出来ない。共和国軍を共和国軍たらしめているのは、構造むき出しというゾイドの作りということになる。こうした、色の不統一は、ゾイドのキャラクター性を重視したための選択であろう。しかし、ここをあえて好意的にとれば、ある目的だけのゾイドを発売し、別の目的のゾイド(○○仕様)は自分で改造しろと言う遊びや改造の余地を残しているというメッセージが込められたためであると考えたい。今後のメディア展開のおいて、発売されているのとは違う色のゾイドが登場し、ニュージェネレーションに、ゾイドを改造したい、と思わせるようなメディアミックスの展開を望みたいところである。

 以上の展示されていた各ゾイドは、8月末、テレビでアニメ放送が始まる1週間前には店頭に並ぶことになる。ゴジュラス、ゴルドスは3000円。シールドライガー、レッドホーンは2000円。ハイパワーユニット搭載ゾイドは各800円。パワーユニット搭載ゾイドは、600円での販売となる。ゴルドスは据え置き、シールドライガー、旧580円シリーズは、20円のアップ、それ以外は全て安くなっての登場は、開発にかかる費用が安く済んでいる事が理由であると思える。実際、トミーの再販はこんな展開が繰り返されている。アームトロンは2度の再販のたびに価格が安くなり、サバイバーショットも安くなって1998年秋に再登場している。トミーとしては、初めてでない展開方法であり、期待していたとはいえ、ゾイドでも実現するとなると、喜びは大きなモノとなる。

 

 さて、視察団は、ここで懸念すべき予測をしなければならない。だが、この予測は、当惑星においては既に1998年末のうちに告げられていたのである。

 今回、コーナーに並んだゴジュラス。色はメッキではないモノの、メタリックシルバーであり、政府視察団は、単にZOIDS2のZoidsZillaがそのままおかれているだけかと勘違いしたのは事実である。しかし、その理由は色だけでない。ZOIDS2のZoidsZillaは、もともとゴジュラスの金型ではなく、ゴジュラスMk-2量産型の金型を使って製造されたと思われる。その理由は、背中のバッテリーケース。ゴジュラスの背中には、コクピットを光らせるための単3電池を2本内蔵するユニットが付いている。そして、このユニットのバッテリーカバーは、Mk-2仕様にする際に、長距離キャノン砲を装備するためのパイロンの付いたカバーに換装する必要があるのである。ZOIDS2のZoidsZillaには、長距離キャノン砲は付属していないが、背中の単3電池のバッテリーカバーに、このパイロンの付いたモノがそのまま使用されていたのである。これは、ゴジュラスがMk-2になったときに金型を改修してしまい、元のパイロンの付いていないバッテリーカバーを用意できなかったことが理由であると思われる。そして、今回の新シリーズのゴジュラスは、いずれもバッテリーカバーに、長距離キャノン砲を装備するパイロンが付いたままなのである。コロコロコミックのゴジュラスは、いずれも背中のバッテリーカバーは、Mk-2のモノである。また、コーナーで大きく立て看板にされていたゴジュラスも、Mk-2のバッテリーカバーを持っている。このことは、新シリーズのゴジュラスは、旧シリーズのMk-1を純粋に焼きなおしたのではないことを意味しているといえる。

 するとここで懸念しなければならないのは、アイアンコングである。既に当惑星では、ZOIDS2のIronkongと日本版のアイアンコングで、胸の装甲パーツの違いがあることを指摘している。そして、ゾイド再販の暁に、この装甲パーツがどうなるのか、警鐘を鳴らしていた。今回、参考出展された試作品を見る限りにおいては、新シリーズは、旧ゾイドシリーズからの焼き直しではなく、ZOIDS2を経由した上での焼き直しである。もちろん時間の流れから言って、当たり前といえば当たり前なのであるが・・・・。アイアンコングは、ZOIDS2のIronkongの成形色を、上記ブラキオスに準じた配色にして再登場することが予想されるのである。新しいゾイドのマンガの始まったコロコロコミック1999年6月号の巻頭カラーのゾイド紹介の所に登場するアイアンコングは、ZOIDS2のIronkongと同じ胸の装甲パーツになっていることに気づいてもらいたい。アイアンコングについては、ZOIDS2の時に行われたであろう改修は、旧シリーズを知るファンには改悪であったと言え、この状態でのアイアンコングの再販をどこまで手放しで喜んでいいのか疑問である。いまだ、アイアンコングは、参考出品されているわけでないので、その動きはつかみようがない。しかし、再発売までの数カ月、このあいだに、旧アイアンコングと同じ装甲パーツに戻っての再登場をわずかながらでも望まずにいられない。

 

 今度の新シリーズは、明らかに当初からメディアミックスが完全に考慮されており、参考出品を見る限り、メディアで設定を補われたキャラクターおもちゃの意識がかなり強いと言える。テレビ主体のキャラクターおもちゃとしての展開は、番組終了と同時に商品展開の終了意味する。しかし、旧シリーズは、そんな短期間の展開のための商品ではなかった。オフィシャルのゾイド開発ストーリーを読む限り、メカボニカでの失敗にもめげず、ビガザウロを作り出し、帝国軍を設定してきたのがゾイドである。そんな、経緯をふまえ、旧シリーズ前半のような、本体単体での遊び方があることをどうやってアピールしていくかが、キャラクターおもちゃとしての短命で終えるか、それ以降にも続く、大河トイシリーズになっていくかの鍵となるであろう。

 コロコロコミックでは、ゾイドは「激ハードホビー」「バトルホビー」と紹介されている。この、「ホビー」であることをメディアミックスの展開の中で伝えることが出来るか、トミーの商品戦略を見逃してはいけない。もし、それが出来なければ、ゾイドは1年の短命商品で終わると予想されるからである。また、我々旧シリーズからのパワーユーザーもホビーとしてのゾイドの遊び方をニュージェネレーションに伝えることが出来るのか、これまでのゾイドとの接し方が問われるところではないであろうか。ゾイドが単なる旧製品のままの再販ではなく、新シリーズとなってよみがえったことで、旧シリーズを知る者すべてに、メーカーにもユーザーにも、今後ゾイドをどうしていくのか、大きな課題が投げかけられたと言えるであろう。 (1999/6)

 

 

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ゾイド宣伝ポスターより転載