ゴムキャップを考える。
ゾイドの特徴の一つは、接着剤を使わずに、ゴムキャップを使って組み上げていくことである。ゾイドに使われているゴムキャップは、形としては4種類、色は数種類が存在する。どのキャップが使われるかによって、各ゾイドの与える印象も異なってくる。ここでは、形にこだわってみることにする。
キャップの形については、特に名前が付いているわけではない。トミーの内部的には正式名称があったのかもしれないが、一般には知れ渡っている訳ではないので、まずはそれぞれのキャップについて便宜上名前を与えることにする。この呼称方法はゾイドの形式番号のアルファベット部分を用いることにする。
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初期のゼンマイゾイドから使用されているキャップであり、全てのゼンマイゾイドと、新世紀以降の一部の小型B/Oゾイドに使われた。当初のゼンマイゾイドの形式番号はRMZ、EMZなので、この共通部分である「M」を用いることとする。 |
ガリウス、ザットンをはじめとする580円シリーズ。ゴドス、ハンマーロックをはじめとする重装甲スペシャル。ウオディックをはじめとするハイパワーユニット搭載ゾイド。24シリーズゼンマイゾイド。 |
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ビガザウロの登場と同時に現れたキャップであり、初期の共和国軍B/Oゾイドの全てに使用された。これらゾイドの形式番号は全てRBOZである。そこでこの「B」を用いることにする。その後も、大型B/Oゾイドにのみ使用され続ける。 |
デスザウラー |
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帝国軍のレッドホーンが登場したときに初めてお目見えしたキャップ。その後、一部の例外をのぞき主に帝国、暗黒軍の中堅クラス以上のB/Oゾイドに使用され続けた。帝国ゾイドは、「E」の形式番号をもつので、これを用いることとする。帝国軍24シリーズにも使用されている。 |
レッドホーン、アイアンコング、デスピオン デッドボーダー、ギル・ベイダー シールドライガー、オルディオス |
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サラマンダーに初めて使用されたキャップ。このキャップは、24シリーズも含め、共和国軍では多用されたが、帝国軍には使用されなかった。共和国軍用のキャップなので「R」を用いることとする。 |
サラマンダー、グスタフ、ディバイソン、ガンブラスター、メガトプロス |
これぞゾイドの原点と言うべきゴムキャップ。ゾイドのタイトルロゴに使用されているキャップもこれをモチーフにしている。
円周の縦方向には溝が切ってある。そして表側にはくぼみがある。単純に球の内側のような丸いくぼみではなく、円形の底のある皿のようなくぼみとなっている。
Mキャップが全てのゼンマイゾイドに使われているのは、ゼンマイという動力源のパワーの限界から来る使用制限のようなもので、これ以上大きなキャップを使用するような大型のモノは考えられなかったのであろう。
ブラキオスでは、ウルトラザウルスやビガザウロを意識したのか、うねる首にかなりのキャップを用いている。また、スネークスでも横方向の動きのために、同じようにキャップを多用している。こんな、関節としてのキャップと見た目の骨格的なイメージを表現するというゼンマイゾイドがもう何体か出てきて欲しかった。
Mキャップは、新世紀以降、小型のB/Oゾイドにも使用されるようになる。せっかく動力としてパワーのあるモーターを用い、なおかつMキャップを使い小型化できるのであるから、サーベルタイガーのように可動関節部分に使うようなゾイドが出てきても良かったのではないかと考えてしまう。すると、サーベルタイガーより一回り小さく、そして値段も手頃なリアルな動きをするゾイドとして登場し、新世紀以降の衰退も防げたのではないかと思われる。
なお、最後のゾイドであるデスキャットに使われたのもMキャップであった。ゾイドはMキャップにはじまりMキャップに終わったと言える。
その後、このMキャップは、小型のZ-knight、24シリーズの焼き直しのゼブルにも用いられている。
人によっては、こちらこそゾイドの原点となるキャップであると感じている方もいると思われる。B/Oゾイド、ビガザウロ、マンモス、ゴジュラスが出てからやっとゾイドに興味を持った人からすると、こちらの方がよりゾイドらしいキャップであると感じるのではないだろうか。
円周には正確に四角く刻んだ溝が縦に走っている。表側はくぼみがあり、4方向から山ラインがおりている。さらにくぼみの中心からは軸がのびてきている。一見ホイールの入った歯車のように見えなくもない。ゴムという柔軟な素材にこのような彫刻をしているせいか、ホイールのような彫刻の中心軸がずれているものがあり、それもかなりの個体差がある。
ビガザウロでは、Bキャップをふんだんに用いて、首の動きを表現している。この使用方法は、かならずしもギミック部品を保持しているだけではない。左右対称の見た目をよくするため、ただ差し込んであるだけのキャップもある。また、ビガザウロ、ゴジュラスの尻尾は一切稼働しない。デザインから、同じようにキャップが差し込まれているのであるが、このキャップの用いられ方が、骨格を再現しているようにも見えなくもなく、ゾイドが単なる恐竜をモチーフにしたのではなく、恐竜の化石をモチーフにしたため、逆に動かそうとした部分は動きをしっかりと再現しなければいけなくなった理由となっていると考えられる。
当初からの予定ではなかったと思われるが、前述の理由から、Bキャップはかなり無骨なイメージがつきまとう。その意味で、中期以降の新型ゾイドを開発するにあたって、Bキャップを採用するには、単にゾイド本体の大きさだけではなく、モチーフとなる動物、そのテクニカルデータ、特徴等が加味されて選択されたと思われる。そのため、中期以降では、デスザウラー、マッドサンダー、キングゴジュラスと数えるほどにしか使用されなかった。
また、Bキャップは、帝国軍ではデスザウラーに用いられただけである。また、暗黒軍には使用されることはなかった。初期のゾイドから使われていたキャップなので、ある意味で旧式ゾイドのイメージを引きずってしまっていたのが、暗黒軍ゾイドに使われなかった理由と考えられる。もし、暗黒軍のデスバーンというゾイドが商品化されていたら、このBキャップを用いた大型ゾイドであって欲しかったと思う。すると、Bキャップの持つ無骨で旧式なイメージが合致した、暗黒大陸に古代に生息していた大型ゾイドをよみがえらせて戦闘機械獣化した、というような決戦兵器となったと思われる。
レッドホーンが登場した時から使われはじめたキャップ。
円周には角の取れた溝が縦に走っている。表側は、緩やかなドーム状をしており、直径方向に、並列に二つの溝が並んでいる。この直径方向の溝の刻み方が、足の駆動部分で、パワーユニットに直結している軸に差し込まれていると、回転していることがよくわかるので、ディスプレイモデルではないゾイドを演出することに役立ったであろう。また、緩やかなドーム状の形は、MキャップやBキャップと比較すると、露出に強く装甲が施されているイメージも与えている。帝国軍は、装甲を施したゾイドを特徴としていたので、そのイメージと合う、新しいキャップの必要から生まれたキャップであるといえる。
Eキャップは、その後アイアンコング、サーベルタイガー、ディメトロドンと使用され、デスザウラーをのぞく全ての帝国B/Oゾイドと暗黒大型B/Oゾイドに用いられた。これら使用傾向からすると、本来であれば、帝国軍ゾイド用キャップとして考えられたのではないかと思われる。
例外的に共和国軍で用いられたのはシールドライガー、シールドライガーMk−2、オルディオスの3体のみ。これらはいずれもスピードが売りになっているゾイドであり、後述するRキャップではやはり無骨であり、スピード感が生まれないことが、あえて例外をした理由ではないかと思われる。
なお、Eキャップは後述するRキャップと同じ内径となっている。
Eキャップは後のZ-knightの大型ものの全てに用いられることになる。また、ゼブルにも使用された。
サラマンダーで初めて用いられたキャップ。
Bキャップと同じように、円周には四角い溝が走っている。しかし、この溝は、歯車といえるほど細かくはなく、どちらかというと円周に沿って別のゴム板を張り付けたような印象である。表側は、溝よりも一段高さのある円がありその中心に十字に溝が切ってあり、さらにその十字の中心には穴が空いている。また、円周に沿った円の少し厚い部分にも小さな穴がくぼんでいる。このような彫刻の複雑さ、また各溝には角がついているため、内部構造がむき出しているイメージを与えている。その意味からも、帝国軍の装甲が施されているゾイドと対角にあり、メカニックなイメージを与えるキャップが作られたと思われる。
前述の通り、Rキャップはサラマンダーにはじめて用いられた。サラマンダーは両国ではじめての飛行可能の大型ゾイドである。これは設定上の話。サラマンダーは、共和国ゾイドで、はじめて単3電池を使った、今までとは異なるパワーユニットを採用したゾイドである。これは、飛行可能ゾイドというイメージから、ビガザウロ以来使用されてきた単2電池を用いるパワーユニットでは大きすぎることから、新しい小型のパワーユニットを作る必要があるところから話が始まったと思われる。すると、白羽の矢が立つのはレッドホーンと同じパワーユニット。これをもとに、サラマンダーに使いやすいようなモノにししていくことになると、必然的にBキャップよりは小さなキャップで事はすむようになる。しかし、既にレッドホーンで使われたEキャップは、帝国軍用のキャップであるという判断から使用は避けられ、同じ内径で形状の違うキャップの開発が検討されRキャップができたと考えるべきであろう。
その後Rキャップは、グスタフ、ディバイソン、また24シリーズメガトプロスに用いられたが、帝国軍には使用されることはなかった。その意味では、Eキャップよりもより厳密な意味で共和国軍用のキャップであったことがわかる。唯一の例外は、暗黒軍のギルベイダー。ギルベイダーはEキャップを主要キャップとして使用しているが、パワーユニットからの動力を足に伝えるクランク軸との結合の4カ所にのみ、Rキャップが用いられている。
Rキャップの表側は十字に溝が切ってあると述べたが、これはEキャップの直径方向に、並列に二つの溝が並んでいる事の対角にあるといえる。つまり、Rキャップはプラスネジであり、Eキャップはマイナスネジであるといえる。対立する二つの国家を表すために、あえてキャップにも対立するモノをモチーフに選んでいると言え、細かな配慮と同時に、作り手の遊び心も伝わってくるようである。
このRキャップとEキャップの内径は同じなので、交換し用いることが可能である。ゾイド本体が入手することが難しい現在、その付属品のキャップも同じことであり、見えないところだけは、RキャップとEキャップを入れ替えるなどして、数を補うことも可能である。
なお、サラマンダーのパッケージに登場するRキャップは、中心に穴が空いていない。おそらく試作品であると思われる。このことから、小さなキャップとはいえ、試作検討比較を経て、やっと正式採用に至るという、制作者の手を抜かない作業が伝わってくる。
大きさの比較