題(私)

2000.4.10

和歌 詩 日記
読後感 算脳
子供の頃と比べ、生まれ育ったこの田舎でも、自然環境はもちろん、生活 環境も随分と変わってきている。曲がりくねった道や川が不自然に真っ直 ぐに無理矢理つくりかえられ、石や草の豊かな川縁や所々に生え立ってい た木々も取り除かれてセメントで無残にも固められた「溝」になってしま い、昔追い掛け回した生き物や魚たちはもういない。切り通しも壊され、 土の道は舗装され、田畑も耕地整理され陰ひなたのあるあたたかな風景は 消えてしまった。池も形を変え山肌を削って道ができた。池は水を減らし 汚れ生き物たちは姿を見せなくなった。小鳥たちは声を細くし夕日は直接 的であしたを消している。時折目の前をすばしっこく横切り、立ち止まっ て愛敬を見せたイタチもめっきり見られなくなった。心を留める場所も空 間も時間も西の彼方にいってしまった。
これは日本海に面した田舎町の現実の風景なのだ。私はそんな風に変わり 変えられて戻らないこの地は好きではない。現実にかなりの破壊が進んで いる。川とほんとうに呼べる姿をとどめているのは山の中ぐらいか、とさ え思うほどに水路化が進められている。悲しいことである。そういった作 り変えでお金をいただく輩が多いのも哀しい。その裏で私のような弱い個 人が泣いている。彼らには他人を思いやる心はない。

自然が好きでそこに目を置いていたい、という願いから、科学を学ぶこと になったのに、就職先は人工物の製造会社だった。それも今は...。
転職を繰り返し今に至ったのはやはり好ましくなかった。蓄えはすぐにな くなりつないでいくのは難儀である。得られたはずの収入も空を飛んだ。 どうしてお金に縁がないのだろう........。見つめる眼は我ながら厳しく なり、以前にも増して物事や世の中に批判的になったように思う。美しさ がどんどん失われていく流れの中に棹差してひとり踏ん張っているような 気分になることもある。自分自身を含めて、よい方向に変えていきたい、 と思うことはなかなか現実の変革へと結びつかないもどかしさで悶えあが き苦悶する現実にやりきれなくなるのと同義となる。これもまた哀しい。

私のデジタルカメラ


Toshiyuki Takagi, dans la campagne sur la Mer du Japon. ご感想、恋文などお寄せ下さい。
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