スリランカ・和平への足跡
スリランカ国会議員選挙の後に2010

No.145
2010-May-14

マヒンダ一族、勝利に酔いしれる


 キャンディ、トリンコマリ地区に起きた暴動で選挙無効とされ再選挙を余儀なくされた国会議員選挙は4月20日、やっと確定の結果が出た。
 事前の予測どおり大統領サイドは圧倒的な勝利を収めた。議員定数三分の二を占めることはできなかったが、選挙後のマヒンダ政権はほぼスリランカ独裁の様相を呈して2期目を迎えた。
 各政党の議席数は、マヒンダの与党連合UPFAが144議席、野党UNP60議席、タミル政党ITAK(TNA)14議席、DNA7議席だった。
 逮捕抑留されているフォンセカ(元陸軍司令官)は自らが率いるDNAで国会の議席を獲得したものの、国家転覆の企てを図ったという軍の法規違反の罪で法廷の被告席が彼を待ちかまえている。
 タミル地区の選挙結果は至って低調で、LTTEが消え去ったという印象がはっきりとした。
 23日、組閣。異常な数の大臣ポストを減らすという約束は名目上かすかに実行されたが、マヒンダ・チンタナはさらに強固になった。

 選挙前からマヒンダに擦り寄る中国からの投資が過大に喧伝されたし、国内難民となったスリランカ北部のタミル人、特にタイガーへのかかわりを持った(であろう)人々への虐殺を含めた圧迫は激しかった。その様相は選挙後も何も変化していない。ただ、マヒンダ・チンタナのパイをぶら下げた(シンハラ俗語で言えば、パンナック・カェーワ)民衆迎合路線は、着々と点数を稼いでいる。農家への手厚い補償、スリランカ南部を中心とした観光開発、公務員への給与増額補償。そうした個々のおいしいパイと一緒に深紅に染まる大きなパイも用意されている。日本のGDPを追い抜く中国のマヒンダ政権への巨大なプロジェクト援助がスリランカの経済力と軍事力を力強く支えている。
 
 タイガーを打ち砕き国家の英雄となった軍の司令官フォンセーカを国家反逆罪でマヒンダは法廷に送った。戦争の英雄は二人もいらない。マヒンダはタイガーを葬り去ったシンハラ政権の唯一の英雄となった。
 総選挙は圧倒的優位で乗り越えた。彼が次に目指すのは内戦で疲弊したスリランカ復興だ。スリランカ分析で定評のある機関はマヒンダの次の戦略をこう予測している。

 まずは憲法改正だ。第13次改正憲法をさらに改正して民主的な分権機能をなくす。州の警察権と自治権を取り上げ中央政府に集中するための憲法改正だ。マヒンダ政権が自らの勢力を更に膨らませるために小選挙区制を実施してUPFAの議席を拡大する必要もある。小選挙区制ならJVP、DNAは消滅し、UNPも議席をさらに減らす。小手先の選挙制度改正は保守の安定政権を求める極東の国の政治風土と似ている。
 スリランカの現在の大統領制はどうなるか。マヒンダは大統領制を廃止すると言っていた。だが、自らの権力を煽るための大いなる翼を自ら折るはずがない。やや断定的にスリランカの分析機関は観測している。

 
 マヒンダは再び一族でスリランカを治めようとしている。長男のナマルはハンバントータ地区でトップ当選を果たした。大統領後継者として鼻息が荒い。マヒンダの地元であるこの選挙区ではラージャパクシャ一族が4議席のうち3議席も占めた。
 経済復興を最優先にする国家運営はマヒンダ・チンタナ体制でさらに強固になるだろう。
 事ある毎にマヒンダは口にする。タミル地域のタミル民族による自治の確立を果たさなければならない。それがリップ・サーヴィス出ないことを切に願う。スリランカの真の強さは多民族による国家運営によって生まれる。それはスリランカの歴史が繰り返してわれわれに教えている。独裁政治も、シンハラ・オンリー主義も。必ず短期間で崩れてきたことを私たちは歴史を振り返れば何度も味わっている。